2013年5月16日11時46分

2013年5月16日11時46分

一週間もあいだがあいてしまった。

数日前から、もうひとつのバイト「テナントビルの清掃」がはじまった。これは週5日で、基本的に朝7時~9時半、火曜のみ10時までのバイト。現場は四谷三丁目。駅から徒歩2、3分のところ。

 

椹木野衣さんが美術手帳に百瀬文さんの修了作品についての評論を書いたらしい。百瀬さんは僕と歳1つしか違わない。学年は同じ。まったく、僕は新しいバイトとビアガーデンのバイトに使う定期券を買ったり、トイレ掃除が目標5分のところを7分くらいかかってしまって「もうすこし早くね」と言われたり、ビアガーデンではハーフ&ハーフを自力でつくろうとしたところ、どうやら間違っていたらしく「わからないことは聞いてって、なんども言ってるよね」って怒られたり、チーフに好かれてないんじゃないかと心配になっちゃったりしているだけの、ただのフリーターである。ジュリアンカサブランカスも歌っている「むこうがわでは、誰も僕を待っていない。」さっきシャワーをあびながら考えていたんだけど「誰かに良く思われてないんじゃないか」っていう、完全に僕の損でしかない不安な気持ち、すごく久しぶりだな、と思った。高校生以来か、大学に入りたての頃以来か。

僕は、あのテナントビルや、ビアガーデンでは、何者でもないのだ。

毎日同じ時間に現場に行ったり、電車に乗ったり、店を開く準備をしたり、上司に怒られたりしているうちに、なんとなく気付いたことがある。

まったくこの社会は、"よくできている"。人間ていうめんどくさくて危険きわまりない生き物を、うまく社会のなかで納めるために、うまくできている、"うまくできているようにみえる"といった方が正しいか。

人がいる。あとからふりかえってみると、本当に、みんなかわいいなと思う。あのチーフは、あの支配人は、あの、僕に掃除を教えてくれたおっさんは、それぞれの世界でしかもはや生きていけない。ブコウスキーの短編小説の中にもこんなせりふがあった「チンケな人間でも、同じ所に長くいれば、ささやかな信望と力を獲得できる」。あの小さな世界の住人たち。それぞれ悩みがあり、恋愛とか性の事情があり、親が居て、故郷がある。どう転んでか、いまあの場所にあのように収まっているのだ。そしてみんな老いて死んでいく。僕も死んでいく。嫌だ。嫌だなあ。まだ数日間しか続いていないけど、毎日お金を稼ぐ為にでかけている。昨日がはたして、本当に昨日なのか、それとも一昨日なのかがよくわからなくなる。朝電車に乗り込もうとした時、このまま自分が本当に死ぬまでこんな調子なんじゃないかという"予感"のようなものが降りて来た瞬間があった。本当におそろしいことだ。でも、みんなそのように生きている。この社会では。お金が力を持っているこの社会。

もっとたくさん書きたいことがあったような気がしたけど、なんだか出てこないのでやめる。明日も五時半前には起きて、6時前の電車に乗り込んであの四谷のビルに向かわなければいけない。そのあと一回実家に帰ってきて、また1時前にビアガーデンに出かける。今日と一緒だ。

でも今日と違うのは、明日のビルの現場は、はじめて一人での仕事にのぞむという事だ。山本さんによる指導は今日までだったのだ。

Posted by satoshimurakami