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山下達郎が実在するかどうかも、地球が丸いかどうかも、確かめたことがない。地球が丸いというのは間違っている。空気も水も閉じた世界の中で循環する有限のものなので、地球は裏返しで閉じている球体のようなかたちをしている。また、僕が歩くとき、動いているのは僕ではなくて地面の方だとしか思えない。僕を僕と認識して一と数えるこの主体のようなものは、いくら歩いても、この場所から動くことがない。僕が動くということは、世界が動くということになる、そうとしか考えられない。なので僕が変わるということは、世界が変わるということになる。世界を「変える」ことはできない。それができると考えるのは危険だ。ただ、世界は変えることができない上に、自分が生まれるはるか以前から、死んだ後のはるか未来まで、悲しいほどにながく、世界は続いていく、という事実を引き受け、絶望し、自分は何もしていないんじゃないか、何もできないんじゃないかという囁きに折れそうになりながら、もがいて、ふとした時に、世界が既に変わっている、と気がつくことができる。世界を変えるという言い方は適切ではない。世界は、気がついたときには既に変わっているという言い方ができる。

Posted by satoshimurakami