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時々福島県の勿来町のおばちゃんから電話がかかってくる。
「ポカリ飲みな、ポカリ」
というアドバイスをくれる。昨日もかかってきた。仙台ですこし休憩して元気になったと聞いて安心したらしい様子。気にかけてくれる人がいるのはありがたい。時々面倒なこともあるけれど、それはその人が気にかけるペースと僕のペースが違うから起こることだ。生活のペースが違うから起こる。その人からしたら「もう連絡しないとやばい」みたいな心境になっているのかもしれないのだ。

お昼に仙台を出発し、塩竈市に向かう。13キロくらい。午前中は話しかけられにくい時間帯なのかもしれない。みんなお昼を過ぎてから、夕方になればもっと話しかけてくるようになる。午前中はどこもみんな忙し いんだな。塩竈市に入ったあたりで話しかけてきたおじちゃんに「息子が自転車で日本をまわった」 という話をされた。最初かなり強い方言で話されて全く何を言ってるのかわからなかったけど、僕が東京から来たと知ると話し方を変えてくれてだいぶ聞き取り やすくなった。 「ずっとこぎっぱなしって訳にもいかないんだよなあ。疲れちまうからな。どっかで野宿しないといけねえんだなあ。息子は帰りがきつくなったみたいで、トラ ックで自転車を運んでくれって言うんだよ」
その通りだ。人はずっと活動できない。いつかはどこかで眠らないといけないから家が必要なのだ。
塩竈でお寺を探して、今日一回目の敷地交渉。チャイムを押すと住職の息子さんらしき人が出てきてくれた。僕の身なりをみて、一瞬不審な目を向けたのがわか った。しまった髭をそっておけばよかった。と思ったけど一生懸命説明する。説明の仕方としては
「ちょっと複雑な説明になるんですが。あそこに白い小さな家が見えるじゃないですか、あれを担いで歩いて移動生活をしている画家の者です」 (反応を伺う) 「東京からスタートしていま2ヶ月くらい経っていて、基本的にあの家の中で寝泊まりしながら移動してるんですが、今まで夜眠る時に路上や公園では勝手に寝 られないので、一晩ずつ敷地を借りながら移動してきたんですよ。おうちの庭先とか、駐車場とか、神社の境内とか。とにかく『ここに一晩置いといていいよ』 という許可をもらえる場所を探しながら歩いてきました」
(反応を伺う) 「で、もしよろしければこのお寺の敷地内、隅っこでもどこでもいいので、一晩家を置かせていただけると助かるんですが」
だいたいこんな風に説明する。手には今まで描きためた絵のファイルを一応持っておく。
「少々おまちください」
と、奥で話し込む声が聞こえて
「じゃあ下の駐車場に」 と言ってくれた。この瞬間のほっとする感じ。久々だな。こういう交渉はここ10日間くらいやってなかった。無事に家を置いて、家の中に銀マットを敷いてあ れこれやってたらさっきの方が来て、シャワーとトイレを案内してくれた。このあたりも銭湯が無いみたいだったので助かる。
後でお寺の住職さんも来て 「私は歩いてないんだけど、父が昔行脚っつって日本中を歩いてまわったことがあってねえ。私はいま出先から帰ってきたばかりで仕事がたまっていて、相手が できずに申し訳ない。」
と言ってくれた。
「ここから北へ行けば行くほど、大型車両が通ってるから気をつけて」
大型車両と聞いただけで土煙と風圧と轟音が鮮明にイメージできる。嫌だなあ。

ある人から、人に超嫌われてしまったという話を聞く。
同じ人とずーっと近くにいると、うっとおしくなって嫌いになってしまいやすくなる。かつての仲が良ければ良いほど、関係が悪くなった時にひどい状態になりやすい。そんな時は動くに限る。自分をそこから離すに限る。でもそうもいかない事情とかいろいろあるところが難しいんだなあ。

Posted by satoshimurakami