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福田さんの奥さんとお兄さんは写真をやってて、僕が出発したあと二人でしばらくついてきて、歩いているところを写真に撮りまくっていた。結構本気で走って僕の 前に回り込んだり、道沿いに咲いてた花と一緒に撮ろうとしたりして、二人とも夢中だった。きっとあとで新聞に投稿するんだろう。良いな。福田さんの旦那さんは は別れ際に
「また近くに来たら、いつでもいいから泊まってけよ。来年でも再来年でも10年後でもいい。」
と言ってくれた。

だんだん寒くなってきてる。早く南下しないと早々に上着を買うはめになる。本当は長野市から北西に進んでいって、富山県に入ったほうが短い距離ですむんだけ ど、そのルートは深い山道を数十キロ歩かないといけない。最近頻繁に近くでクマが出没したという噂を聞くってこともあって、山道を避けてここから新潟県の上越 まで北上して、そこから海沿いを西に進むことにした。須坂市から25キロくらい北に行った新潟県との県境近くに信濃町という町があって、そこに住んでる松田さ んという女性のアーティストと松代の展示会場で出会っていた。今日はその彼女の家に行く。彼女の母親は町で唯一の小学校の学童の先生をしていて、僕を先生とし てそこに招いてくれていた。

9時過ぎに学童について、何もわからないまま小学1~3年生十数人を相手に段ボールや紙の箱やら新聞やらで家づくりをはじめた。始めはみんなで壁を作ったり屋 根を作ったり柱を作ったりして、出来てきたらそれぞれ勝手にキッチンを作ったりテーブルを作ったり番犬(みぃちゃん)と犬小屋を作ったり、サインを作ったりし ていた。小さなビルをつくりはじめた女の子もいた。鎌と盾をつくって、僕が壁に貼付けた紙の鳥を狩りはじめる奴もでてきた。子供のエネルギーはすごい。そのエ ネルギーがすごすぎて疲れちゃうのでけっこう苦手なんだけど、このくらいの年の子達と一緒に何か作ったりするのは刺激的でもある。彼らは「今」の中に生きてる 感じがする。美術家の山本高之さんのことを思い出した。彼はこういう経験を繰り返して作品のアイデアを固めていったんだろうな。

お昼ご飯を一緒に食べたんだけど、そこで小学2年生の女の子が教室にスズメが入ってきた時の話をしてくれた。
「窓からスズメが入ってきて、窓のところにとまったんだけどね。剣道やってる男の子が足で床をドンッ!ってやったら、気絶しちゃったの。」

学童のあと、松田さんの家に行った。山のなかに大きな敷地を持っていて、そこに建てたログハウスに住んでいる。おなじ敷地内に他に3つぐらいログハウスがあっ て、それぞれ人が住んでるらしい。楽しそうだ。こんな生活のしかたもあるんだ。夕飯に近所から家族を二組招いてくれて、一緒にカレーを食べた。明日にはもうこ こを出るんだなあと思ったら、そのめまぐるしさにぞっとした。このスピード感すごい。また慣れるのにすこし時間がかかりそうだ。

長野で活動的な人たちの話をきいた。額縁屋さんがいて、その店の客は作家だ。作家が展示するためのレンタルスペースをしようとしてい る人もいてその人たちの客も作家だ。その作家の作品を多くの人に見てもらうように、買ってもらえるようにしないといけないのにそこまで考えてられてなくて、お 金が身内だけでまわってる感じがあるみたい。なんか悲しくなった。僕も歩いていて、出会う人からよく
「個展するなら場所代かかるだろ」
って言われて、道にいる多くの人はギャラリーと言えば貸画廊のことだと思っているところがあって、ため息をつきたくなるんだけど。作家から場所代としてお金とって どうするんだって思うんだけど。最近よくメールがくるなんとかマインドって会社も、イベントを企画して作家に数万円の参加費を払わせてやってるんだけど彼らは いったい何を考えているんだろう。それで発表したがる人がたくさんいるからいいのかもしれないけれど、けっこう腹だたしい。だけど面白いからメールは見るようにしてる。夕飯を一緒に食べた近所のお母さんで、駅とか大学とか会 社とかそういう公共空間にパブリックアートを設置する仲介のようなことをやってる会社に勤めている人がいて、こういう産業もあるんだなあ。

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Posted by satoshimurakami