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台風19号で風が強くなってて気温も低い。今回のは本当に気をつけた方がいいみたい。台風は嫌だな。小さい頃は風が強くて楽しいとか思ってけどこの生活で台風に来られるのは心から嫌だ。お昼ごろには谷口家を出発した。別れ際にした握手の手がすごく大きくて厚かった。さすが海の男の手だった。僕が

「手が大きいですね」

って言ったら

「はあ」

って笑ってた。そういえば谷口さんは、自分のマグロ漁船の話を「そんなたいした話じゃないです」って言ってた。僕からしたら滅多に聞けない凄い話なんだけど、本人からしたら違うのだ。自分の経験とずっと一緒に生きていかなくちゃいけないのだから。自分の話が自分にとって新鮮なものじゃないのは当たり前なのだ。そりゃあそうだ。だから新しい人がいるんだ。新しい人とたまに出会って、自分の経験を新鮮に捉えなおさないとつまらなくなっちゃう。たしかフィッシュマンズに「新しい人」って歌があったな。時々新しい人に出会う事は大事だ。

 

歩いてる途中、バイクにのったおじさんに話しかけられていつもの通り説明したら

「ワタリやっとるのか」

って言われた。ワタリっていう単語があるのか。初めて聞いた。ウィキペディアで「渡り」を調べてみると生物が移動する理由は「食料」「繁殖」「気候的要因」の3種類らしい。僕も「気候的要因」っていう理由で、生物が渡りをする理由にちゃんと合致してる。

 

富山市に入ったころから暗くなってきたので、近場で温泉を探した。着いたのが5時くらい。温泉の駐車場を交渉しようと思ったんだけど、入っていきなり交渉するのはなんか気が引けてしまって、お風呂に入ってからにしようと思った。これが間違いだったかもしれない。お風呂からあがって交渉をしてみたら

「社長さんがもう帰っちゃって、わたしでは判断できない」

ということで断られた。もう5時半を過ぎて外はだいぶ暗い。急いでお寺を探した。1軒目も2軒目も留守で、3軒目はどこがお寺なのかわからなかった。もう6時過ぎてて、夜の暗さになっちゃった。こんな時間まで見つからなかったのは埼玉の浦和で田谷さんと一緒に敷地を探したとき以来かも。久々に本気で焦った。半年前だったら焦りすぎて体調が悪くなってたと思うけど今は少し余裕がある。4軒目のお寺でようやく人がいたので交渉してみたら

「いま住職がいなくて、わたしでは判断できないんです。申し訳ないです」

と断られた。今日はそういう日らしい。責任者に出会えない日。

 

もう近くにお寺もなくて他にめぼしい場所も見当たらない。今日は失敗するかもしれない。日が落ちるのがどんどん早くなってて、体がそれに慣れてないのだ。敷地交渉する時間帯をもっと早くしていかないといけないのだ。

仕方がないので、近くの大きなドラッグストアに行ってそこの店長さんに「無理だったら家だけ置かせてもらおう」っていうスタンスで交渉した。

「寝泊まりは無理だけど、家を置くくらいならいいよ。台風近づいてるから気をつけて」

って言ってくれた。

やっぱり。そんで僕は4キロくらい離れたところにある漫画喫茶に泊まることにした。危ないところだったけど、ドラッグストアみたいな場所でも交渉できるってことがわかった。いつか交番とか警察署もいってみたい。へらへらと敷地交渉したい。

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Posted by satoshimurakami