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「It’s time to get up!Mr.Murakami.You have only 30 minutes …!!」
っていう大きめの声が聞こえて、ふすまがあけられて一気に起こされた。旦那さんは昨日の夜から全 くテンションが変わってない。朝からすごい。イギリスに長く暮らしていたことがあるらしく、向こ うのB&Bの民宿は、こうやって乱暴に起こされて家を追い出されるらしい。朝ご飯を食べながら も、いろいろと説教を頂く。
「甘えてたら伸びん。歯食いしばっていかんと。」
「あんたがやってることは否定はせんが、ただの手段や。手段に溺れてたらいかん。自分の夢に溺れ んと。もっと夢をみなさい。ビジョンを語りなさい。」
などなど。そんで朝ご飯食べてすぐ加藤家を出発した。今日は、この加藤家を紹介してくれた牧井先 生の家の駐車場に行く。ここから15キロくらい南下したところにある。出発するとき奥さんから棟 方志功の弟子の版画がパッケージになったせんべいをもらった。

今日も職質された。「美術家」とか言っても全然通じない人だった。
「美術家です」
って言ったら
「なるほど、じゃあお仕事とかされてるわけじゃないんですか?どこかに勤めていらっしゃるとか」
「いや、美術家です。自営業。個人事業主です。」
「デザインとかをされてるってことですか?」
「いや、だから美術です。現代美術」
「げんだいびじゅつ…」
みたいになった。反論するのも説明するのもめんどくさい。たいていの警官は職質のとき、なんか親近感を得させるためかなんだか知らんけど、僕の活動の説明をさせたり、世間話をふっかけてきたり する。東京で職質されたとき
「ここは美術館じゃないんで。」
とか言ってきた警官がいたのを思い出した。笑えてくるな。なんなんだこの現象は。

たぶんイライラしながら歩いてるのがまわりに伝わったのか、今日は話しかけて来る人がいなかった。ただ夕方に一組だけ土方っぽい雰囲気の男性2人が
「ほんわかテレビみたで!」
って話しかけてきた。
「今日はどこ泊まるん?」
「この近くで駐車場を貸してくれるっていう人がいて」
「あ、今日はもう決まっとるんや。」
そうだ彼はテレビをみているので、僕が敷地を探していることを知っているのだ。それが面白い。こ ういうことをおこせるのはテレビの力だな。そういえば今度宇川直宏さんがDOMMUNEで「THE 100 JAPANESE TV CREATORS」っていう企画をやるらしい。これは企画名を見ただけで鳥肌立 つ。インターネットの番組が、テレビ番組のクリエーターを扱うってのはすごい。テレビっていうメ ディアが一気に相対化される。宇川さんは偉いな。

夕方、小便の我慢が限界に近い頃に牧井先生の家に着いた。しかし牧井先生はまだ仕事で家に帰っていない。とにかくトイレを探そうと思って家を駐車場に置いて歩き出したらすぐに大きな芝生の公園
を見つけた。大きな公園にはたいていトイレがあるのだ。助かった。嬉しすぎた。なかば駆け足でトイレらしき建物に向かっていったら小さな女の子がお母さんと一緒に「だるまさんがころんだ」をやってた。本当に素直に
「だーるーまーさーんーがーころんだ!」
と言ってやってた。これをやってる子供をとても久しぶりに見た気がして無性に嬉しくなった。

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Posted by satoshimurakami