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晴れていて、まれに雲が日差しを遮る。さして寒くもない。とても過ごしやすい。普段は半袖にセーターくらいがいいけど、家を背負って歩きはじめると暑いので半袖1枚でちょうどいい。

朝、近くのガストに行って安いトーストとドリンクバーのセットで数時間粘って絵を描いていたら、 後ろの席で一人客の男性が電話をしはじめた。
「いま?いまガストにおる。おばちゃんがな。俺に幻聴をゆうてくるおばちゃんがな、名前ついてんやけど。その幻聴ゆうてくるおばちゃんがな『モーニングいけ』と…」
と、電話相手に向かって話している。なんだそれ。「名前がついてんやけど」と言ってたけど名前を聞く事はできなかった。

今日は奈良方面に向かってあるいた。アーティストの東山佳永さんが木津川っていう町に住んでるおばちゃんを紹介してくれて、今夜はそこに泊まらせてもらう。
家を持って歩いてる途中で、原付に乗ったにいちゃんに話しかけられた。
「え?なんすかこれ。なにしてんすか?」
「家を持って旅みたいなことをしてます」
「え?家?いやいやいやいや。ちょっとちょっとちょっと、いつからやってるんですか?」
「4月からです」
「しがつ?よん??!よん?!いやいやいや。すげえな!こんなこといったら元も子もないですけど、家いらないでしょ!僕も北海道までヒッチハイクしたことありますけど、それはいらないっすね!邪魔でしょ!」
「そうですねえ邪魔ですね」
「まあまあまあまあ。すげえな。正直、しょうもないことだと思いますけど、突き詰めるとすごいこ とになりますね。今日の宿は決まってるんですか?」
「今日は決まってます」
「そうですか。まあ、がんばってください!」
という会話をした。面白いにいちゃんだった。

木津川についたのは5時半頃。立派な家がたくさん建っている住宅街。紹介されたおばあちゃんの家 は大きなお屋敷で、母屋の他に母屋と同じくらいの大きさの離れがある。四方を塀に囲まれていて、 大きな門もついてる。あとで聞いたけど、築140年らしい。改装を重ねながら奇麗に保たれてる。 そこにはおばちゃんが一人で暮らしてた。おばちゃんは、家を背負ってる僕をみた途端に
「それで歩いとるんか!?」
と叫んで、両手を叩いて笑い転げていた。東山さんが「徳の高い方」と言ってたのが分かった気がし た。 晩ご飯を食べさせてもらいながら話をした。おばちゃんは旦那さんを亡くしてから、この大きな家で 一人で暮らしている。大きな声ですっごく楽しそうに笑って話すけど、たまにハッとさせられるよう な鋭い目つきになる。おばあちゃんが生きてきた80年の歳月が表情に滲み出てる。

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Posted by satoshimurakami