08140149 | 

その日は、全く言葉が通じない床屋で髪をきってもらった。おじさんからこの辺で一番安い床屋を教えてもらい、その店の前まで行ってみたらそこは席が二つしかない小さな床屋で、店主らしきおばちゃんがソファに座って何か雑誌のようなものを読んでいた。店の前にきたらちょっとびびってしまって、散々店の前をうろうろしたけど、ある瞬間に「もう行ってしまえ」と決心がついて店に飛び込んだ。入ったらおばちゃんは僕の方をみて、何かに驚いたような顔をした。でもすぐに席を指さして「ここに座りなさい」的な事をスウェーデン語で話した(と思う)。席に座ったら赤い散髪用のケープをかけられた。

おばちゃんがスウェーデン語で話しかけてきたんだけど、僕は「すいませんスウェーデン語はわからないです」と英語で言ったら、わからないということは伝わったらしいが、おばちゃんは英語が話せないらしい。彼女はハサミを指して何かを言った後、壁にかけてあるバリカンを指してまた何か言った。明らかに僕に何かを聞いているような調子だった。これは要するにバリカンでバッサリといくかハサミでいくかという事なのか?と一瞬考え、僕はハサミのほうを指して「こっちで」と英語で言った。そしたらおばちゃんはハサミで髪を切り始めた。僕は新しい街で床屋に入るのが好きで、どこか新しい街に長期滞在するようなとき、その街の床屋にいって髪を切ってもらったりする。これはある種の洗礼のような儀式だと思っている。でも言葉が通じない床屋は初めてだった。おばちゃんは言葉が通じないにもかかわらずどんどん大胆に僕の髪を切っていった。おばちゃんのケープのつけかたが雑で、切った髪の毛は首のところからどんどん入ってきた。おばちゃんの手には派手なピンクのマニキュアが塗ってあった。このマニキュアの色とおばちゃんの佇まいが不釣り合いだった。

髪を切るってのは考えたら暴力的なことだなと思った。僕はおばちゃんの手に髪型を任せるしかない、とても弱い立場の人間なのだと思った。でもおばちゃんの中にはなにか「こういう感じにすればいいだろう」という確固たるビジョンがあるらしく、手つきに迷いはなかった。切っている間は終始無言だった。

おわってみたら、かなりばっさり切られたけど意外と悪くないなと思えた。前髪の残し方が特徴的で、おばちゃんのこだわりのようなものが感じられた。もしかしたらエーレブルーではこういう前髪が流行ってるのかもしれないけど。僕は親指をたてて「Good」を連発した。おばちゃんがすこし笑った。

切ったあとおばちゃんは「フンドレッティ」みたいな単語を繰り返し言っていて、そういえばこの店は180クローネで切ってくれるとおじさんが言っていたような気がすると思い出し、これはもしかしたら180という意味かと思って手の指で1と8を作って提示したら頷いたので、僕は180クローネ支払って店を出た。

08140149 | 2016 | 未分類 | Comments (0)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です