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ヨーロッパ中を長距離バスで結んでいるFlixbusというバスに乗って、ストックホルムからベルリンに向かって移動している。所要時間が史上最長の18時間。こんなに長い時間バスに乗ったことはない。先日の成田からストックホルムまでの飛行機よりも長い。高速道路を走っている。それにしても、バーガーキングはどこにでもあるな。59ユーロ。だいたい7000円くらいで、18時間かけてストックホルムからベルリンに行ける。

Pressbyranというコンビニでパンとサンドイッチみたいなやつと水(買ってから炭酸入りだと気がついた)を買ってバスに乗り込んだ。ストックホルム中央駅には、電車の駅に併設してバスの駅がある。バスタ新宿みたいに、バスが乗り付けるプラットフォームがたくさんあって、何時にどこ行きが出るかが大きなディスプレイに表示されている。

1日が早い。もうこっちに来てから3日目とは。このまま何が起こってるのか全然わからないうちに死ぬ。何が起こってるかわからんうちに40日間のヨーロッパ滞在が終わって。どうせ何が起こってるのかわからんのだったら、さっさと作品をぼんぼん撮影してしまった方が良いだろう。でも、なんだろう日本で撮影するときとは全然違う種類の緊張が。白人に対してコンプレックスを持っているからなのか、街にいる市民たちの、リテラシーというか寛容さが計り難いからなのか。わからないけど。でもここで立ち止まるというかひるむのは本末転倒もいいところだ。そういうものの物差しになるべく、僕はこの作品をやるんだから。物差しをおくことをびびってたら”それ”をはかることは永遠にできないだろう。はかってから、あれこれ言うべきであって、ものさしは”置かれなくてはいけない”だろう。常に。どんな場合でも。

スウェーデンは一つの商品の単価は高い(この炭酸水は普通のペットボトルサイズで300円くらいする)けど、なぜか、二つで~円とか、~と組み合わせれば~円、みたいな抱き合わせが店内の色々な張り紙を通して推奨されまくっていて、実際その値引き率がかなり高い。一本25SEKする飲み物が、2つ買うと35SEKになったりする。これはいったいどういう精神状態なのか。

ベルリンというか正確にはベルリンに近いコットブスという街には、僕の大学の同期で、三年生のときに二人で組んで設計課題に取り掛かったが、二人とも我が強いので途中で分裂した相手であり、メールでは度々連絡を取り合っていたけど会うのは大学卒業して以来初めての湯浅さんが住んでいる。よくわからないけど建築の勉強をしているらしい。もう数年ドイツにいる。僕が到着する明日の朝9時半にベルリンに来てくれるらしいのですごくすごく楽しみだ。しかし、窓の外の景色がずっと平らだ。人工的な森がひたすら永遠に遠くまで続いている。妖怪とかがいなさそうだ。日本の会津の山みたいな深くてこわい山はこの国にはあるのか?よくもここまで耕したもんだ。もともとこんな平らだとは到底考えられない。でも去年聞いた話では、スウェーデンは北に行くと自然が厳しくなって行くというから、いま南に向かっている以上ここから山がけわしくなって行くことはないんだろう。長旅だ。18時間の移動が、どんな影響を与えるのか全然想像がつかない。飛行機みたいに超高速ではないので、時差ボケするとかそういうことはないけど。そういえば、到着した日に空港で寝て、翌日は早かったけどホステルで寝て、からだはあんまり疲れていないような気がする。時差ボケもいまのところ感じない。いま日本は21時半か。こっちは真昼間。そういえば事前に予想していたほど寒くない。半袖でも全然大丈夫。夜はちょっと半袖では肌寒いかもしれないけど。空の色も、日本のそれとは質が違くて、青みが薄い。

今、菜の花らしき黄色い花が一面に咲いている畑を通過した。綺麗だったけど、人工物感を強く感じてしまった。こんなこと言ってしまうと怒られそうだが、要するにただ黄色いだけで、その”平さ”は他の景色と完全に一緒だ。この”平らな自然の所在のない感じ”、前にどこかで見たことあると思ったら、フラワーパークだ。日本のいくつかのフラワーパークに行ったことがあるけど、それはとても綺麗なんだけど、なんというか所在がない。平らすぎて。心が落ち着かない。あのフラワーパークの方向性は、このヨーロッパ的な自然開発の方向性と同じだったか。今気がついた。

前の席で、小さい女の子の子供。ムスリムのお母さんが隣にすわってるんだけど、その子供が泣いている。この子がどこまでいくのかわからないけど(このバスはベルリンが終着で、途中にコペンハーゲンとかいくつか停車地がある)、もしベルリンだったら18時間バスに乗ってるのは子供にはきついだろう。そんで、親も好きでバスに乗せているわけではないのだろう。人様の事情を勝手に読み取ってしまうのはよくないけれど、色々見て取れる。ちなみに僕の隣には、3.5%の缶ビール(たぶん、スーパーでかったやつ。スウェーデンでは3.5%までのアルコールはスーパーで買える)をもった、右腕にタトゥーがある青年が座っている。後ろにはその仲間っぽい人もいる。その騒がしいのを嫌がって、前の席に移動してしまった女性もいる。高速バスはいつも多様性にあふれている。日本でも。ヨーロッパでも。さすがEU。国境をいくつかまたぐのに、一本の高速バスでいけるのは素晴らしい。

Posted by satoshimurakami