4月2日(12日目) | 

朝1限目から運転教習。路上停車の練習。停車はともかく、あいかわらず発進が遅れる。半クラッチを見つけるのに時間がかかる。「クラッチを見つける」って言う表現、大昔に聞いたことがあるような気がする。たしか父親から。足の踏み込み具合でクラッチを見つけるわけだけど、足でやってるのに『見つける』っていう言葉を使うのは素敵だなと、幼い頃に思った気がする。

続けて座学「交通事故のとき、自動車の所有者などの心得と保険制度」という内容。不思議な日本語だ。百地先生だった。百地さんが「はいじゃあ原簿集めます」と言いながら颯爽と教室に入ってきたとき、「ももちさんだ!」と嬉しくなった。彼は今日も昨日と全く同じ格好だ。いつも決まっている。

事故の当事者になったり、事故を目撃したときにどういう行動を取ればいいかを教わる講義だったのだけど、今回も百地さんは終始自分の体験談を交えながら講義を進めていた。

「昔、ぴっかぴかに綺麗にして大事に乗っていた自分の車に乗ってるときに、信号待ちで止まってたら後ろからコンッて追突されたことがあります。その瞬間にわたしちょっとプツーンときちゃいまして『やってくれたなこの野郎』と思って車降りて後ろに行きました。そういうときって相手の車なんか見ないですね。自分の車をみて大丈夫かとか、そうなりますね。そのとき大きな4WDの車に乗っていたんですが、ほとんどへこんでませんでした。それで相手の車見たら、軽自動車だったんですけどバンパーがグシャってなっていて『こんなに違うのかー』と思いました。それで、相手の運転席のところに行って『身元を確認しないと』と思って、『ちょっと免許証控えさせて』って言おうとしたら、女性で、もうポロポロ泣いてるんですよ。『泣きたいのはこっちだよ』と思って、免許証もらってメモしようと思って書くんですけど、私ももう動揺していて、手がプルプルプルプル震えちゃって書けなかったです。ああ言う時ってね、動揺しちゃいますよね。今思えば、写真撮ればよかったなと思って、でもたぶん写真もプルプルプルプルしちゃって撮れなかったでしょうけどね。はい、じゃあ次のページ・・」

というぐあい。

「ひき逃げはダメですよ。何で轢き逃げするのかって、私知り合いの現役警察官に聞いて見たことがあります。『こわくてにげちゃう』そうです。そりゃ、怖いですよね。・・わたしたちは人を見たら、もうその人の運転を見なくても、初めての免許か、免許停止されて2回目に取りに来た人なのか、だいたいわかるんですけど。昔。私と同じくらいの歳のお父さんでした。『あー絶対この人二回目だろうな』と思っていました。運転もスイスイやってました。教習中に、私助手席から『免許、初めてじゃないですよね?差し支え無ければ、最初の免許どうしてなくなっちゃったか教えていただけますか?』と聞きました。そしたら表情がどんどん硬くなっちゃったんです。『ああ、これはもしかしたら重い事故おこしちゃったのかな』と思って、マズイこと聞いちゃったなと思いました。なので『あ、無理にお答えにならなくて大丈夫ですよ』と言いました。表情がどんどんこわばっていくので、『これはもしかしたら、相手が亡くなっちゃったのかな』と思いました。そのあと普通に教習してたんですけど、終了五分前くらいに『実は、重たい事故起こしちゃったんですよ』といい話しはじめました。私は『キター』と思いました。『相手の方亡くなっちゃったんです。俺、轢いた時、逃げちゃったんですよ。怖くて。』と言ってました。」

「人を轢いて殺しちゃったら、損害賠償っていくらくらいかかるかわかりますか?・・昔こんなことがありました。教習所の閑散期でね、閑散期は座学もマンツーマンになったりするんですけど、ある日教室に入ったら、みるからにヤンキーな三人組が前に座ってました。その人たちに、事故起こしちゃだめだよ、と言う話をしてました。『事故起こして人が亡くなっちゃったら、いくらくらいとられるかわかる?よし、じゃあ想像してみて、君の大事な人。君、お母さんとか兄弟もだけど、彼女が一番大事じゃない?』と聞いたら彼は『まあ・・うっす・・』と言いました。『じゃあ、考えてみて彼女が友達と歩いてて、なんかアル中の男の運転するトラックに轢かれて亡くなってしまいました。君ならいくらとりたい?』と聞きました。そしたら彼はしばらく考えて、割と自信満々に『・・・俺なら200万とるっすよ』と言いました。そしたら隣の奴が『俺なら300万とるっす』と言いました。それを聞いてた後ろに座ってる三人目のやつが、おまえらわかってねえなって感じだったんで、『じゃあ君なら?』と聞いてみました。そしたら彼も言ったるぜって感じで指を一本立てました。そして言いました。『俺なら、100万すね』『下がってんじゃねーか!』って思いました。なんか3段オチのコントみたいでしたけどね!さあ!みなさんわかりますよね?あなたの事故で人が亡くなってしまったら、1億くらい請求されることも普通にありますからね!4億っていう例も見たことあるな。だからね、任意保険、入ってくださいね。」

また教習の最後に百地さんは

「免許とったあと、初めて家の車を運転するとき、運転しづらいと思う。教習車しか乗ったことないからね。すぐ慣れるけどね。けどね、色々戸惑いはあると思う」

と言っていた。この「運転しづらいと思う」の「思う」の言い方が優しかった。やさしい・・。あのサイコ野郎やレイシストやハラスメント親父とは大違いだ。・・こうやって書き出してみるとこの教習所が素晴らしいメンバーで構成されていることがわかる。美しい国だ。」

百地さんのあとは、なんかまた違う新しい人による「乗車と積載・けん引」という講習。特に特徴のない先生であまり覚えてない。

教習の後、教習所の裏のショッピングセンターで2足200円の靴下を買った。洗濯物が滞りがち。一度部屋に入ってしまったら、洗濯機を回すために部屋をでるのが億劫になってしまう。

靴下を買った後運転教習が二回。うちひとつは路上停車複数というやつで、後部座席に一人教習生を乗せた状態で路上を走り、路上停車の練習をするというもの。他の教習生の車に乗るのは初めて。僕と運転の癖が違って面白かった。彼はギアを頻繁にトップにする。僕ももうすこしトップギアを使った方が、検定的にはいいのかもしれない。

あの建築の青年とすれ違った。すれ違いざまににお疲れ様ですといわれた。彼は3人で歩いてた。よかった元気そうで。話し相手もできたんだろう。

そのあとは、また座学だった。受講生が少なくて、一番前の列のどこかに座らざるをえなかったのだけど、誰が来るかわからないので教壇から一番遠いドア横の机に座った。そしたらあのサイコ野郎が『原簿集めます』といいながら入ってきた。まだ一番遠いところにしてよかった・・。

もう一度強烈な嫌悪感を抱いてしまったので、もう彼のあらゆる挙動や言動が生理的に無理で気持ち悪くなる。講習中、僕が教科書やメモ紙に殴り書きしたものを以下に転写する。

「あのサイコ野郎だ.不必要に大きな声でダミ声でやべえ不快だこんな拷問みたいな時間・・・声がいやだ.もう生理的にムリ.(教習の映像をみながら)『演技力に差がある.上中下で言うと中くらい同じギャラ払ってるのかな』とか、たのむからだまってくれ『こんな大根役者つかっていいんだねーギャラ発生するんだね!!』うざい.うるさい.へんなつっこみを入れるな.声がムリ.ムリな上にでかい.さいあく.さいあく.さいあく.さいあく.さいあく.あとセンスない.嫁とか.『休みがないのにこんな暇そうな女二人の映像見るのいやなの!でも皆さんに見せなきゃいけないの!!こっちは2週間ずっと働いてるの!こんなやすみなんかないんだから!!』こっちのセリフだお前の声を、法的に聞かないといけないなんてふざけてる.」

「ウルセーーー.マジで,そんな音量いらないだろ死ね」

「耳栓があった…よかった…(ここで僕はリュックの中に持っていた耳栓を取り出してさりげなく付けた)耳栓あってもうるさい」

「市役所に行くのに地図を見て話し合ってる二人の女の映像に『市役所なんて目つぶってもいけるよね!!』もでかい声でわめきちらす…」

「みみせんしてからだいぶ落ち着いた..不快な言葉やフレーズを連発はしてるが、「耳栓してる」ということが落ち着けてくれる」

「私の嫁」という言い方も嫌だし、こんなサイコ野郎でも一緒になってくれる人がいるのだと思うと、なんて美しい世界なんだ・・。

気持ち悪くなりそうなのをこらえながら、免許の本試験に出るポイントの線引きだけは逃すまいと教科書とあの男の説明に向き合って50分間・・・。苦痛だった・・。

そのあともうひとつ座学があり(これはまあ普通の退屈な先生だった)、その後最後の講習は「高速道路での運転」という奴で、始まる前は『教官はまともな奴であってくれ』と思っていたし、メモにもそう殴り書きしてある。そして、百地先生が「じゃあはじめます」といいながら教室に入って来たとき「ありがとう神様」と思ったし、メモにもそう殴り書きしてある。

4月2日(12日目) | 2018 | 未分類 | Comments (0)

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