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 昨日の風呂場は今村さんに勧めてもらった「宝泉湯」だった。ビルの一階にある古い銭湯。ボッティチェリのヴィーナスの誕生のタイル画が壁になっていて、浴槽の底にも貝殻みたいな光沢のタイルが敷き詰められている。一人常連らしき賑やかなおじさんが入っていて、別のおじさんが入ってきたときにその人が

「おとうさーん!」

という大声が響き、おとうさんと呼ばれた方はめちゃ良い笑顔になっていた。僕が脱衣所に出てからも、風呂場からその賑やかおじさんの「えっへっへっへ。あ、はーっす!」みたいな声が聞こえてくる。風呂場を出てすぐのところには、「年長~小6の軟式草野球チーム メンバー募集!」のチラシがある。下町を感じる。

 寝る場所はウッドデッキの上なので、平らで冷たくなくて割と快適だったのだけど、唯一、ここは入谷交差点そばの、片道4~6車線くらいある国道4号線が目の前の敷地で、普通の車の他に救急車とか消防車とかトラックとかやたら音のでかいバイクなどがうるさいのが難点で、でも昨日眠る時は耳栓をつければ大丈夫だろうと思って耳栓をバッグから探そうとしたら、見当たらない。つい一週間前に代官山で買ったばかりのやつ。どうやらtocoに忘れてしまったらしい。しかしこれは耳栓がないととてもじゃないと眠れないと思い、買いに出かけたのだけどもう23時になっていたのでドラッグストアは閉まっていて、近くの大きなコンビニにも売ってなかった。ウロウロしているうちに鶯谷について、鶯谷駅前の小さなファミリーマートに行ったら、3M製の優秀そうな耳栓が売っていた。経験上、コンビニにあまり耳栓は売っていないのだけど、土地柄かもしれない。

 それで無事眠りにつけた。深夜はさすがの国道も交通量が減っていたけど、5時ごろにはまた大きなトラックが通り始め、そのせいで一度起きたけどまた寝て、8時半に起き、家を出て入谷交差点そばのドトールコーヒーショップでモーニングセットを食べながらこの日記を書いている。

 一年ぶりに行った「移住を生活する」は、今日で一旦〆る。家が大破したけどなんとか直せたのはSOOO dramaticのおかげである。本当にありがとうございました。

8日間いろいろなことがあった。たまに家を動かすと街の見え方が変わり、時間が伸び縮みするのを感じる。家賃を払って住んでいるアパートと同じ国にいるはずなのに、全く違うところに来ているみたいだ。このプロジェクトは「公開空地」に家を置くことや、敷地を借りることを通して公共というものについて考えさせる力がある。そして土地や公共の概念の問題は、僕がいま進めている他のあらゆるプロジェクトの問題に通じている。家を動かしていると、人から不審者扱いされたり、バカにされたりするのが良い。たまにこういう扱いを受けることで、自分を戒めるのは良いことだと思った。人はたまにバカにされるくらいがちょうどいいかもしれない。家はいったん、友達が新しくオープンさせようとしている蒲田のギャラリーまで車で運ぶ。

Posted by satoshimurakami