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久々に海沿いの道に戻ってきた。国道8号線。もうシーズンじゃないから海水浴客はいないけど、海水浴場はたくさんある。途中に「フィッシング センター」っていう入場料100円の沖に飛び出た堤防みたいな場所があって、その下に小さい公園があった。半分は海の中にあるような公園な のに、魚の形をした遊具がたくさんあったり海との境界に柵が設けられていたりしていて、海で遊ぶんじゃなくて陸上であそぶことを強制してて、 へんな公園だなと思ってよくみたら、入り口に「危険なので関係者以外立ち入り禁止」って閉鎖されてた。新潟県でも上越の海岸線は、下越や中 越のそれとくらべて山が近くてトンネルがたくさんあるように感じる。このあたりで越後平野が終わるんだろうな。トンネルを歩いてた時、反対 側の歩道で自転車を押して歩いてるおじさんがいた。それを見て、家も乗り物みたいなもんだなと思った。停める場所を探すのに苦労する乗り 物。自転車が駐輪場に停まるように、家は敷地に停まる。

ずっと歩道はあるんだけど歩く人がいないので草が生い茂っていて、家で草をかき分けながら進んでたら派手に蜘蛛の巣を壊してしまった。「やべ」って思ってたら、そのせいかわからないけど足が3本くらいになっちゃってるクモがよろよろと家の壁を歩いてるのをみつけた。取り返しの つかないことになってしまった。そいつは足が3本になっても、その足を必死で動かして糸をたぐり寄せて上へ登ったり下へ降りたりしててすごか った。草むらに返したけど、生き延びるのは厳しいだろう。ごめんなさいって思ったけど、こういう時ごめんなさいとか思うのって人間だけだよ なあと思ったらそれも偉そうだ。ただでさえこの家で寝てたら明け方とかによくクモの幻覚をみるのに。増えちゃうな。幼い頃カタツムリを不意 に踏みつぶしちゃって、そいつを眺めてたら涙がぽろぽろでてきたのを思い出した。

お昼過ぎに関西からテレビの取材が来た。リポーターとディレクターとADとカメラクルーが3人いた。以前から取材をしたいと連絡をもらってい て、それが今日来た。直江津から糸魚川方面へ向かう国道8号線を歩いているときにカメラが待ち構えていて、リポーターの人が僕を見つけて若干 大げさにリアクションした。リポーターと話しながら「派手な毛虫が歩いてるなあ」って思ってた。取材班はこれから夜、僕が敷地を見つけるまで 同行するらしい。「普通断るやろ」って思ったところ「許可もらえたんかい」っていう絵が欲しいみたい。
リポーターの女の人が僕と同い年で、 取材班のADが僕の1つ下でなんか感慨深いものがある。いつのまにか毛虫が踏みつぶされてた。 そっから4キロくらい西の名立っていう町までカメラとリポーターと一緒に歩いた。途中に良い滝の見えるスポットがあった。リポーターの人と 「良い滝ですねえ」って話をした。あと黄色い小さな花がたくさん咲いてる場所もあって「何の花かわからないけど、花が咲いてますねえ」って話 をした。彼女は
「歩いてみないとこういうのって気がつきませんね」
と言ってくれた。

5時くらいにはもう暗くなってきて、本当なら敷地の交渉をどんどんしないといけないんだけど、取材班と一緒に動いてるとどうも動きが鈍くなってしまって焦った。1軒目のお寺は留守で、そのお寺の近くにいた子連れのお母さんに交渉したけど
「うちは場所がない」
と言われ、3軒目のお寺でオッケーがもらえた。もう6時近くなってた。そのお寺の住職さんは、リポーターに
「最初この家をみたときどう思われましたか?」
と聞かれて
「いや別に何も。だってみんな家は持ってるじゃない。」
と答えててかっこよかった。そのあと近くの道の駅でご飯を食べて銭湯に行って、僕が寝るところまで撮って彼らは帰っていった。敷地を見つけるところまで人が一緒にいてくれたのは初めてで楽しかった。

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Posted by satoshimurakami