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昨日
「敷地を貸してくれることになった後に、色々世話してくれる人もいるわけじゃないですか。そういう人と敷地を貸してくれただけの人を比 べてしまったりってことはないんですか。」
と聞かれた。それは考えたこともなかった。でも大事な問題だなと思った。比べたところでその現場が何か変わるわけではない上に、そん なことやり始めたらお前は何様なんだって感じになる。しかも、例えば家の中にいれたり、世話をすることが必ずしも良いこととも限らな い。ほんとに家の置き場だけ貸してくれた方が良い時もあるしそうでない時もあるだろう。それは僕がどうこうする問題じゃない。敷地を貸 してくれただけでそれはとても大切な協力者で、神様みたいなもんで、そこに良いも悪いもない。僕はただ目の前の状況を、そういうもんだ と受け入れてその中で工夫するだけ。与えられた環境やシステムを破壊しようとかは全然思わない。ナポレオンみたいに状況からつくろうと は思わない。状況の中でいかに遊ぶかってことだけ考えるようにしている。どんな革命家も革命が終わったらみんな保守主義者になっちゃう って、確かハンナアーレントが言ってた。

今日は朝からずっと雨が降ってる。じめじめとした雨で、空気からは潮の匂いがする。僕の家から5分くらいのところにある道の駅の休憩室 で絵を描いてたら、知らないおばちゃんが突然
「わたし新潟なんですけど、村上の方とか通るとよくお宅にあうんですよ。松之山の方でも見ました。」
って話しかけてきた。挨拶とかなしに、話の始めから「わたし新潟なんですけど…」だった。まるで知り合いみたいで新鮮。僕のことを「お 宅」と呼ぶのはまさにそうだなあ。

朝10時半ごろには名立を出発したけど、台風が近づいてるせいか海からの風が強くて歩みが遅い。なんだか体調もあんまり良くない。1 0キロくらい歩いたところに能生という町があって、そこにまた道の駅があった。今日はここでいいやと思って道の駅のインフォメーション のおねえさんに僕の活動を説明したら面白がってくれて
「うちの建物、来年の四月で建て替わっちゃうんですよー。25周年なんです。描いてくださいよっていったらどうします?」
といわれた。
「家しか描いてないんです。すいません。あとこの建物は大きすぎてちょっと無理です」
と答えたらすんなり
「ああ、そうなんですね。」
と理解してくれた。彼女も床に紙を敷いて何か描いてたから
「貴方も何か描いてますね!」
「わたしは文字を描いています。」
と言うので見せてもらったら「豊漁大感謝祭」というイベントのための広告を手書きで絵の具で描いてる。そのうしろ姿から、何となく職 場への愛が垣間見える。良い。

夕方には雨が止んだので「今だ」と思って、公衆トイレの水場で服を手洗いして近くにあった手すりに干した。乾かしてるあいだに夜の町を 散歩。知らない夜の町を手ぶらで歩くのはとても気持ち良い。能生町はコンビニとスーパーが1軒ずつあるくらいの小さな港町で、国道8号 線の道沿いにある。車の通りは多い。大きなトラックが何台も凄いスピードで僕を追い抜いていった。僕は音楽を聴きながら空を見てた。 とても高くて薄い雲を透けて半分の月がみえる。潮風が気持ちよくて体も軽くて、音楽も聴いてたから自然にスキップになった。気がつい たら、昨日名立で出会ったお母さんから「また名立に来てくださいね!」と応援メールがきていた。

洗濯物も、雨が降る前までに乾かすことに成功した。

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Posted by satoshimurakami