10071910

境鉱泉という温泉の休憩スペースでこの文章を書いてる。富山の黒部峡という地酒を宣伝するチラシがテーブルにおいてある。もうここは富山県に入るらしい。でも、僕の 家はまだぎりぎり新潟県に置いてある。とってもいい温泉だった。シャンプーはないけど石けんは常備してある。地元の人が集まる温泉らしく、僕には聞き取れない方言 で話してる人がいる。
「ボケ防止にみんな……してひとつだけでも…」
みたいな話してる。

今日は、朝起きたら青空になってた。台風が過ぎ去って空気が澄んでる。まだ風は少し残ってるけど、お昼頃お寺を出発した。一昨日お巡りさんに言われたように、まず 糸魚川駅に行ってみた。洞門という地域の道路がせまくて危ないらしいので、電車で家を何駅か運んでもらえるか聞いてみた。若いお兄さんが対応してくれて、少し笑いな がら
「少々お待ちくださいね」
と言って奥に引っ込んでいった。5分くらい窓口の前で待ってたら
「待合室に暖房はいってるよ!サウナみたいになってるよ~」
っていう大きな声が窓口の中から聞こえてきた。良いもの見た気がした。しばらくして若いお兄さんが戻ってきて
「一応車両に持ち込める荷物の大きさが、縦横高さ合わせて2.5メートルまでっていう決まりはあるんですけど…。警察に言われたんですよね?」
「そうですね。乗せてもらえるならそうしなさいって言われました」
「あまり混んでる車両ではないので、車掌次第では乗せられると思うんですが…。どうしても他に方法がないのであれば…。」
「とりあえず家を持ってきてみます!」
そんで家を持ってもう一回来たら、その若いお兄さんが上司っぽい人(多分車掌さん)を連れて家を見にきた。そして 「思ったよりでかいっすね…」
と言った。その上司っぽい人は家を少し見た後、窓口の奥の方に入っていった。しばらくして出てきて
「すいません。ちょっと乗せるには大きすぎるので…。すいません。」
と僕に告げた。結局駄目だったけど楽しいやり取りだった。家を持って歩いてきちゃって、この先歩道がなくて危ない道があるっていう状況の僕をみてみんな一生懸命考 えて掛け合ってくれた。でも規則にはかなわないのだな。だから、その危ない道を通るしかない。というかあちら側へ行くにはここを通るしかないのに、なんでその道が 車は通れて歩行者が通れないような状況になってるのだ。
10キロくらい歩いたら洞門というところに来た。確かに危ない道だ。道幅が狭いトンネルがずっと続いてて、大きなトラックとかダンプカーがたくさん通っている。た だ運がいいことにたまたま工事中で、長い範囲に渡って片側ずつ通行になっていた。工事のおじちゃんたちがみんな協力して僕を誘導してくれた。僕を追い越す車の列 (道路の左側を通る)とすれ違う車の列(道路の右側を通る)が交互に来るので、それらと反対側の道の端を通るようにして歩いた。昔のゲームでこういうのあったよう な気がする。そうやってなんとか洞門をクリアした。工事していなかったら今まで歩いた中で一番危ない区間だったかも。

その後5キロくらい歩いたら「親不知」っていう町に着いた。山と海に挟まれた国道沿いの細長い町。廃校になった学校の駐車場を、何かの工事関係者が拠点に使ってい た。1軒だけあるお寺で敷地交渉してみようとしたけど誰もいなくて、近くに道の駅があったからそっちに行った。最近の敷地は道の駅とお寺を繰り返している。なんだ かつまらない。 家を置いてすこし散歩してみた。ここらは翡翠の採掘地らしくあちこちにヒスイっていう文字が見える。今はやってなさそうな民宿がたくさん並んでいる。大きな海水浴 場があるから、海水浴シーズンには賑わうのかな。賑わってるイメージが全く湧かない。国道の反対側にある道の駅以外に、町に人が溜まる場所がない。これから冬にな っていくってのもあるんだろうけど、街全体にどんよりと寂しさが漂っている感じがする。国道と平行して走っている町の道路を歩いても人とすれ違わない。やたらと警 部服を着た色黒のおじさん達が目につく。何かの工事のために交通整理をしてるんだろうけど、他に人がいなさすぎるから、何か全員で僕を騙しにかかってるんじゃない かって妄想しちゃう。「親不知交流センター まるたん坊」っていう、宿泊と入浴ができる市営の施設があったからそこでお風呂に入ろうと思ったらドアに「定休日」と書 かれた札が下がってた。でもドアをあけてみたら開いた。インターホンを鳴らしてみたけど誰も出てこないのでちょっと靴を脱いであがってみた。ディズニーの「7人のこ びと」のキャラクターが「WELCOME」と書かれたボードを持ってこっちを見ている。それがこわい。なので入るのをやめた。
調べたら駅で二駅のところに温泉があるようなのでそこに向かう。親不知の駅から日本海と奇麗な夕日が高速道路ごしに見える。高速道路は景色を見るにあたっては邪魔 だ。見るためじゃなくて車を走らせるために作られているのだから当たり前だ。そんで越中宮崎っていう駅まで電車で行って、境鉱泉に来た。

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Posted by satoshimurakami