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今日も9時くらいまでたっぷり寝た。いきなり寒くなった気がする。たぶん台風が冬を連れてきたのだ。そろそろ上着を手に入れるか寝袋を買い変えるかしたほうがいいかもしれない。
高岡市から西に向かって歩いてたらまた職質をくらった。すかさず身分証を渡したらお巡りさんが
「もしかして最近声かけられましたか?」
「昨日すぐ近くで声かけられました」
と答えたら身分証を返してくれて
「なんか、旅行かなんかされてるんですか?これで寝泊まりするってことですか。あーやっぱりそういうことなんや。お気をつけて」
と言ってすぐに解放してくれた。初めてのパターンだ。彼らはこっちがいくら
「すぐ近所でも職質されたんですけどまたですか」
って言っても職質をやめない。全然信じてくれない。まあ嘘をつく人間がいるからってことなんだろうけど。

名前はわからないけど茎のてっぺんだけに黄色い花をいっぱい咲かせてるヤツ(やたらたくさんいる)と、ススキが目立つようになってきた。あとねこじゃらし。道ばたに生えて る草の色味が、緑から赤茶色に変わってきてる。日本が冬に入る準備をしてる。冬は好きだけど「冬が好き」とかってセリフも身の安全が完全に保証されているから言える事なん だなと思った。今の生活では、とにかく少しでも寒くなくて雪が降らない土地へ行かないと死活問題になる。

歩いてる僕の前に車が停まって、中からスーツを来た男性が降りてきた。なんかの取材かなと思ったら、案の定北日本放送というローカルテレビ局の人だった。夕方のニュースで 取り上げたいから取材したいとのこと。大きめのカメラをもって、ヘッドホンをつけてインタビューしてきた。このあいだの読売テレビの取材ではクルーが6人いた。だから今回 1人でカメラマンと音声マンとリポーターを全部やってる感じが新鮮だった。一生懸命話した。そしたら
「そんだけ考えがあってやっていることを、ただ『家が歩いてる』っていうニュースにするだけではつまらないので、しばらく取材させてください」
ということになって、夕方僕が敷地を探す頃にまた来ることになった。

途中あった道の駅で休憩してたら、そこにパネル展示スペースがあった。地図とか、近隣のイベントのポスターとかが貼られている。退職したばかりくらいの年齢層の夫婦がい た。旦那さんは地図を見ている。奥さんが話しかける
「おとうさん。…おとうさん。」
「え」
「トイレ行ってきます」
「…」
そして奥さんの方がトイレに立ち去っていった。そのやり取りに何故かグッときた。一緒に暮らしてきたであろう長い時間がその短い会話に現れていた。駐車場にキャンピングカ ーがいくつか停まっていたから、それで暮らしてる夫婦かも。そう思い込むとなおさグッとくる。

小矢部市の石動っていうところにお寺がやたらたくさんある地域があったので、そこで北日本放送の人も合流して敷地を交渉することにした。一軒目にいったお寺で一発オッケー をもらった。和尚さんが
「今日は寒いから御堂の中で寝るといい」
と言って中に入れてくれた。夜夕食にも招いてくれて、和尚さんが一番好きだという菊水の一番搾りを飲みながらいろいろとお話しした。和尚さんは転勤族で、もともとテレビ関 係の仕事をしていたけど奥さんの実家のお寺に人がいなくなったので、急遽仏教の勉強をして住職になったという身らしい。いろんな生き方があるな。
しかもアートディレクター の北川フラムさんが住職の後輩だった。フラムさんは学生の頃から活動的な人間だったらしい。話していて、僕のような活動に対して免疫があるような気がしたのだ。どうりで。
富山県は、かつての加賀百万石前田家の分家の地域だった。そんで加賀藩は力のある藩だったので、幕府から目を付けられていた。なので「自分は茶や陶芸を愛好する害のない人 間だ」と思わせるために、江戸から茶人を招いたりして文化政策に力を入れた。その結果文化が発達することになった。金沢はもちろん、富山県高岡市なんかも全国の大きな寺の 鐘の何割かはそこで作られている、銅器で有名な場所らしい。 またこの石動と呼ばれる地域は浄土真宗のお寺がいっぱいある。江戸時代以前はこの辺りで浄土真宗による共同体ができていた。100年ぐらい宗教で統治されていた時代があっ た。その名残がいまも残っていて、お寺で講話を聞く習慣があったり、信心深い人々がたくさんいる。という話を聞かせてくれた。

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Posted by satoshimurakami