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古川日出男さんの「ベルカ、吠えないのか?」を昨日ポツダムのホステルのベッドの上で読み終わった。こっちに来る前に、松本の丸善書店で急いで買ったのだった。凄まじいくらいの読後感。読後徐々にその想像力の巨大さが押し寄せて来る感じ。離れ技だ。これまでまったくマークしてなかった地点からこっちの世界を記述されるような。こんな物語をどうやったら思いつくのか。。読んでいて、書き手が掴もうとしているものの大きさに唖然、というか恐ろしさを感じることがしばしばあった。これはマジで敵わないなと思ってしまうこともあった。あとで考えると、文学をやる覚悟の大きさを目の前にして、ただ突っ立っているだけだった。しかもその本を、今から72年前に日本に対する降伏を要求する「ビッグスリー」による会議が行われたこのポツダムで読んでしまった。本の中で重要な地として出てくる米領サモアには、いま友達が青年海外協力隊として働きに行っている。その遠い太平洋の島国と、このポツダムと、日本とを、ぐおんぐおんと行き来させられる。犬の血統の話。やめておけばいいものを、ネットでこの本に関する直木賞審査員の書評を読んでしまった。本当にやめておけばよかった。でも誰かと話したかった。けど近くにいるのは、ホステルに泊まっているインドからきた旅人。彼は誰かと電話で話していた。そこで彼に「ちょっとこの本、すごかったんだ。」と話しかけるような気にはなれなかった。というかそんな人はいない。

Posted by satoshimurakami