06091018

今日はロックの日で、おばあちゃんの命日だ。お墓参りにいけない。帰国したら挨拶しなくては。

昨日は夜行バスで早朝にローマにつき、たまたますぐ近くだった予約したホステルに行って大きなスーツケースだけ預けて(これが大間違いだった。リュックも預けるべきだったのだ)、電車でローマ駅まで行って、そこから歩いてコロッセオを通りがかりに見て、ヴァチカンまで行った。まずサン・ピエトロ寺院に入ろうと思ったのだけど、中央の広場にこれでもかっていうくらい長い行列ができていて、それが寺院の入り口まで続いている。「これに並ばなくてはいけないのか・・観光地なめてた・・」と思って並び始めたら意外とするすると列が動き、たぶん30分かからないうちに入れた。列はセキュリティチェックの列だった。荷物の中に不審なものがないかのチェック。ちなみにローマにはあちこちにイタリア軍の兵士が二人一組で路上警備をしていて、みんな機関銃を持っている。物騒だ。ちなみにヴェニスビエンナーレの会場でも三人一組のイタリア軍兵士が機関銃をもってパトロールしているのを見た。ちなみに路上には他にも、あと両手の肘から先がないおじさんがそれを通りがかりの人に見せて物乞いをしていたり、足のつま先がないおじさんがそれを通りがかりの人にみせて物乞いをしていたり、サン・ピエトロ広場には「ワンユーロワンウォーター・ワンユーロワンウォーター・ワンユーロワンウォーター」と早口で呪文のように水を売っている人たちがいたり、あとこれはヴェニスでもいたけど、自撮り棒を売っている人もいる、あとなんか正体不明のパックされた小さな赤い粒を売っている人もいた。あれはなんだったんだ。

よく考えたら、「観光」っぽいのをするのは今回の旅ではこれが初めてだ。ヴァチカンはさすがヴェネチア以上に世界的な観光地で、平日なのに観光客でごった返していた。

セキュリティチェックを終えて中に入り、ドームエントランスと書かれたところに行き、列にならんで、あれよあれよとすすんでいたら、現金で6ユーロ払わされて、500段くらいの階段を登らされ、気がついたらドームの天井に登ってサン・ピエトロ寺院を観光する人々を遥か高みから見下ろしていた。僕はただ普通にこの教会を、パンニーニが描いたのと同じく下から見たかっただけだが、気がついたらめっちゃ高いところにいた。夜行バスでかなり疲れていたところに500段以上の階段はきつく、正直はやく帰りたいとずっと思いながら狭い通路を登っていた。登っている段階で、これはなんだかおかしいとは思っていたけど。その後500段以上の階段を降りて下にたどり着き、普通にサン・ピエトロ寺院に入った。どうやら寺院を普通に見学するぶんにはお金を払う必要はなかったらしい。また貴重な現金を無駄にしたしまった・・。サン・ピエトロ寺院は、そのバカみたいに高い天井のおかげで下にいくら多くの人がいても全然狭苦しくない。バカみたいに大量に置いてある凝った美術品や壁画や天井の装飾に囲まれていたはずけど、細部をちゃんと思い出せない。ただ空間に圧倒されて佇んでいただけだった。それはとても気持ち良かった。そこで一つ作品のアイデアを得た。今回の旅の間に作ることにした。

その後ヴァチカン美術館に向かった。通りがかりのレストランでスパゲッティボロネーゼを食べたのだけど、これがとても美味しかった。1200円くらい。ヴァチカン美術館はサン・ピエトロ寺院以上に人がごった返していて、作品なんか観れたもんじゃなかった。膨大な壁画やタペストリー大理石の彫刻にずっと頭がくらくらしていた。宗教画はとっつきにくい。ただ、歴史の蓄積が分厚いなあということだけ感じた。疲れていた。終盤に突然ルドンのドローイングがでてきてとてもホッとした。ようやく作品が見られる、という感じ。そこからはずっとモダンアートの展示だったけど、あまりにも疲れていて人当たりもして、しかも階段を1000段上り下りしたあとだったので倒れそうになっていて、最後はすっ飛ばして出て来てしまった。しかし、あまりにも周りのみんなが延々と写真を撮っているので、この人たちはいったい何を写真に撮ってるんだろうということをずっと考えてしまっていた。去年ストックホルム大聖堂に行った時に、観光はもしかしたら成熟の証なのかもしれないと感じたけど、それに関していうとサン・ピエトロ大聖堂はまだ良かったけど、ヴァチカン美術館はなんか怒りさえ湧いて来た。カメラをもった手を掲げて、天井画を撮ってるかと思ったら自分の写真を撮ってる人とか。疲れていたというのもあるだろうけど。あそこは疲れている時に行くべきではない。みんな写真をとりすぎだ。shoot and forget,shoot and forget,shoot and forget..膨大な壁画や大理石の彫刻をみているうちに、考えてみれば今まで、芸術作品をひとつでもちゃんと見れたことがあるだろうかと思った。ここにいる誰も、この作品をちゃんと見てはいないだろうし、今後も永久にちゃんとみることもないだろう。ここにある作品に限らずだ。作品をちゃんとみるってのがどういうことなのかはわからないけど、いくら見ても全然見えない感じが、作品によって濃く出たり薄く出たりするだけで、完全にクリアに何かを見れたことなんて、多分誰も一回も経験したことがないんだろう。だからみるんだろう。引き続き。

倒れそうになったので急いで「出口」と書いてるほうに歩き、ヴァチカン美術館を出たら、最初のサン・ピエトロ教会の出入り口に放り出された。逆戻りはできないので、そこからまた日差しの中を20分くらいあるいて美術館の入り口まで戻り、そこで預けていたリュックを取り返してホステルに帰って来た。

サン・ピエトロ寺院のおみやげ屋さんで、ローマ教皇とサン・ピエトロ寺院が印刷されたヤバいTシャツを日本への土産に買った。このTシャツ着てるとクリスチャンだと思われちゃうかなと思ったけど、それはないだろうと思い直した。そのくらい「観光地としてのヴァチカン」を感じさせるデザインだった。このTシャツを見た人は、「彼はクリスチャンなんだな」と思う前に「ヴァチカンの観光土産なんだな」と思うだろう。この「観光地のお土産にされるTシャツのデザイン」のリテラシーを僕たちはいつから持っているんだ。「観光」とは何なのかは、このTシャツに全て現れてるんじゃないか?観光とは、あの悪しき日常化の働きのことじゃないか?

夕方に奈保子と少しだけ電話。ちょっと様子が心配だけど、大きなイベントの直前だから無理もない。ずっと準備して来た「あそびなおす」に僕がいられないのはとても残念だけど、うまくいってほしいと普通に願っている。

夜はホステル近くの「日本料理屋 DAIFUKU」というレストランに行って海鮮チャーハンを食べた。従業員の多くは中国人だ。一人に「日本人?」と聞いて見たら「チャイニーズジャパニーズ」と言ってた。僕の向かいに座っている、多分イタリア人のおばちゃんがアサヒの瓶ビールを飲んでいるのが面白かった。

Posted by satoshimurakami