10月25日

10月25日

昨日、2週間ほど家を預かってもらっていた京都造形大学からnowakiに家を動かした。

nowakiというのは野分と書き、台風のような暴風のこと。かつては、それはただの災害というよりは、恵みをもたらすものとしても考えられていた。そこから店名をとった。店の雰囲気とは裏腹にラディカルな名前だ。京都を南北に走る大通りから一本東にはいった長屋が並んでいる通りにある。夜になると通りは静まりかえる。店の2階にいると音がほとんど何も聞こえないほど。二階にはユキという猫がいる。ユキはおとなしい奴で、僕は鳴き声を聞いたことがない。もう開業から丸五年たっている。素敵な器と本を扱っている。

今日はそこから枚方の友達の実家まで家を動かした。23キロくらい。

途中、京都と奈良から三つの川(桂川、宇治川、木津川)が大阪で合流して淀川になったあたりの河川敷を歩いているとき、通りすがりの自転車乗りと歩きながら1時間以上話した。

その河川敷の道路は、先日の台風の影響で一部砂で覆われていた。台風や大雨があるたびに度々こういうことがある。数年前の台風のときはこの道路はまるごと川に飲み込まれた。そして水が引くと、上流から運ばれてきた砂が路上に残る。砂はとてもさらさらしていた。ここいらの砂は良質なことで有名。コンクリートの材料などで使われる。この砂を取るための砂船は、ここらの住民にはおなじみのものになっている。だいたい毎日朝9時ごろに、大阪の大川・桜ノ宮あたりにある船着場から、水位を上げ下げして船を行き来させる、観光スポットにもなっている毛馬閘門を通って、その船はやってくる。川底にある砂をとり、昼頃には船が沈むんじゃないかというくらいに大量の砂を積んで大川に帰っていく。神戸のポートピアの埋め立ての時にここの砂が使われ、業者たち左団扇だった。大阪府としても、砂が積もりすぎると船の行き来に支障が出るため、砂の採取を許している。

側にはゴルフ場がある。ゴルフ場とその道路との間にはネットが貼られているが、増水した川によってネットに流木や草木が押し込まれ、一部は壊れてしまっている。その自転車乗りの男性は枚方に住んでいて、いつもこの河川敷を走る。その道路は道幅が広く、景色もいいのでツーリングしている人たちが多くいて、家と一緒に歩く僕たちを横目で見ながら走り去っていく。ゴルフ場が切れたあたりで男性と別れ、樟葉駅へ向かった。

くずは駅近くで突然後ろから

すいませーん!

と声が来たような気がしたけど無視していたら、今度は無視できない大声でまた「すいませーん!」と声をかけられた。あまりに大きな声だったので「はい!」とこっちも自分でびっくりするくらいの大声で返事をしてしまった。キックボードに乗った小学生の男の子だった。彼はやたらと丁寧な言葉遣いで快活に話しかけて来た。

すいませーん!

はい!

あなたは、何者なんですか?

ええと、絵描き、です。

絵描き!絵描きとは!すごいですねえ!いやはや。これができるとは。

ふふ、言葉遣い丁寧ですね

いやいや。さっき河川敷でみたんですよ

そうですか

ほんまびっくりしました。ずっとやってるんですか

ずっとやってます

それはしんどいですねえ。

しんどいですねー

おつかれさまです。がんばってください。

はい。ありがとう

では失礼します。

と言って少年は僕の右側を抜きさってキックボードで走り去っていった

その後友達と合流し、実家に家を置かせてもらった。友達は母親とそっくりだった。

Posted by satoshimurakami