3月30日(9日目)

大変な1日だった。教習所にきて最も長い日になった。まず朝7時50分に教習所に集合した。さすがに6時台にホテルを出て歩いて行くのは前日の夜の時点で諦めていて、目覚ましは7時にセットして起きた。とは言ってもいつも通り6時前に目が覚めてしまったのだけど。7時35分ホテル発の送迎バスに乗って教習所へ。僕と同じ日に入った教習生たちが一つの教室に集められて仮免許検定の説明をうけた。まず僕の受験番号が1番だった。なんで?年の順?

説明が終わって、すぐに実技検定が行われた。受験番号1番なので、当然一番最初に車にのる。少しだけ緊張したけどうまくやれたと思う。一箇所だけ、半クラッチが雑になってガタッときてしまったところがあったけど、全体的に減点されるようなところはほとんどなかったと思う。運転が終わった後、「じゃあ村上さんね」と教官が話しかけて来た。説明を受けた際「運転が終わった後で教官から一言あると思います。ワンポイントアドバイスです。聞いてください。」と言われていたので何を言われるんだろうと思って構えていたら

「いい運転でしたよ。」

「あ、ありがとうございます。」

「おつかれさま。」

とすぐに終わった。これは・・。やったぞ。やったぞ俺は。いけるぞ。自信をもて。何事にもな。自信を持てよ。ロビーでパソコンを開いてこの一連の流れを日記のためにメモしていたら、向かいに座っているすごく頭の悪そうな20歳くらいの男が携帯を垂直に立てて、カメラ部分をこっちに向けてじっと構えている。自分を映す方のカメラを見て鏡がわりにしているのか、なにかしているのかもしれないけどすごく不愉快だ・・。撮ってんじゃねえよと言ったとして、撮ってねえよ自意識過剰だよ言われて終わりだろうけど、携帯を構えられるだけで不愉快に思えてしまうほど頭の悪そうな男だ。頭の悪そうな男は視界に入れるべきではない・・。どんどん口が悪くなるな。新宿で働いてるときも僕は口が悪くなっていた。ハルさんと「今日も馬鹿ばっかり来るな」とか「まともな客いねえよ」とか「こんなクソみたいな職場」とか裏で散々言ってアハハと笑っていた。お昼休憩に二人で中華料理屋に行ってビール飲んで午後からまた店にでたこともあった。「酒飲まねえとやってられねえよ。アハハ」とか言って。楽しかった。まわりの悪口を言い合えるのは貴重だ・・。ハルさんはシンガーソングライターでもあって、CDももらった。サイコーのにーちゃんだ・・。

ロビーで座ってたら、突然「降りる時なんもいわれんかった?」と茶髪の、もしかしたら同じ年(あとでもう一度見かけたけど、そんなことはない多分年下だ)くらいの男性に話しかけられた。人ってこうやって突然話しかけていいもんなのか?びっくりして「いや、特に・・。いい運転でしたよとだけ言われました。あはは。」とか言ってなんか自慢したみたいになってしまったかもしれない。ああこんなことを後で気にしてしまう自分が本当に嫌だ・・・。

茶髪の彼はなんというか、チャラチャラしてそうだけど、味わい深い顔つきをしている・・。なんかというか、諦観を感じる顔だ。

「俺多分ダメだわ。左右確認が全然できてなかった。すげー緊張しちゃった。緊張してるねっていわれたわ。」

と、彼はその諦観を感じる表情で話していた。

実技のあと、ロビーのモニターで合格者発表があって、その後第二教室で筆記試験が始まる。あの話しかけてきた茶髪のにーちゃんと、例の建築やってる男の子が筆記試験の会場にいない。。落ちたのか?

試験監督の先生はあの、人を眠くするのが上手な教官だった。受験番号1番なので当然教室の一番前にすわるわけで、今回初めてこの教官を間近で見たけど、不愉快だ・・。見れば見るほど不愉快な気持ちになる・・。目が濁っていて死んでいる。薄ら笑いが顔にはりついている。書類にボールペンで記入するにあたって「掠れるのがダメ」「二度書きはダメ」とか説明するのだけど、その声に気持ちの悪い優しさが混ざっている。とても、こころがすこやかな状態だ。

試験は、あとで見直したら確実に間違えた問題が1つ、自信がない問題が2つくらいあった。若干の不安があるけど多分大丈夫だろう。しかし、あとで見直しても回答の成否がわからないのはおかしい。こんなテキストで出題してるうちは、出題者の意図を深読みしすぎて間違えて落ちる人は絶えないだろう。この問題は合ってて、この問題が間違ってるなら、多分この人は深読みしすぎたんだろうという判断をして、不正解でも正解になるような採点方法なら納得だけどそうなってはいないだろう。

そのあと2時まで1時間半くらいお昼休みをもらった。ご飯(今日はカレーだった)を食べて、いつも通り散歩したのだけどくしゃみがとまらなくてちょっと寒気もする。大丈夫か?花粉症か、風邪か。わからないけどもう帰りたい。でもこの後2時に合格発表があり、それに受かったらあと3回も運転教習が入っている。突然の、鬼のようなスケジュール。仮運転免許を取ったその日に、路上教習3回もやるとは・・。

2時に再び第二教室に集まり、あの不愉快な教官が「それじゃあ画面を見てください。合格発表します。自分の番号があるか確認してください」。「きゃー」みたいな黄色い声が後ろの方からあがる。キラキラキラキラ~みたいな効果音とともに番号が発表された。ワードでつくったらしいフォーマット。僕の番号1番も、赤い字で書いてあった。受かった。受かってから気がついたのだけど、ものすごく心拍数が上がっていた。ここで落ちていたら延泊することになっていた・・。94点で合格したらしいけど、どの問題が間違っていたのかはわからない。100点はいなかったらしい。

そのあと割とすぐに運転教習。五十嵐サンだった。しょっぱなからバイパス道路に出て、60キロで走ってきた。自分で運転していると、道路がガタガタしていることがよくわかった。五十嵐さんはこの掛川自動車学校にきて25年くらいになるらしい。その前に30年くらい、浜松の自動車学校で働いていたけどそこがつぶれてしまい、そこにいた教官たちは散らばったらしい。「今では、この時期は教習生で混み合うけど、他はガラガラになる。昔は、ずっと混んでいた。車離れもあるかもしれんな」と言っていた。

そのあと1時限あいて、次の路上教習。今度は加藤サン(頭こんがらがってわけわかんなくなってるけどよろしく~と言っていた人)。ローギアで半クラッチを見つけるのにどうしても時間がかかりがちで「発進が遅い」と言われた。加藤さんには他にも色々言われた。ここ、子供飛び出し注意っていう看板見えてた?とか横断歩道あるよ。あの自転車は、あの横断歩道を渡るのかな?渡るかもしれないよ。今追い抜く理由はあるかな?とか。色々。

そのあとすぐにまた路上教習。くらくらする。今度は新キャラの先生だった。ちょっと車好きらしく、「初代ラパンを持っていた。初代ラパンが一番かっこいい」という話をしている時に、ちょうどその初代ラパンが対向車線から走ってきて、「あ!あれ!初代ラパン!」とテンション上がっていた。愉快な仲間たちだ・・。

それで全ての教習がおわった。疲れていたけど、運転中に見た月がとても綺麗だったので、歩いて帰ろうと思ってホテルまで結局歩いて帰った。今日は映画は見ない。

自分を信じるところから始めろ。自分も信じられないようでは・・。覚悟を決めろ。全部本気でやれ。ぶっちぎれ。子供のままで、かつ大人のソウルも抱いてけよ。

Posted by satoshimurakami