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台湾の宜蘭でのワークショップが終わった。中学生20人くらいと一緒に1日半の長丁場だった。2つの学校で1回ずつ。計4日間。AGUA Designという事務所が中心になってやっているCITY YEASTという団体から招待いただいて17日から台湾に来ていた。子供達を都市を良くするための酵母菌と考え、action for educationというテーマで世界各地から招いた人と台湾内の学校(どうやら学校側からの立候補で決まるらしい)をマッチングさせてワークショップを行っている。とても良い企画だと思う。何が良いかと言うと、学校教育がこのままではいかんということは全員わかっているけど先生は忙しすぎて余裕がなく、学校内からこういうアクションをやろうと動き出すことは大変ハードなことが予想できるので、外部機関がこういうかたちで教育に介入して、文字通り学校の先生と協力して、その「1日半」ぶんの通常授業の枠をこじ開けて実行している。しかも、今回対象になった学校以外の学校にもこの成果を共有するため、他の学校の先生たちをワークショップ見学に招いたり、終わった後にディスカッション(2回)やフォーラム(1回)を何度もやったり、映像記録、写真記録、文書記録の人がそれぞれいて常にワークショップ中の様子を記録している。事前にインターネット上で顔が入った写真を公開されることの承諾を子供の親から取り、撮影した記録はほとんどリアルタイムで次々フェイスブック上にアップされている。最初にこのプロジェクトへのお誘いメールが突然台湾からきたときはびっくりしたが子供達のワークショップに関しては考えたいところがあったので、この機会にワークショップというものに真剣に向き合ってみようと決めてプランを考えた。最初は身近な材料から椅子を作り、それを被って街に出て、つまり自分が町のインフラになってオフィス街を歩く人たちの前に出てきて座ってもらうために頑張る、というようなアイデアを考えたがそれは「台湾では全員普通に座ってしまうからつまらない」というような理由で却下され、「町の中に自分の町を作る」というものになった。

まず身近なリサイクルの材料(ダンボールやペットボトルや紐など)で家を作る。ただし一人ではなく、3~4人のグループで。それができたら、次に町のなかにあるものを選んで作ってみてくれ、と言う。それは電柱、車、看板、市役所かもしれない、畑、ファミリーマートかもしれない、海や山かもしれない、ベンチかも。そしてなにを作ろうとも、それは自分の家と関連しているので、その家とつなげてみてくれ、と言う。家は最後に外に持っていってそこで町にします。そこで日本から持ってきたおやつがあるので、おやつタイムにしましょう。給食もそこで食べましょう、材料も時間も限られているので、工夫する必要がある。そのときは一緒に考えましょう。

というのが最初のアイデアだったが、実際始めてみると事前に考えた流れとはすこし違うものになっていった。僕も大変勉強させられた。

数人のグループで家をつくり、それを集めて町をつくり、その町の外には公共空間という、本物の町がある。自分たちで作ったその町は、公共空間の中での自分の居場所になっている、という構図を作りたかったのだけど、今回は学校内で作ったものを持学校の敷地外に持ち出すのは立地的に難しく(外には広い場所がなかった)、車やバイクも多いので断念した。なので学校の敷地内の外部空間に町を持ち出したのだけど、そういった、自分の空間と公共空間の関係というコンセプトにも支えられつつ、素材と向き合う作業が予想以上に面白くて、手を動かしながら身近な素材と向き合って、空間を立ち上げるためにどうしたらいいのか考える、するとその素材の性格が見えてくる。ダンボールは面で、紐は線だから、ダンボールは紐で縫うことができる。テープで止めるべきなのは細部の隙間などで、構造的にしっかりとダンボール同士を結合するには紐で縫った方が良い。とか、そのダンボールは、丸めたら棒にすることができ、重いけど非常に強い柱として使える、とか、ペットボトルも繋げれば柱にもなるし、また口が開いているので、そこから屋根を支える棒を入れることができるなどなど。「空間を作る」という単純なワークショップだが、全く侮れない、とても奥が深い。材料がもっと極端に限られていたら、ダンボールじゃなくて新聞紙だったら、など他のバリエーションを考えるとワクワクしてくる。

物は自分の力で読み換えることができ、別の利用方法を考えることができる、なんならそれで自分の居場所までつくることができるということを子供達と一緒に体験できた。僕の「まどり図」という考え方も同じだ。つまり僕の既存の銭湯やコンビニを「お風呂場」や「トイレおよびWiFiスポット」というふうに使って町を自分の家にすることと、紙とかダンボールとか、既存の身近なものを使って空間をつくることは、ほとんど同じことだ。

最初はなかなか手が動かない子もいたが、最後には自信満々に手を動かしていた。子供達からの感想は「自信ができた」というものが多かった。「家を作るのはそんなに難しいことじゃないことがわかった」というのも何人かいた。これには感激した。

2校目のときは外に持ち出すタイミングで少し雨が降っていたので、学校の先生たちは、外に面した廊下(屋根があるところ)に家を出そうと言った。風邪が心配だ、と聞いたのでとても迷ったけど、子供達が1日半かけて防水まで考えてつくった家を屋根があるところに出すのは、歌が上手い歌手をテレビ出演のために口パクさせるようなことになってしまうんじゃないかと思ったし、自分たちでつくったもので雨を防いで、中で給食を食べることができたという経験はさせるべきなじゃないかと思ってやはり外に出したいと言ったら了承してくれて、雨合羽を子供達に配っていた・・僕はこんな学校に行きたかった。

また各々、家に色々なデコレーションをしておりそれも興味深かったけど、何より僕は彼らが家に貼ったテープや、ダンボールに通した紐や折り目などが綺麗だと思った。それはやる必要があると思ってやった跡だからだ。というような話や、日本の津波の話と陸前高田の佐藤たね屋の話などをしてワークショップをしめた。

台湾は初めてきて、食べ物が美味しくて安いので安い安いと言っていたら通訳のハナさんに「最低賃金が125元だから安くないんですよ」と言われた。またちょうどワークショップ期間中は台湾全土にとって大事な選挙ウィークで街中が非常に盛り上がっていた。祭りみたいだった。候補人が車の上で演説しながらゆっくりと走る後ろから子供達が行列して旗を持ってついていくパレードも見た。台湾は最近投票率も上がっているらしい。

台北ビエンナーレも見て来て、julian charriereという作家の映像作品が面白かった。

 

Posted by satoshimurakami