家を背負って歩ける風速ではない。

六戸町のモリランドから10キロくらい歩いて、十和田市のフォトショップフタバへ。風が強くて大変だったけどなんとかたどり着いた。ヴィヴィアン佐藤さんなんかとも繋がってる小原さん姉弟がやってる写真屋さん。去年はここの隣の会津さんという人の家の庭に敷地を借りた。今年も借りる事に。ちなみにモリランド社長のまゆみさんとフォトショップフタバのじゅんこさんは友達同士。二人とも音楽(レゲエやジャズや)を愛し、ちょっとサイケな服が似合う。

 

十和田市も一年ぶりに来たけど、去年「シャッター閉まってる店ばっかりだな」と感じたのを思い出した。今年も同じく、中心街らしき商店街は軒並みシャッターが閉まっている。そればかりか人通りもとっても少ない。これから冬になっていくってのもあるんだろうけど。寂しい空気が流れている。長袖の服を三陸に忘れてしまったので、なにか上着を買わなきゃと思って商店街を散歩してたら「中央商店街」という長屋みたいな一画をみつけた。その商店街は一軒の服屋を覗いて全部潰れていた。

その服屋に入ると人のよさそうなおじさんがとても嬉しそうに出てきた。「寒いので、いま羽織る物をさがしてるんですけど。安いやつで」と言ったらおじさんが置くから色々引っ張ってきた。店内は改造した学ランみたいなふくとかエグザイルっぽい服が大量にラインナップされている。ずっと昔からここにあった店なんだと思う。

おじさんが「この辺は全部1000円でいいよ」と言って出してくれた服のなかにかわいいパーカーがあった。それを買って、その場で着て店を出た。着た瞬間とっても気に入ったので、店を出るときおじさんに「これすごく良いです!ありがとうございました」って言ったらおじさんはとっても嬉しそうに笑って「うん。似合うよ」と言ってくれた。この店にはがんばってほしい。

シャッターの閉まった店ばっかりだけど、よく見ると生き残ってる店はどれも個性的で面白そう。服屋のおじさんのおかげで十和田を開拓したい気持ちになった。他にも「ハッピーツリー」という、ヒッピーカルチャーチックな雰囲気を醸し出しつつ、お洒落でめちゃ美味しいコーヒーが飲めるカフェとか「桜田酒店」という輸入酒を扱ってる濃い店をみつけた。

十和田の商店街が力を失ってるのは、かつて観光地として名高かった十和田湖周辺が寂れてしまったのが大きいという。やっぱりかつていちばん集客力があったのは十和田湖まわりらしい。

土地

  
床下

間取り図

池田卓馬さんに言われて、最近間取り図の描き方を変えてみた。青い斜線部分が間取りと言う事になる。「間取り」は「間取る」の名詞形だと考えると、僕の家は「まちを間取る」ということをしてる。

最近岩手県は、秋田県に抜かれて自殺者数が全国ワーストワンになったらしい。八戸の池田さんは「職場の同僚から青森は自殺者数が多いから気をつけてと言われた」と言ってた。東北は自殺者が多いみたい。特に冬に増えてしまうらしい。

丸山さんいわく、冬は長くて、八戸のあたりは雪が降るわけでもなく、ただただ寒いだけ。それが嫌だと。また十和田湖は自殺スポットでもあって、とても深いので調査も無く、湖の底にどれだけ沈んでるかわからないという。十和田のあたりは個人の経営者が多いので、事業がうまくいかなくなると自殺してしまう人がいるという。

八戸~十和田にかけて温泉がたくさんあって去年と合わせていくつか入ってるんだけど、特に森ランドはとても良い。露天風呂と広々とした屋内風呂と、さらに床と浴槽がヒバでできてて寝れながら入れるヒバ湯の部屋もあって、これが全部370円で入れる。畳でくつろげる部屋もあるし、コインランドリーもあるし売店もある。整体もある。岩盤浴もある。同じ敷地にコンビニとラーメン屋と豆腐屋がある。豆腐屋にはソフトクリームも売っている。店の外には太い道路が1本通っていて、その他は一面の田んぼ。去年はこの道路をローリングストーンズを聞きながら歩いていて、歩くときの上下運動の大事さに気がついた。とても大事な場所。歩く際の上下運動が「移動の実感」を与えてくれるので、車や電車などの平行運動がどんなに速くても「移動の実感」は得られない。歩いてると、風にゆれる草とか生き物の動きとか、匂いとか光とかがからだに入ってきて、土地とダンスをしてるような感覚をつかむことがあるんだけど、車ではそれも得られない。

森ランドは社長さんもめっちゃ良い感じのお母さんで、十和田の西塚さんを紹介してくれた人。今年も来られて良かった。

今日の敷地は森ランドの建物のうら。

土地


床下

間取り

21日に池田卓馬さんと八甲田大岳に登り、下山したあとに酸ヶ湯温泉という温泉に入った。シルバーウィークのど真ん中だったので、全国から観光客が来ていて、店の外も中も駐車場も賑わっていた。登山客だけじゃなくて、温泉だけに入りにきた客もたくさんいる。その温泉のなかに「ひば千人風呂」という名前のお風呂があって、混浴だった。僕と池田さんはせっかくなのでそっちに入ろうということになり、普通っぽい浴室のほうじゃなくて千人風呂のほうのチケットを買った。入ってみると脱衣所がびっくりするほど人で混雑していて、着替えるのにまず一苦労した。「混浴」としか書かれていないので、なにかルールがあるのかもわからず、まわりを伺いながら浴室に入った。浴室は天井がとっても高くて、ひばすべてひばでできている。広い浴槽だけがあって、シャワーはない。とても気持ちよい空間。だけど人が多すぎる。しかも目につく99%は男性客で、みんな所在無さげに立ってたり、浴槽にこしかけてたりする。温泉は白濁していて気持ち良さそうだけど、なぜか浴槽の真ん中でお湯につかっている人がすくない。みんな立ってたり歩いてたり、浴槽の隅で腰掛けてたりする。そして面白いことに、みんな女性客がはいってくる方向を向いている。浴室には間仕切りがあって、だいたい男性:女性で7:3くらいの割合で空間が仕切られている。でも間仕切りが無い部分もある。そして、間仕切りが無い部分には女性客がほとんどでてこない。3人くらいは確認できたけど、みんなお風呂用のふくを着てる。バスタオルを巻いてる人もいる。でもほとんど間仕切りからでてこない。その間仕切りのほうを見ながら、50人以上の男性客が所在無さげにしている。異様な雰囲気だった。

 
去年世話になった十和田湖のグリランドで知り合った丸山さんに連絡してみたら、今日の午後から八戸にある丸山さんの姉宅でバーベキューをするという情報をもらい、せっかくなので池田さんと参加することになった。

家もそこに移動させることにして、歩いて行ってみたらたくさんのこどもと丸山姉妹と母親に迎えられた。みんな僕がデザインしたグリランドのTシャツを着て待ってた。完璧に住宅街だったのでこんなところでバーベキューなんかできるのかと思って歩いてたけど、家と塀との間に単管で仮設の屋根と壁がつくられてて、ハロゲンライトもついてた。家族でバーベキューはよくやるらしい。色々と手慣れていた。
十和田湖といえば、去年初めて行ってさびれ具合に驚いた場所。潰れた民宿やホテルがたくさんあった。今年も一つ大きなホテルが潰れたらしい。新幹線や高速道路が開通した影響で客が減ったという話を十和田ではよく聞いた。でも丸山さんは十和田の人たちに驕った気持ちもあったんじゃないかと言ってた。町を自分たちでなんとかしようという気持ちがないと。十和田は保守的な人が多いらしく、空き家を貸してくれと頼んでも断られることがほとんどだと言ってた。
でも十和田湖はとても奇麗だし好きなので、なんとか人を呼びたいと言っていた。十和田湖はとても奇麗。僕もそう思う。夕暮れ時にあんなに妖しい空気がながれてる場所は他に見たことない。今回も行くのが楽しみ。

土地
 
床下

今日になってキャンプ場に家族連れがどんどん増えて来る。なんで連休の二日目から混むんだろうと思ったけど、昨日は一日休んだり、テントを物置から出したりしてたんだろう。

どのテントでもおとうさんが大活躍している。子供はお父さんが一生懸命テントを貼ったりするのをみている。たまに手伝ったり、自分の仕事を探したりもしている。小さな女の子がお父さんに「はい、お父さんビール」と言って缶ビールを手渡す。お父さんはすごく嬉しそうにして「え、いただいちゃおうかなー」と言う。休日のキャンプ場。


昨日遊びにきた池田卓馬さんの家が種差海岸から7キロくらいのところにあったので、今日はそこに家を移動させた。

池田さんは学校で美術を教えながら制作活動していて、マンションに一人暮らししている。手慣れた感じでご飯をつくってくれたりする。

車や電車のようなドアtoドアの平行移動では、移動したという感覚が身体に沸き上がらない気がするという話をしたら、池田さんは「外食でご飯を食った気がしない」という話をしてくれた。あいだをすっとばさずに、ちゃんと調理しないとご飯を食べた気がしないらしい。これは僕の移動の話とつながる。

いつか、野花に詳しい人と一緒に高速で車に乗りながら花を愛でる会をやりたいとずっと思っている。100キロとかで走りながら、路上に咲いてる花をみて「今のはタンポポか?」みたいなことをやりたい。映像も撮りながら。

土地

床下

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起喜来から釜石に向かう。去年このルートはトラックで送ってもらったので歩いて通るのは初めて。
  
 トンネルが多くて、多分6本ぐらい通過した。いちばん長いやつで2キロくらいあったと思う。全国でも有数のトンネル多い地区だと思う。長いトンネルはこわいけど、出る時に生まれ変わったような気持ちにもなる。

釜石では去年も訪ねた知人の家のベランダの前に家を置かせてもらった。

  
土地

 

床下

  
間取り 

  
潮目の柱には

「起喜来 南区 復興拠点」

と描いてある。
起喜来の仮設住宅に住んでいるおばちゃんが「潮目を最初にみたときはこわくて違和感があって、嫌だなあと思ってたんだけど、あれは全部瓦礫でできていて、ひとつひとつの柱とかが前は誰かの家の一部で、そこには生活があったんだと思ったら、途端に違和感がなくなっちゃったの。」
と話してた。そのことは考えた事がなかった。潮目は、起喜来で失われたたくさんの家の集合体として建っていると思うと、また良いなあと思ったし、そういう目で見てくれる町の人がいるのも嬉しい。