開いていた本にトンボがとまった

布団の上でエコノミー症候群になりそう

今回の「移住生活の交易場」は、「拾ったものを交換するショップ」と、「Tシャツとか本当かの一般的なグッズを売っている」店が隣り合っているのが大事なんだろう。なぜ落ち葉は1700円で売ってはダメで、トートバッグは1000円で売っても違和感がないのか。

音楽がなければ僕は何を作ればいいかも、何を書けばいいかもわからなかったと思う

レストランというか大きなバーみたいな店でバイト初日が一緒になった女の人が友達に似ていて、僕が「友達にすごく似てる」と言ったら彼女も「君も友達に似てる」と言った。木の下で。
掃除しろと言われたが何すればいいかわからなくなっていて、店長は電話をしていて、僕は女の人に外で「友達になろう」と、まるで愛の告白みたいに言ったのだが、こちらを見つめる彼女は思っていたよりも歳をとっていて、しかもそれまで気が付かなかったのだが、両目の間には3個目の小さな目があって、左右の目と一緒にまばたきをしている。
店長が電話をやめ、バイトの人たちが指示を仰いでくれと一斉に近づいていくのを見守りながら目が覚める

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喫茶店で窓ガラスにとまった羽虫を、隣のテーブルに座っていたおばちゃんが靴でバンと潰した。素早く、迷いなく。ぶよ、刺されたら危ないから。よくさされるのよ。と言う。しかしそれはブヨではない。それは無害な羽虫だ。

三鷹駅でやった「看板図書館」で僕と話し、紙コップの裏に書いた電話番号までもらったという人に珠洲で会った。その人は、僕が参加した年の瀬戸内国際芸術祭にも行ったらしい。僕が鍋をやっている会期ではなかったけど、三鷹で、僕から小豆島の話を聞いたと言ってた。僕は何も覚えていない。僕という球体は、自分で思っているよりもずっとずっと大きいものかもしれない。

8人で池に立つ波紋をただ眺めて過ごした時間を思い出す

みんなで会社を辞める必要はない。ただ転出届を出せばいい。そして転入届を出さなければいい。そうすれば何かが変わるんじゃないか。

驚くべきことに、車の中でも間取りが生まれる。運転席が書斎、仕事部屋。後ろが寝室、居間、食卓。

四人ほどの若者たちが僕の展示を見て、ショップ前で立ち止まり、そのなかの女性一人が僕の「移住を生活する」を手に取ってパラパラとめくりながら「すごお、村上さんの日記。うわあ・・・何者なんだろう。京大生をこじらせたらこうなりそうな気もしますけどね」と言い残して去っていった。

拾った物を交換するショップ、高いという人がほとんどだが(たっか!これが1750円!)(ていうか、これみて!これ1317円!)(これのどこに2000円の価値があるん?)、ひとりだけ、これはやすいですよー!と言って買っていった。その人は、普段からコマーシャルギャラリーに通い、作品を買ったこともある人だった。

面白いという人も多い。芸術祭に来るだけある。

2ミリほどの赤と黒の虫。髪の毛よりも細い一本一本の足は体の倍くらいの長さ。綿のシャツの繊維に左のいちばんうしろの足を取られて身動きができないらしい。そこから動けない。本の2ページほどを重ねて、虫の体の服の間に入れて、取られた足以外の五本を紙の上に乗せ、踏ん張る足場を用意する。虫との共同作業だ。いま、共同作業をしているということが、よくわかった。彼も紙の上で踏ん張り、僕はその紙が動かないように注意して掴んでいる。そして、足は服の繊維からではなく、虫の胴体から取れた。虫には、ぷち、と言う音が聞こえてそうだが、僕には聞こえなかった。足が5本になった虫は、本のページの上を、ごく普通に。最初から足は5本ですよと言わんばかりに歩いている。僕は紙を少し折り、紙を、僕が座っている木のベンチの脚に当て、本からそちらへ移動するように誘導する。虫はそのとおりに動いてくれた。僕の服の胸のところには、それがそこにあると思ってみなければ見落としてしまうような、細くて小さな黒い彼の左足が残っている。

自分が作ったものや参加したイベントをSNSなどで素直に宣伝することがどうしてもできない