瓦礫の中を後ろむきに吹き飛ばされていく天使のイメージ
今福龍太さんの本のおかげで知った「瓦礫の中をうしろむきに吹き飛ばされていく天使」のイメージ。ベンヤミンが、クレーの絵から霊感を得て書いたテキスト。
「新しい天使と題するクレーの絵がある。そこにはひとりの天使が描かれていて、それは自分が凝視しているものから、いままさに遠ざかろうとしているかに見える。眼は大きく見開かれ、口は開かれ、翼は広げられている。
歴史の天使はこうした姿をしているにちがいない。歴史の天使は顔を過去のほうへと向けている。わたしたちの眼には出来事の連鎖と見えるところに、天使はただひとつの破局を見ている。たえまなく瓦礫のうえに瓦礫をつみかさねては、天使の足もとに放りだしている破局をだ。できることなら天使はその場にとどまって、死者を目覚めさせ、打ち砕かれた破片を集めてもとどおりにしたいと思っている。だが強風が天使の翼をからめとり、そのいきおいが激しいために翼を閉じることがもうできなくなっている。この強風は天使が背を向けている未来のほうへと、天使を吹き飛ばしていく。そうしているうちにも天使の眼の前では、瓦礫の山が天にとどくほどに高くなっていく。
わたしたちが進歩と呼んでいるものは、まさにこの強風なのだ。」
(ヴァルター・ベンヤミン『歴史の概念について』テーゼⅨ)
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