11062159
浦和で8年ケーキを作る仕事をしていたひとと友達になり、北アルプス国際芸術祭の作品撤去を丸一日手伝ってくれた。そのバイタリティたるや素晴らしく、二時間くらい集中作業して私が「休憩しよう」と言っても「え? 休憩ですか?」とぜんぜんピンときておらず、まだまだぜんぜんできますけど休憩というならそうしましょう、という感じである。水分をたっぷり吸った落ち葉堆肥の詰まったガラ袋を運ぶときも、私でもかなり重たく感じるものなのに「重いっすね〜」くらいの軽いノリでひょいひょいと運んでいく。聞くと「20kgのグラを運んだりしてたんで」という(グラとはグラニュー糖のことらしい)。このくらいは造作もない、ということか。撤去の過程で大量の虫(ほんとうにおびただしい数の芋虫たち。すべて同じ種類で、赤ちゃんサイズからキングサイズまで揃っており、王国みたいだった)が出てきて、私が「うわー!」と驚いても、「え! みたいみたい」とむしろ積極的に観察しにくる。指示を与えるとずっと手を動かしているし、また指示を与えられていないときもできることを自分で見つけてどんどんやっていく。「戦士」という言葉が浮かんだ。彼女はこの厳しい資本主義社会を生き抜いてきたソルジャーなのだ、と思った。8年間、相当な激務を日々こなしてきた、ということが容易に想像できた。普段私のまわりにいるひとたちがいかに「ぽや〜」としているかを見せつけられるようだった。みんながムーミン谷みたいなところでのんびり暮らしているあいだずっと、ひとりで地下闘技場で毎日のように死闘を繰り広げ、肉体と精神を鍛え続けたスーパーサイヤ人が、ふらっとムーミン谷にやってきて異次元の強さを無自覚に披露する、みたいな感じだった。最高だった。これは夢ではない。