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・最初は学園生活のような日々を送っていた気がする。階段の下に誰かが火を使って、人型が自分を鼓舞するように拳を上げている落書きをしたことで問題になる、という事件が起きた。私もその現場に行った。煙の匂いがした。
・後にも登場するが、名前がMで始まる中年の男(正確な名前は忘れた。以後Mさんと呼ぶ)と道を歩いていたら、見るからにヤクザが乗っていそうな黒塗りの大きなセダンが空き地みたいなところに突入してきた。すぐにパトカーが何台も入ってきて、あっという間に空き地の中は警官でいっぱいになり、セダンに向かって一斉に発砲した。私たち通行人は頭を下げてその場から離れようとした。もう一台黒塗りのセダンが入ってきて、それから見るからに特殊部隊が入っていそうな白い車も続々と突入していた。やがてあたり一体に白いガスが充満し、私たち通行人は全身防護服を着た特殊部隊が路上にばら撒いたガスマスクを慌てて装着する。私はMさんにマスクを渡し、私も被ろうとしたが小さくて入らなかった。よく見るとマスクにはS・L・LLなどサイズが書かれていて、私がつかんだのはSだった。Lサイズを探して無事装着する。
やがて正義の味方かと思っていた特殊部隊が怪しい動きを始める。(うろ覚えだけど)でかい掃除機のようなものをふりまわして私たちを吸い込もうとしてくる。私はそれに吸い込まれてしまう。
気がつくと私もMさんも、白くて狭くて暗い無機質な部屋にいる。だがすぐに外に放出される。
そのとき、私は「トロン」(あるいは「トロス」)と呼ばれる階級の奴隷(あるいはロボット?)になっている。(ちなみに階級はふたつあり、呼び名は忘れてしまったが、トロンよりもさらに知能的に劣っているとされている、単純作業しかできないようなレベルのそれがもうひとつ)
・その社会は実はかなり独裁主義的な管理社会で、街の至るところに身分をチェックするための白い検問所があるし、私を吸い込んだでかい掃除機を持っている特殊部隊も時々街中でそれを振り回している。しかし市民はしたたかにというべきか、それなりに笑ったりもしながら暮らしている。

(この後に起きたことがすごいのだが、あまりにも長くてディティールを忘れてしまった)

・私はその後、ふたつのコミュニティ(あるいは家族?)での暮らしを経験するが、どちらからも最終的に離れることになる。ふたつとも地下組織というか、この管理社会に抗いながら生きている人たちで、若い人も老人も子供もいた。ひとつめに入ったコミュニティでは涼ちゃんがパートナーとしてでてきたが微妙に関係がギクシャクしていて、周囲の人に「新しい朝ドラがすごく面白いんだけど、知ってる?」と、私が知らないドラマの話をしていて、私はそんなものを見ていることをまったく聞いてなかったのでやきもちを焼き、後で涼ちゃんに「つまりNHKオンデマンドに入り直したってこと? そういうの、ちゃんと教えてくれないと」と不満を言ったりしていた。
・私はそこで暮らしている時に路上で例の掃除機に捕まり、また別のところに放り出された。次に入ったコミュニティでは、学生時代に付き合っていたNさんがでてきた。そこには例の中年男性のMさんもいた。ほかにもたくさん人がいた気がするけど忘れてしまった。
(Mさんには色々な賞をもらった過去があった。スポーツや文化ではなく、なにか、善良な市民活動に与えられるような賞だった)
・そのコミュニティも何かのきっかけで離れざるを得なくなり、気がつくとまた知らない路上にいる。そこはヨーロッパのどこかの地方都市みたいな街並みで、清潔に整備された川が流れていて、街路樹が等間隔に植えられている。私はその街からNさんに電話をかける。といっても携帯電話ではなく、地下の、暗くて狭い映画館みたいな部屋で、スクリーンがあり、なぜか大学時代の友人が何人かいるところから通話をする。スクリーンには相手の顔は表示できなくて、文字情報などは表示できるようだった。電話をかけたときには、すでにコミュニティを離れてから月日が経っていた。もしかしたら、あの掃除機に吸い込まれると時空が歪むのかもしれない、と思った。NさんはMさんとパートナーになっていた。「わたし、誰と一緒になったと思う?」と聞かれたので「Mさん?」と答えたら正解だった。Nさんいわく、Mさんの過去の表彰は現代では全て「反政府的」とみなされる行為だったので、捕まりかけたりして大変だった、とのことだった。「あいつ、いろいろやっちゃってるんだよ」と楽しそうに話していた。私は幸せになってくださいと言って電話を切った。電話を切ったあと胸が熱くなった。
・通話の直前、大学の友人たちが私を茶化すようなことを言ってきて、そういうのは失礼だからやめてくれ。いますぐにここから出ていってくれ、とお願いしたらみんな出ていってくれた。
・終盤、どこかで出会った、なにかの研究者らしき年配の女性(Aさんとする)と、一緒に検問所を通る。
検問所を通る直前、私は自分がしていた星型の指輪を、こんなものをトロンがしていたら不自然だから、という理由で彼女にさりげなく預けようとする。彼女は受け取り損ね、地面に落としてしまう。「オウ!」と彼女は声を出し、私は検問所の女に不審に思われるかと冷や汗をかいたが、Aさんは位が高くて、どうも政府から信用されている研究者らしく、検問所のひとたちも「この方が後ろめたいことをやっているはずがない」と思い込んでいるので、なにも不審がることはなく、にこやかに対応していた。
・「何か聞かれたら『トロン』と答えればいいから」と私は事前にAさんから言われていたのだが、検問所の女が私に質問したことに気が付かず、一瞬だけ無言になってしまった。不穏な空気が流れたが、私があわてて「トロン」とだけ口にすると、検問所の女は、「オウ、トロン!」と、英語みたいな発音で答え、Aさんに向かって「この子、のんびりやさんね」みたいなニュアンスの笑みを向けていた。

という夢。
おもしろいディティールの大半は失われてしまった気がするが、覚めた瞬間、これは記録しておかなければならないやつだと確信するような、はっきりと物語があり、感情の起伏があり、伏線回収まで用意された夢だった。

Posted by satoshimurakami