1/17-1/19
1月17日、長野から電車で名古屋へ。愛知県芸術劇場で「演出集中キャンプ」の仕事。演劇に携わっている人たちを相手に、いわゆる演劇作品などほとんどつくったことがない私にいったいなんの話ができるのか、と不安に思っていたこともありとてもよくプランを練って2時間のレクチャー&ワークに挑んだ。緊張して汗かいたがやりきった。終わってみればおもしろかったし、さらにおもしろくなる可能性を感じた。参加者の目つきや、姿勢に過敏になってしまう自分を見つけた。終わってから喫煙所で萩原さんと、自身で演劇カンパニーを主催している西田さんというさんという人と話せたことで、フィードバックをもらえて心やすらかになった。
とはいえ昂った気持ちはなかなかおさまらず、ひとり栄地下街のタバコが吸えるミニ居酒屋で「瓶ビールください」と頼んだら大瓶がでてきて、きゅうり漬けとマグロ刺しと一緒にたのしくやっていたのだが飲み終わることにはかなり酔っ払っていた。栄のドンキの裏にあるビジネスホテルにチェックイン。そのまま21時前まで寝る。
晩御飯を食べようと夜の繁華街にひとり繰り出す。キャッチのお兄さんが多すぎて、歩いているだけで疲れる。
「お探しですか?」
「お探しですか?」
「お探しですか?」
「おにいさん、なにかお探しですか? 道案内がんばります!」
「ガールズバーいかがっすか? チュンチュンッ!(両手の指をすぼめて空を突くような動作とともに)」
どうにか餃子の王将に飛びこみ、「さみい」「はあ、さみいな」「さむっ」と一人賑やかに呟いている男性の隣でちゃんぽんを食べ、温まり、ホテルに帰って寝る。
1月18日
朝10時半からあいち芸術祭ラーニングチームとのミーティング。相変わらず長丁場だが(終わったのは14時過ぎ。お昼は弁当持参でその場で)チームのメンバーがみんな好きなので苦しくない。安心して発言できるし、話を聞くのもおもしろい。
そこからみんなで車で瀬戸の梅村商店さんに移動し、17時からのラーニングチーム主催イベントの準備。私はイベント中に使う小物として一輪のバラを買ってきた。久しぶりに花を買った。
イベントはとても、とっても面白かった。芸術祭の長いステートメントを、70名の参加者全員で一行ずつ声に出して読んでいくという、黑田菜月発案のアイデアが素晴らしかった。ひとりひとり発語の仕方も声の大きさも高さもスピードも違うので、まったく飽きない。あっという間の30分間。人の声というものの「モノっぽさ」、声というものはこの世界に現実に存在している物体なのだ、ということを改めて実感した。印刷されたテキストを黙読するだけではやはりテキストは概念の領域を出ない。
石倉さんによるレクチャーも素晴らしかった。久しぶりに刺激的な講義を受け「勉強したいことがいっぱいでてきちゃった〜」という気分に。特にアドニスの詩から「花咲爺さん」への接続は、思わず膝を打ってしまった。
私は、ずっと気になっていた、2回目のトランプ大統領誕生のことをイベントの中で話せてよかった。つまり、たとえば気候変動はトランプ支持者からするとでっちあげで、アメリカでは半分以上を占めている意見だ。このイベントに集まっている人は、そこでいうと半分以下の人たちにすぎないかもしれない。こういったコンセプトを掲げること自体が、なにか自分達を壁の中に閉じ込めてしまっているのではないか。わたしたちはどうすればより広い意味での「われわれ」になれるのか。あとから何人かに、言ってくれてありがとうと言われた。勇気を出してよかった。しかし問題はなにも解決していない。昨日に引き続き気が昂ってしまって、講義が終わってからもしばらく呆然としてしまい、その後野田さんが企画して店を予約して人を集めてくれた打ち上げの席で、平静を取り戻すまで時間がかかった。石倉さんとお話できてよかった。「石倉さんの外臓という概念が大好きです」と伝えられてよかった。
1月19日
9時から辻さんと陶磁美術館へ。芸術祭で担当している作家の作品制作のため、新たな版築のテストピースを作りに。その後打ち合わせ。終わったのは13時過ぎ。「ビリヤニ」でグーグルマップを検索し、車で20分のところにあるインド料理まで行ってビリヤニを昼ごはんに。美味しかった。これまで食べたどのビリヤニとも違う玉ねぎとにんにくの出汁のきいた、濃い味。
そのあとON READINGへ。ずっと、もう何年も行きたかった本屋。ギャラリーもある。ようやく行けた。そこで、生まれて初めて編み物の作品を作る。展示してた宮田明日鹿さんの企画で、500円で「スイカ」が編めるキットが買えて、売り上げはパレスチナ支援に寄付される、という素晴らしいシステム。その場にいた、編み物上手の先生(お店のお客さんらしい)が「初めてでこんなに綺麗なのはすごい!」「どうして通す穴がわかるんですか? すごい!」など、どんどん褒めてくれて、その「先生力」に辻さんと二人で感動した。おかげで私のスイカが完成。別の先生が安全ピンをひとつ譲ってくれて、その場でリュックにぶら下げた。宮田さんとも約五年ぶりに再会。会えてよかった。最近はコンポストにはまってるらしい。ON READINGでは大崎清夏さんの日記本と、丈夫でとても使いやすそうなオリジナルのトートバッグが売っていたので思わず買ってしまった。長野に帰る。