0908

20140909-095431.jpg

二度寝した。6時半くらいに一回起きて、近くのバス待合所にある水道で歯を磨いて戻ってきたら、 昨日の彼女がおにぎりとなすの漬け物とお茶が入った茶色い紙袋を持って現れた。今夜仕事が終わっ たら、車で温泉に連れていってもらう約束をした。そのあと絵を描いてたら眠くなったので二度寝した。
お昼過ぎに津南を出る。今日も警察官に職務質問をされた。新潟に入って2度目。
「数日前に同じ新潟県警の人からされたばっかりなんですけど、そういう情報の共有とかはされてな いんですか。」
と聞いてみたら
「仮に村上さんが消息を絶った時に、最後にどこで声をかけたかっていう情報としても役立つんです よ。」
と言う。そういうものか。それで
「歩道もない道もあります。くれぐれも気をつけて」
と言ってくれた。

7キロくらい歩いたところで長野県栄村に入る。足の裏の変なところにマメができて痛い。やっぱ靴 はそれなりに良い物を買わないとだめだって何度も思ったけど今日もずっと思っていた。道の駅があ ったのでもう今夜はここにしようと思った。この時お昼の3時くらい。道の駅の売店のおばちゃんに 事情を説明したら
「これ信州名物のお焼き。4つあるから4食分くらいにはなるかな」
と言って、あんこのお焼きと野沢菜のお焼きを2個ずつくれた。
暗くなるまで絵を描いて、暗くなったら音楽を聴きながら散歩した。山と山の間に信濃川が走ってい て、その川沿いに国道が通ってて、家が何軒かあるくらいでほとんどひと気のないところ。西日を受 けた山の木々の緑色は美しすぎて現実味がないくらいだった。何本も並んだ杉の木は細胞が分裂して いる最中のようにみえる。そしてとっても奇麗な月が出ていた。胸がざわざわした。 例の彼女から電話がかかってきて
「いまどこにいるの?」
と聞かれた
「栄村の道の駅にいます」
って言ったら
「近っ!」
って言われた。彼女は昨日の僕の日記を読んでいたらしく
「1つ物申していいですか。0型ですから!典型的なO型です」
と怒られた。
松之山温泉に連れて行ってもらった。その道中、長野県北部地震について話してくれた。僕はその地 震を知らなかった。2011年3月11日の夜、彼女は津南の家で東日本大震災の被害の様子をテレ ビで見ながら
「ボランティア行ったほうがいいかな」
なんて父親と話していたらしい。その翌朝、明け方近く。突然大きな揺れがあった。直下型で、部屋 の家具がみんな飛び上がって天井にぶつかって床に落ちてきたらしい(DJの機材もそのとき壊れた とか)。「日本終わった」と思ったという。あの東北の震災の映像を見て数時間に自分のいる新潟県 でそんな揺れがあったら、そりゃ日本オワタって思うだろう。長野県栄村から新潟県津南町にかけて 震度7クラスの揺れがあって、津南から松之山温泉に向かう途中に見える山がひとつ崩れたという。
「こっちも大変だったけど、東北の方なんかそれどころじゃなかったから」
と言ってた。調べてみたらこの地震で栄村で3人の人が亡くなってる。あの震災の裏でそんなことがあったのか。

松之山では中秋の名月を眺めながら露天風呂につかるという贅沢をかまして、温泉のあと僕の家のある道の駅まで送ってもらって別れる時に
「モノじゃなくて人で、こんなツボにはまりまくった人は初めてだわ。また会いましょう。」
って言ってくれた。僕が鼻をかんだら
「泣くなよ」
と言われた。
「いやいや全然。まったく泣きませんよ。どうせまた会うんで悲しくないです」
って言った。彼女は
「ふざけんなよ」
って笑ってた。ずっと動いてると、今生の別れなんて存在しないんじゃないかって気がしてくる。実 際全然さみしくなかった。動いてる限り、無理に再会しようとしなくても会う人にはまた会うのだ。

20140909-095614.jpg

Posted by satoshimurakami