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500m美術館の展示のために札幌に1週間ほど滞在した。そこで阿児つばさというアーティストと知り合った。彼女は花路里という作品のドキュメントを展示していた。花路里というのは、「柳川」という料理屋をやっている彼女の祖母に、その店の名前の由来を聞いたところ、その店の説明をしてくれたあとに「花路里っていうのもお洒落で良いよ」と言われたことをきっかけにつくったものらしい。なぜおばあちゃんが花路里と言ったのか、孫が何か店の名前を考えていると思ったのかわからないけど、とにかく「花路里」というものをつくってみようと思ったらしい。花と路と里にわけて考えたり、友達と花路里ってなんだろうと考えて色々作っていたが、ある日インターネットで花路里を検索したところ、あっという間に祖母がやっている店の近くに花路里という名前のスナックを見つけてしまった。祖母はこのことを言っていたのかと合点がいった。でも花路里という名前の響きから既に色々つくっていた阿児さんは、その「花路里」を現実にあるスナックの「花路里」に持って行き、そのオーナーの人から話を聞いたりした。その様子をドローイングや写真で展示をしている。阿児さんは「花路里」と印刷されたマッチを作っていて、それを僕にくれた。そのマッチがとても素敵な作品だった。内省的だけど、政治的でもある。言葉からイメージを膨らませて妄想的に色々つくったが、現実の花路里を見つけてしまった。こういうことは日常のなかでもよくある。断片的な情報だけで色々想像を膨らませてしまい、それを現実と混同してしまったり、現実を見なくなってしまったりする。ずっと昔にきいた音楽があって、それが頭の中でずっと残っていて、ある日偶然その曲をYouTubeで見つけてしまったりして、頭の中の曲と違っていてがっかりしたりする。こういう時に感じる切ない感情を花路里と呼びたい。妄想だけでアウトプットせずに、最後には現実をちゃんと見つめる。でも現実を見るだけで終わらないように。