08131943
先日汽水社でオーウェル紀行イギリス編という本を買った。オーウェルは不思議な人だ。放浪の極貧生活を自らに課し、都会で「こんな仕事明日にはやめてやる」「いつか自分の店をもってやるんだ」が口癖の、低賃金で働く市井の人々とともに過ごし「ロンドンでは座るにも金がかかる」という発見をしたりする「パリ・ロンドン放浪記」や、スペイン内戦の戦場でも(頭のあまり良くない)若者たちとともに過ごした「カタロニア賛歌」を書き、社会の下の方で毎日明日が見えない状態で一生懸命生活している人々を観察したのち、「動物農場」という社会構造についての寓話を書き、権力は常に腐敗することを糾弾して、最後には「1984」で全体主義がすすんだ社会の全体を書こうとした。下から上に。蟻の目から鷹の目に。ちゃんと下を見たうえで上から書くというか。吉阪隆正やカバコフと近いものを感じる。オーウェルは少なくとも制作においては誠実な人だったに違いない。とても興味深い。多分何か僕にとっても大事なヒントがある。オーウェルについてはこれからもいろいろ知っていきたい。