犬王/TOHO CINEMAS 府中/6月20日

最初に犬王と友魚が出会う橋のセッションで泣きそうになり、しかしここで泣いてはまだ早すぎると思って堪えたのだけど、結果的にあそこがピークだった。序盤からそのセッションのあたりまで、怒涛のアニメーション展開に目が喜びっぱなしで、ほんとうに観にきてよかった、これはかなりの傑作なのではと、今後の展開にわくわくがとまらなかったのだけど、友魚がバンドを結成したあたりから音楽映画のような雰囲気になってきて、アニメーションの力が減じた感がある。音楽に合わせてアニメーションを当て込んでいるような時間が、すこし冗長で退屈に感じられた。けれど、それを差し置いても最高だった。虐げられたものたちが、死者の媒介となって言葉を放ち、人々を熱狂させること。表現とは声を聞くことであるという、大事な原則に立ち返らせてもらったような気持ち。犬王という実在の人物の話というのもあり、過去にこんなことが本当にあったかもしれないと思うと、ぐっときた。原作を読みたいと思った。古川さんはこれをどう書いたのか。

Posted by satoshimurakami