7月27日

「18時50分に岩波ホールのチケット売り場に集合ね、もし会えなかったら、それぞれ適当に観よう」という連絡を友人と取り合った携帯を家に置いたまま出かけて、まずは新宿のルミネでビーチサンダルを買い、トイレ前のソファで新しいサンダルに履き替え、古いのは店でもらった袋に入れて、それから外に出て「珈琲タイムズ」に入りミックスサンドとアイスカフェオレを口にしながら『水中の哲学者たち』を読んで、冷房の寒さに耐えられなくなり店を出たら、さっきまではあんなに辛かった暑さが心地よく感じられ、「天国だ」と思ったのだった。ふつうは暑い屋外から冷房の効いた屋内に入ったときに出てくるセリフだと思うのだけど、逆転することもあるようだ。
『水中の哲学者たち』のなかにお笑いの話が出てきたこともあって、ビーチサンダルを買ったときにたまたま目についた「ルミネザヨシモト」というホールに行って生まれて初めての漫才ライブでもみようかと思ったのだが、もう夜まで公演はなくて、しかし気持ちは漫才を見るセッティングになってしまっていたので、手持ちのiPodを新宿フリーWi-Fiに繋いで、マップで「お笑い」と検索したら渋谷にも「ヨシモト∞ホール」という場所があることを知り、渋谷へ向かった。
1800円を支払って、16時からの公演をみた。すり鉢状になっている、天井も高くてそこそこ大きなホールに、客は僕の他に9人しかいなかった。9人とも最前列に座っている。その列に新しく入る余地はもうなかったので、僕は3列目に座った。なんとなく2列目ではなく3列目に座った。
1800円で1時間のお笑いのライブ、ちょっと高いなと思ったけど行ってよかった。なかにはちょっときついものもあったけど、ぜんたいに面白かった。声出して笑っちゃうものもあったし、最前列の人たちがみんな楽しそうに過ごしていたのがよい。なにより「ものすごくでかい声で元気よく話す大人」を久しぶりに間近で見れたのがよい。それだけで笑ってしまうし元気がもらえる。
司会のコンビが客席に向かって、いままでここに20回以上来たことある方いますか?という質問をなげかけ、一人が手を挙げていた。大学生の頃、高円寺とか下北沢のライブハウスに通って1500円くらいで3,4組のインディーズバンドが見られるライブを見ていたことを思いだした。そのなかからメジャーデビューしたり、フジロック出演を果たしたりするバンドが出るたびに、厚かましいことだが子供が巣立っていくような気持ちになり、嬉しくて、ライブハウスに通う人たちはこれもひとつの楽しみなんだろうなと思っていたのだけど、こういったお笑いライブに通う人たちも似た心持ちのところはあるかもな。
ライブのあとは神保町に移動して中華料理屋で餃子定食を食べ、岩波ホールに行って無事友人と合流し、ヴェルナーヘルツォークがブルースチャトウィンにまつわる場所や人を訪ねるドキュメンタリー『歩いて見た世界』を鑑賞する。岩波ホール、初めて行ったのだけど「鑑賞」という言葉がぴったりだ。上品で、ちょっとすました感じ。
観賞後、友人と神保町の居酒屋に入り23時過ぎまで酒を飲み、帰る。近況報告や、最近の政治に関することなど。
・『それで君の声はどこにあるんだ?』という本がよい
・ロシアで開発されたエントロピー測定器がすごいらしい
・ウーウェンさんという人の料理教室に通っているのだが、よい
・『わたしの解放日記』『ポーズ』というドラマがよい
というおすすめをもらった

Posted by satoshimurakami