10月15日

昔やっていたあるゲームをなにがなんでもやりたくなってしまい、MacBookProでどうにかWindows7を駆動できないかと、集中して頑張っていたら、「すいません」と門から男の声がした。
「いま近くで工事してたんですけどお、屋根の瓦が外れてるのが見えたんでえ、伝えに来たんですけどお」
男の目はぎょろぎょろしていて、「ちょっとやべえ話し方の人きたなあ」と思ったが、親切でいいなとも思ったので話を聞くことにした。しかし「背中を向けたら刺される」という恐怖心があり、背中を向けられなかった。人に対してこんなことを感じたのは初めてだった。
「瓦が落ちたら落ちたらあぶないんでえ、明日もしいらっしゃれば登って直せるんですけどお」と男は言う。
「どこですか?」と僕が聞いたら、
「屋根の高いところ、棟っていうんですけどお、そこがはずれてるんでえ、落ちたら危ないんでえ」と、やはりちょっとやばい話し方である。
「どこですか?」
ともう一度聞いてもまた、
「上のところ…、落ちたらあぶないんでえ」
と、繰り返す。人間の感情を持たない、ロボットと話しているような気持ちに。
なんとなく、この人とは関わらない方がいいという直感が働いたのか、僕は「明日はいます。だけど屋根はいつも登ったりしてるんで、見てみます。ありがとうございます」と、気がつけば断っていた。
「じゃあ見てみてください。落ちたらあぶないんでえ、ソレを伝えるくらいがこちらのできることなんでえ」と言って、男は帰っていった。
「…でえ」のところが、上がり調子で、とにかく話し方がやばい。
あとでアトリエのメンバーにそのことを話したら
「おれの知り合いが同じような手法で、家に来られたことがあって、たぶん詐欺だね」
と言われた。ネットで調べてみたら、似たような事例の注意喚起ががたくさん出てきた。一般的には確かめにくい屋根の上の瓦が外れていると言い、屋根に登り、法外な値段を請求したり、「これは瓦を全部交換した方がいい」などと言って契約させようとしてくる手法らしい。住宅が商品化して、自分の手の届かないものになってしまった時代の象徴みたいな話だ。
こえーな。人間こえー。
どおりで男から受ける印象が、話されていることの「親切さ」からは遠かったわけだ。

Posted by satoshimurakami