2013年10月10日20時58分

2013年10月10日20時58分

今日も日本語を話すグループと2,3回すれ違った。親子っぽい女性2人組とか、5人くらいの家族連れとか。

さて今日はヴェニスビエンナーレのジャルディーニという会場をまわってきた。各国のパヴィリオンがたくさんあるのはこっちの会場だけど、こっちにも企画展があった。そこから観て回った。この「Encyclopedic Palace」という企画展は、昨日「いろんな表現を集めた」と書いたけど、正確には大竹伸朗の「Scrapbook」とか(実際に展示してあった)を想像すればわかるのだけど、博物学的な「各作家がある一定のフォーマットを設定して、そのフォーマット内でいろんな表現を量産していく」ような、収集癖的な作品をたくさんあつめたような展覧会、という感じがする。大竹さんのように町に落ちているものを集めただけではなくて、同じ大きさの紙にいくつものドローイングを描きつづけたものを展示したやつとか、おなじ大きさのスクリーンにたくさんの映像(自分のスタジオで撮った映像とか、つくった映像とかいろいろ)が流れているのを並べた展示とか、粘土とか紙とか箱とか本とか、いろいろあったけど、作家が一点物で勝負しているのはすくなくて、ほとんどがシリーズ化された作品だった。

この展示はとても面白かった。ひとつひとつ読み解いていくと一週間じゃとても見切れない。帰国したら、この作家たちがどうしてこうなったのか、読み解いていかなくちゃ。明日ショートカタログを買おうと思う。今日買っちゃえばよかった。。

各国のパヴィリオンの方は、イスラエル館が優勝だった。どこか遠くの草原を遠くから撮った映像(たぶん、穴を掘り始めた最初の地点を表している。ベネチアではないと思う。)と、穴を掘って進む映像と、進んだ末にイスラエル館内部にたどり着く映像と、穴から出て、なぜかそれぞれの顔の粘土の彫刻をみんなでつくって、そこにマイクをぶっ刺して、マイクに自分の「あ~」という声を吹き込む映像と、それをDJっぽい人がミックスしてる映像が展示してあって、粘土の彫刻も展示してあって、そしてすべての映像が8分くらいにまとまっていて、同時に終わって、同時に始まる。すごい展示だった。声を吹き込む人たちの表情が、なぜかみんな悲壮を感じさせた。その表情がすごくリアルだった。そして、穴をほって地下からヴェニスに乗り込み、そこで自分の顔の彫刻をつくって声を吹き込み、その声を館内に響かせる、という一連の流れが、とても明快に伝わってきた。

ほかには、フランスのアンリサラとか、イギリスのジェレミーデラーとかも良かった。ジェレミーデラーの「Ooh-oo-hoo ah-ha ha yeah」という作品(作品なのか?)なんか、とてもイギリスらしいなと思った。イギリス独特の、一周回りすぎちゃってる感じだ。

ルーマニアの、4人くらいの人がずっとパフォーマンスしている展示も面白かった。英語か聞き取れないので断定できないけど、パフォーマーが、現代美術(あるいはヴェニスビエンナーレ?)の歴史を順を追って説明しながら身体表現を行うような展示。パフォーマー以外には展示室には何もない。

とにかくみんな国の威信をかけてお金と労力をつぎ込んでいるような展示だった。でもオーストラリアの展示だけは、展示物がはがれてたり、室内に吹き込んだ落ち葉とかがそのままになってたりして、なんか汚かった。。

日本館の田中さんの展示もよかった。建築展のときの室内をある程度残したまま、自分の展示を挿入していて、それがまずリアルだった。田中さんは「5人の詩人で1つの詩をつくる」とか「5人のピアニストで同時に1つのピアノを弾く」とか「9人の理容師で同時に1人を散髪する」など「ひとつの出来事を共有する」みたいなことをテーマに、いくつかアイデアを出していて、その映像や、写真を展示していた。それらの映像から伝わるものは、僕にはとてもリアリティがあったし、田中さんも、美術のお面を被りながらも、日本を背負って表現していたような気がした。これが特別賞をとったというから、なんか安心というか、これもちゃんと評価されるのか、と思った。

昨日と今日で主要の2会場を回って、僕はまだ力不足だけど、決して届かない場所ではなかった気がする。おめでたい頭である。ブックショップに、僕の名前が冠された本が並んでいるのはなぜか想像できなかったけど。

とにかく展示をたくさん見ると自分も作りたくなる。がんばろう。

 

それと、今日ようやくホテルのそばのBarでマルゲリータとビールをのむことができた。だから今日はお腹いっぱいの状態で眠ることができる。幸せ。一昨日はそばの売店でビールを買うので精一杯で、昨日はその売店でビールに加えてポテチみたいなお菓子を買うので精一杯だったのだ。今日ようやくご飯を食べることができた。こっちの人は、ピザを一人で食べるのだ。「みんなで分け合うに限るもの」という考え方がない。味もだけど、考え方もとにかく大味の人たちだ。

あと各駅停車の電車の席も、日本みたいに横に並ぶ感じじゃなくて、4人1組のボックス席だ。さすが広場がある国だ。

 

しかし言葉が通じなさすぎて、悲しいというか、悔しいというかもう笑えてくるのだなあ。英語はやっぱり、普通に使いこなせるようにならないとだめだ。これだけで全然違う気がする。

到着三日目にして、ようやく「間違えてもいいし答えが聞き取れなくてもいいから話しかけてみる」ということができるようになってきた。サンマルコ広場で缶ビールも買った。これは高かった。4ユーロもした。でも僕は高いと感じなかった、というか、4ユーロくらいの価値は優にあった。オーソレミーオが近くのレストランの野外ステージで演奏されていて、日の傾いた空と、広場を歩く人々を眺めながらのむ缶ビール(どこ産かはよくわからないけど)は最高でした。

Posted by satoshimurakami