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滞在した場所を出発するとき「もうお帰りですか?」って聞かれることが多い。「帰る」ってのは「行く」が無いと成立しないんだな。僕は拠点と一緒に動いてるから、行くも帰るもないんだ。「どこまで行くんですか?」って聞かれた時に答えに困るのはそのせいだな。動きつづけるには周ればいいって前にも書いた。何周も何周もまわりつづける。そうすると遠くへ行ける。それが徒歩で、いくらスピードが遅くて路上では何万台もの車に抜かれても、周り続けているものを出し抜くことはできない。幼いころ、茶の間のコタツのまわりをぐるぐると走るのが好きだった。そうすると、自分はずっと同じ部屋にいるのにどんどん景色が変わっていく気がした、上に上に昇っていくような気がした。その場を離れていけるような気がした。その延長でいま日本の本州を周ってるようなもんだ。その場が窮屈なときはぐるぐるとまわればいい。

十和田市の町中を出発して、十和田湖方面へ向かう。一気に十和田湖まではいけないから焼山というところまで行くといいよって、写真屋さんが教えてくれた。20キロくらい。今日は気温は低いけど湿度が高い。空気が霧っぽい。途中に「奥瀬歩道橋」って書かれた歩道橋があった。その歩道橋のまわりはほとんど歩行者がいなくて、車もそんなたくさん走ってる訳じゃないから普通に車道も横断できる。でもその歩道橋はとても堂々と建っていて感激したほどで、がんばれよって思った。

歩いてたらなんと種差海岸の方で会った河北新報の新聞記者さんに偶然会った。釣りにきていたらしい。奥入瀬川のこの辺りは魚影が濃くて、イワナとヤマメが15匹くらいフライで釣れたらしい。新聞掲載は20日になるとのこと。

 

夕方5時過ぎに焼山というところにつく。このあたりは「奥入瀬渓流」って呼ばれていて温泉観光地なんだけど、平日ってのもあるのかひと気が全然ない。ホテルとか民宿がつぶれて廃墟になってるのもたくさんあって、道が植物で塞がれているところに出くわした時はぞっとした。昔はとても賑わったんだろうな。観光案内所を見つけたのでそこで事情を説明したら、すぐ近くにテントを張ってもいいスペースがあるからそこで良ければ、とのこと。今日の敷地が決まった。しかも24時間無料の足湯付き。

お風呂に入ろうと思い、日帰り入浴できるというホテルに行ってみたら、そこもやってるんだかやってないんだかわからない感じのホテルで、エントランス部分は電気がついてない。でもパンフレットには「日帰り入浴19時まで可」って書いてあるからちょっと勇気を出してドアを開けてみたら、受付のところに幼い女の子が一人で座っていた。ぞっとした。暗くてなんとなく寂れつつあるけど勇気を出して入ったホテルの受付に5,6歳くらいの女の子が一人で座っていたらぞっとするよ。

「あ、なんか違う世界の方に入っちゃったかな」

と思った。そしたら女の子が「誰か来たー」って叫びながら奥の方に消えていった。ちゃんと人間らしい。よかった。そしたら奥の方から「え?」っていう女の人の声が聞こえた。それは心から意表をつかれたような「え?」だった。そんなびっくりしなくてもいいじゃないか。奥から女の人が出てきたから

「日帰り入浴できますか?」

って聞いた。そしたら女性は3秒くらい間をおいて

「あ、どうぞ」

と答えた。よっぽど珍しい客らしい。でも温泉は素晴らしかった。露天風呂もあって川の音と鳥の声が聞こえる。ていうか4日連続で違う温泉に入っているな。お風呂からあがって、観光案内所の人からもらったとても大きなサラミを食べながら駐車場で一人で宴会した。どんどん暗くなっていく。街灯もほとんどないので、完全に日が落ちたら真っ暗になりそう。今日は曇っているけど晴れた日は星がすっごく奇麗なんだろうな。

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Posted by satoshimurakami