0802

20140803-215934.jpg

12時ごろ井川町を出発。ここにもまた来たい。
今日も暑い。路上で子供を二人連れたお父さんが話しかけてきた。彼は新聞を読んでいたらしく、ペットボトルの麦茶を差し入れてくれた。
「子供が、なんで家持って歩いてるのか聞きたがってるので、ちょっと教えてもらえませんか」
と言われた。返答に困ってしまった。
「普通に生活するのに飽きちゃって、もううんざりしちゃったんだよ」
とか言えばよかったのかな。それも理由の1つではある。そういえば水戸で出会った男の子が僕の家を見て
「僕ものりたい!」
って言ってた。「のりたい」って面白い言い方するなあ。移動するもの=乗り物っていう感じがするもんな。

歩いていると一歩踏み出す度に、両肩にリュックと家の重さがのしかかる。その重さは今の生活の全ての重さで、それを感じながら歩くということは、何か僕の存在を自分で肯定 しながら進んでいるような気がした。
歩いてたら、路上でキャップ帽を被った男の人から
「新聞みたよ。いま祭りやってんだ。寄ってけよ」
と話しかけられた。着いていくと小さな公園にいくつかの出店があって提灯が飾られている。町会単位でやるような小さなお祭り。今考えると、家を無神経に公園に入れたのがち ょっとまずかったのかもしれない。家を置いて、キャップ帽の人がおにぎりとフランクフルトを持ってきてくれるのを待っていたら
一人の男性が
「おたくはなんですか?」
と、強めな態度で聞いてきた。たぶん不審に見られている。僕も呼ばれてきた身なので、意表をつかれた。そうかこんなパターンもあるのか。
「あの人に呼ばれてきたんですよ」
って説明したら、彼はキャップ帽の人に
「お知り合いなんですか?」
と聞いた。キャップ帽の人は
「いや家担いで全国歩いてるって新聞に載ってたじゃないですか。~~」
と説明している。聞いた人は
「いや、外の人はいれないってルールがあるから、、」
というようなことを言っている。そういうルールがあるのか。これは招かれざる客ってやつだなあと思ってやりとりを見ていたら別のおばちゃんが会話に入ってきて
「いいじゃない、いいじゃない。来てくれたんだからそんなこと。いいのいいの」
と言っている。そのおばちゃんが場の空気を支配した。とりあえず僕は家から出て挨拶をしてまわった。 キャップ帽の人が町会長を連れてきて、僕のことを説明してくれた。町会長は丁寧に自己紹介をしてくれた。僕もお辞儀をして名乗った。町会長はテントに招待してくれて、パイ プイスをすすめてくれた。良い会長で良かったなと思って、僕はとにかく一生懸命自分の活動を説明した。町会長は「そうですか」と聞いてくれる。そしてババヘラアイスのこと を説明してくれたりする。
そしたら近くにいた女性が「ちょっとちょっと」って感じで寄ってきた。僕と会長が話し込んでいるのが気に入らないらしい。
「いま会議の時間でもないんですから、あんまりそうやってないで、こっちのことをやってもらわないと。時間もないんですから。(僕の家を指して)ああいうものをここにおく のだって、あっちゃいけない事なんですよ。やっぱり町にきたんだったら町のルールは守ってもらわないと。とにかくねえ」
という感じで、なんかしらないけどめっちゃピリピリしてる。僕も連れてこられた身なんだけどなあ。でもここはあんまり長居したらヤバそうな雰囲気だ。町会長さんは「うんうん」と女性の話を聞いて、すこし間をおいてから
「少し休んだら、出発していただけますか?」
と言った。僕はキャップ帽の人に
「あんまり長居するとまずそうですね」
と言って出て行く準備をする。彼は
「そうだな」
と答えた。彼もなんとなく不満そうな感じ。僕はすぐ出発した。怒りに近い感情は多少あったけど、なにより呆然としてしまった。誰かが「日本人は身内に対しては優しいけど外 からきた人間にはやたら厳しい」みたいなこと言ってたけど、その教科書的な出来事が目の前でおこった。こういう人って、本当にいるんだなあと。
なんでこういうことになるんだろうなあ。あの場には3種類の人がいた。僕を祭に受け入れようとする人と、少し離れて見ている人と、僕を祭からはじきだそうとする人。そんで 「受け入れる力」よりも「はじき出そうとする力」の方が強くはたらくように思う。今までもこういう扱いはあったし、もう落ち込んだりはしないけど、外から来た人に対してア タリが強いのはもう民族性なんだろうなと思ってしまう。そんなんで楽しいのかなー。ご苦労様ですって感じ。
そういえば昨日僕を泊めてくれた人も、隣の家の人から「なんなの、なんなの」って感じで説明を求められていた。一生懸命説明してくれたけど、そのあと 「あなたのことを『親戚です』って紹介した方がよかったのかな」
って言ってた。そうだな。たぶん親戚だって言われたらすぐに納得しただろうな。

7時ごろ「秋田温泉」という温泉郷に着く。「まずはお風呂に入りたい」その一心でここまできた。日帰りだけの入浴施設があれば一番良かったんだけど、なかったのでホテルで 敷地の交渉をしてみた。オーナーが不在だったけど、とっても丁寧に対応してくれて、電話で連絡を取ってくれた。 結果はだめだった。「セキュリティのこともありますし」
とのこと。まあ予想はしていた。そもそも宿泊施設だしな。 でも7時を過ぎていて外はもう暗くて、またイチから敷地探しをはじめる気力もないので、普通に部屋を借りて泊まろうと思って
「今日お部屋ってあいてますか?」
と聞いてみたら
「明日からお祭りがはじまるので、今日は全て埋まってしまっているんですよ。申し訳ございません」
と言われる。そうか、そうか。いよいよやばいかもな。お礼を言って出ていって、どうしようかうろうろ考える。「家だけ置いていけばいいんじゃね?」と思い、もう一回ホテル にいって聞いてみると
「何かあっても責任はとれませんが、それでもよろしければ」
とのこと。よかった。このとき、ふっと心の荷がおりたのを感じた。泊まるのはダメだけど、荷物として駐車場に置いて行くのはオッケーてパターンは初めてだ。でも、家さえ置 かせてもらえれば、体だけ寝る場所はなんとでもなる。今日はまあしょうがない。秋田駅まで行けば満喫とかあるだろう。 ただの荷物になり下がった僕の家は、駐車場に置かれてなんとなく寂しそうに見えた。
すまないなあ。

Posted by satoshimurakami