村上の家(宮城県東松島市小松)7/29〜30
敷地は東松島市の矢本駅近くにある一軒家の軒下。
松島から東松島に向けて歩いているときに、ラジオの中継車と鉢合わせて数分間喋った。そのときに「東松島市で土地を貸してくれる人がいたら助かります」ということを言った。そのあとすぐに、路上で車に乗ったおばちゃんから
「いまラジオ聞いてたよ!私これから東松島に帰るから、うちの敷地使っていいよ!」
と言われた。中継車と別れて1分もしないうちにおばちゃんが現れたので笑ってしまった。そういう経緯で、そのおばちゃんの家の軒下に居を構えている。
ラジオには他にも「うちの庭使っていいですよ」という電話がかかってきたらしい。またラジオで僕は
「車が通り過ぎざまに、2回連続でクラクションを鳴らしてくることがあるけど、あれは応援するという意味なんでしょうか」
というようなことを話したせいか、その後2回連続でクラクションを鳴らされることがものすごく増えた。みんなラジオ聞いてるんだな。
そのラジオのフェイスブックに僕のことが書かれていたので、それに対するコメントを見てたら、
「車からしたら邪魔なので、正直迷惑です。」
みたいな感想があった。そちらがそう言うなら、僕からしたら車の方が邪魔で危なくて迷惑。僕に対して「迷惑だからやめろ」と言うんじゃなくて、車道しかない道に対して文句をつけるべき。
東松島市は去年も来た。ここから海までは4キロ以上あると思うけど、2011年の津波はここまで到達している。
僕の家の周辺には、良い感じの酒屋や、一軒家をあとから店舗に改装してオープンしたような中華料理屋があって、コンビニがあまりない。町の酒屋で発泡酒を買うのは、気分が良い。土地の生活空間に参加できたような気がして嬉しい。
敷地は、おばちゃんの嬉しいはからいで屋根があるところを貸してくれた。おばちゃんがとてもさばさばとしていて過ごしやすい。さらに家の中までコンセントを伸ばして、扇風機や懐中電灯も貸してくれた。史上最高に快適な環境。
家と倉庫のあいだにある狭い軒下空間で、草などが生えていないのでほんのりと土の匂いがする。この匂いは嫌いじゃない。
トイレや洗面台、デスクスペースなどはすべて徒歩10分のところにあるイオンタウンの中を使った。店舗は大体夜10時まで。公衆トイレはもう少し遅くまでやってるみたい。
ちなみに夜になると、イオンタウン上空が妖しく赤く光るので、遠くから見てもその位置がわかる。
歯を磨くためだけにイオンまで行くと、歯を磨くことの意味を考え直したりしてしまう。寝室から歯を磨く洗面台まで徒歩10分の距離があるという環境は面白い。
お風呂場は徒歩15分くらいのところにある健康増進センター「ゆぷと」。天然温泉がある。ただ800円かかるし、デスクスペースになりそうな休憩場所もない。
松島で紛失した靴下と、破けたズボンを新しく買うためにヨークベニマルに行った。
7月30日の夕方、海の方まで歩いてみた。すでに波は引いて、がれきなどはもう落ちてないけど、それでも地面からは多すぎるくらいの情報が伝わってくる。雑草が一面に生えている。あるラインを踏み越えたあたりで、突然重力が強くなった感覚がした。地面が近くに感じる。雑草は地面に這いつくばってて、空にいるカラスやトンビがとても羨ましく感じた。
空にはほとんど満月に近いものが浮かんでいて、地上の状態とは無関係にものすごく綺麗だった。そのうち重力の問題もやらなくちゃいけない。
村上の家(宮城県宮城郡松島町)7/28
土地
床下
間取り
敷地は宮城県宮城郡松島町にある一軒家の駐車場。ここも味噌醤油屋さんを紹介してくれた人が紹介してくれた。
床下は一部砂利だけど寝るのには全然気にならない。
トイレは道路を挟んで海側の公園にある。この道路が問題。
松島は観光地なので、平日でもけっこう多くの人で賑わっている。いまは時期的にも夏休みで家族連れが多い。
この町は、国道45号線によって「松島湾側」と「お店が並ぶ通り側」が分断されている。松島湾は素晴らしい眺めだし、店舗が並ぶ通りも良い雰囲気なんだけど、この国道45号線の車の通りがかなり激しくて、大型トラックとかダンプカーとかもばんばん通るので、穏やかではない。渡るのが面倒な気持ちになる。この道路さえなければ、公衆トイレもすぐ近くにあるし、海も近くにあって気持ちが良い間取りだったと思う。
お風呂場は歩いて20分くらいのところにある「天然温泉芭蕉の湯 いやしの館」。10時から20時までやっていて、大人500円。
トイレからほど近いところに藤棚らしきものが建てられていたので、物干し竿として使ったが、干して数時間後に取りに行ったら、靴下が二足無くなっていた。ゴミだと思われたらしい。靴下を買わなくてはいけない。
また、観光案内所が休憩所を兼ねていて空調が効いているし椅子が並んでいるのでデスクスペースとして使った。ただし机はない。ので自分の足を机にした。
村上の家(宮城県塩釜市宮町)
土地
床下
間取り
敷地は宮城県塩釜市にある創業170年の味噌・醤油醸造店の駐車場の片隅。人づてに紹介してもらった。
床下がアスファルトで、夜になっても熱を持っているのですこし寝苦しい暑さ。
トイレや洗面所は近くに公衆トイレもコンビニもあるので困らない。
お風呂場は太田家のお風呂を借りた。
駅の裏にイオンモールがあって、そこにあるサイゼリヤがデスクスペースに使える。
この駐車場は、夏休みの小学生のラジオ体操の会場になっていて、朝6時半には外からラジオ体操の音楽が聞こえてきた。
塩竈市の塩竈というのは藻塩をつくる釜のことで、近くには御釜神社という神社もある。
塩竈神社はたいへんに素晴らしい神社。建立年が不明らしい。何度でも行きたい。
太田屋さんの仙台みそジェラート
村上の家(宮城県仙台市青葉区)
マンションの一階にある庭付きの部屋のベランダが敷地。知り合いの紹介で置かせてもらった。部屋のオーナーから
「耳鳴りしなかった?」
と心配されるほど静かな住宅街。
べランダは庭から一段上がってるので虫がほとんど入ってこないし、見知らぬ人が近づいてくることもない。寝室から窓を隔ててすぐ隣にマンションのリビングがあり、奥に進むとお風呂場とトイレがある。
以前は東側にもベランダがあったけど、2011年の震災の際に地盤沈下が起きて取り壊された。
この家の次女(高校1年生)は、医療用のウィッグのために髪を寄付するヘアドネーションのことを調べて、自分もやることを決意し「人のものになる髪の毛だから」と言って痛まないように気をつけながら2年かけて髪の毛を伸ばし、最近バッサリと切って寄付を果たしたばかり。たいへん立派な人である。
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建築の面白いところの一つは設計者がやりたい形を押し出して、施工者や施主が「いやいや、もうすこしこの辺はこうしてくださいよ」と押し返して、その押し合いのある一点で壁が立つところであって、そこで「自分は使わないから提案する権利はない」なんて言って押し出すのをやめてしまうのは、すごくもったいないことかもしれない。例えば面白いけどすごく住みにくそうな住宅のプランがあるとして、住みにくいからこれを人に押し付けることはできない、自分が使うわけじゃないし。なんて言うんじゃなくて、それでも提案する価値が絶対にあると思うのだったら、そこで施主と押し合いをしないと未来が開かれない。そうやって考えればいい。
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小森瀬尾の展示を見た。
小森と瀬尾は震災後から岩手の津波被災地に引っ越して、ずっと制作を続けてる。それは長いあいだ同じところの取材をしつづけるようなことで、そんな風にひとところに居ながらにして、外部の人間であり続けるのは気力がいると思う。瀬尾はそれを「小森と2人だからできたと思う」と話してた。
彼女たちの事を見ていると「建てること」に対する感覚が研ぎ澄まされているのがわかる。小森と瀬尾の展示リーフレットに「そこに住むという旅」という言葉があった。住むというのは方法のことで、住宅とかのモノのことではない。そこに建てられている住宅にどれだけ立派なキッチンやお風呂やトイレがついていても、それは住む機能をもってはいない。住むという機能は住宅の側には宿らない。住むということはむしろほとんど旅に近い。とどまりながら旅をして、住みながらつくる小森瀬尾メソッド。方法をつくるための方法をつくっているというか。とにかく刺激的で、同時代的にエモーショナルでどきどきする。
村上の家(宮城県柴田郡柴田町船岡西)
名取駅から船岡駅への電車内。おそらく仙台からの仕事帰りの人や学校帰りの人がたくさん乗ってる。みんな疲れた顔をしてる。船岡駅では僕と同じようにたくさんの人が降りた。
柴田町というところは初めて来る。敷地を借りる交渉で、1軒目の神社は
「境内の見晴らしが良すぎてどこに置いても目立ってしまう。ここは住宅地だから怖がらせちゃうんじゃないか」
ということで断られた。2軒目のお寺は草むしりしてるおばあちゃんがいて
「そうやってまわってんのか。昔はそういう人たくさんいたけど最近は全然来ないな。ウチはいま責任者が出かけてるから私じゃ何とも言えない」
と言われた。3軒目のお寺「大光寺」で
「お墓に囲まれた山の中みたいな駐車場でもいいですか」
と言われてOKがでた。
片側には大光寺の大きな墓地、もう片側にはさっき断られたお寺の墓地がそびえてる。たくさんのお墓に見下ろされたようなところが敷地。夜は真っ暗。お墓のそばで寝るのは慣れてるけど、こんな数のお墓に囲まれたのは初めて。おまけに住職さんに
「動物とか出るかもしれないけど自分でなんとかしてください」
と言われたので別の怖さもある。
ただ夜は人はまず入ってこないので寝るには快適。朝になるのと近所の墓参りの人が近くを通りかかったりする。
寝室の隣にはブランコがある小さな公園がある。最初に来た時は、そこで父親と小さな子供が遊んでいた。
お墓参りの客用の水道が徒歩数十秒のところにあるので洗面台になる。便利。
トイレは徒歩5、6分のセブンイレブンのものが使える。
お風呂場や書斎になるようなスペースがこの柴田町にはない。船岡という駅まで歩いて、そこから20分くらい電車に乗って名取駅まで行って、そこから20分くらい歩くと「極楽湯」というスーパー銭湯やスーパーやファミレスが立ち並ぶエリアに行ける。極楽湯は8時から深夜3時まで。560円。
ご飯を食べたり、絵を描いたりお風呂に入ったりして、この名取のエリアで長い時間を過ごした。そして夜は遅くに柴田町に電車で帰るような形になった。柴田町には寝るために帰るベッドタウンのような感覚。
村上の家(宮城県白石市大平森合森合沖)
敷地は国道4号のバイパスからすこし入ったところにあるスーパー銭湯「やすらぎの湯ゆっぽ」の駐車場を借りた。去年と同じところ。受付にたっていたおばちゃんは僕のことを知っていたらしく、ものすごくニコニコしながら
「ご苦労様です」
と言ってくれた。
家を建てた場所は道路のそばなので時折車や歩行者が通るけど寝るにあたっては気にならない。すこし離れたところに国道4号線が走っていて、そこを走る車の音がずっと聞こえてるけどうるさくは感じない。
朝、家の外で女の子がお父さんに
「これ村上さんの家なの?ちっちゃいね。」
と言ってるのが聞こえた。
銭湯の駐車場を借りるとお風呂が近くて良い。「ゆっぽ」は温泉ではないけれど、サウナや露天風呂やいくつかのお風呂と、休憩スペースと食堂もあるスーパー銭湯。10時から22時まで。600円。
コンビニが近くにないのでトイレがすこし面倒。一番近いコンビニまでは徒歩15分くらい。近くで使えるトイレとしてはスーパー「マルホンカウボーイ」のが使えるけど9時から22時まで。
徒歩3分のところにガスト(8時から深夜3時まで)、徒歩7分のところにマクドナルド(8時から23時まで)があって、デスクスペースになる。
郊外のバイパス沿いを歩いてると、このあたりのようにチェーン店やスーパーがたくさん並んで建っているエリアがたまにある。普通は泊まり込んで滞在するようなエリアじゃないので、夜手ぶらで発泡酒などを飲み歩きながら、バイパスを走っていく大型トラックとかを眺めるのは気持ち良い。とても新鮮な気持ちになる。
村上の家(福島県伊達郡国見町藤田北)
神社の境内。裏手にすぐ林があるからか、全体的に蜘蛛がたくさんいる。寝室のそばでも蜘蛛がせっせと巣を作っていた。彼らと一緒に暮らすような心持ちじゃないと住めない。
床下は綺麗なコンクリートなので快適。夜になると、近くの灯篭のオレンジ色の光が優しく照らしてくれる。ものすごく静か。
ここの宮司さんが、寝室のすぐそば徒歩5秒のところに建ってる建物(竹駒稲荷神社)の中を使ってもいいと言ってくれたのでデスクスペースとして使わせてもらった。台所もあるので洗面所にもなる。
一番近いトイレは社殿の裏手にある神社の来客用のトイレ。徒歩1分。使うのにいくつか蜘蛛の巣を越えないといけない。
徒歩7分くらいのところにあるセブンイレブンもトイレになる。
風呂は無し。
ここ国見町は、今は商店街がシャッター街になってしまってるけど、かつてはかなり栄えたであろう面影がある。この神社のなかにも、ここを訪れた歌人たちの歌が句碑になって残っている。夕方になると遠くからヒグラシの声が聞こえる。
村上の家(福島県福島市腰浜町)
静かな住宅街で寝やすいのだけど、建設中の家の敷地なので、地面がデコボコしているのが難点。
ブルーシートの上に建てたので虫はあまり入ってこないけど蚊が多い。
現場の資材を濡らさないために建てられているタープの下なので雨が降っても安心。
そばにアパートが建っていて、朝その住人らしき人が家のすぐ前を通り過ぎて行くのがちょっと緊張する。
トイレ&洗面所は徒歩5分のコンビニ。大きなトイレで使いやすい。
お風呂は徒歩10分のところにある「つるの湯」。夫婦で経営しているらしい。400円で15時から23時。
コインランドリーも併設されている。洗濯機200円。乾燥機20分100円。
また書斎として、福島駅(徒歩30分)前のファミレス「サイゼリヤ」を使った。高校生のグループや家族連れでとても賑わっている。11時〜23時。
隣で建設中の家は、木造の二階建て(申請上)。建築家のアサノコウタさんの自宅で、大きさの違う9個のキューブが噛み合わさって空間ができてる。
その中を見学して構造や木の組み方を見てから自分の家を見てみると、似てる。この家も外断熱で、内部は構造材の木がむき出しになる。うちと同じ。