1209
昨晩はあんまり寒くなかったのでちょっと油断して寝入ってしまったけど、明け方に寒さで目が覚め た。iPhoneを見たら体感気温1度と書いてあった。寒いなと思ったけど、1度でこんなもんかとも 思った。このくらいならもう少し防寒対策すれば乗り越えられそう。冬を越すってのは大変なこと だ。冬眠する動物がたくさんいるのもすっごくわかる。最近、体調のせいか季節のせいかわからない けれど「積極的に移動したい」っていう欲求がわかない。じっとしていたい。
アニメのムーミンの第一話は冬眠からさめるところから始まる。
「4ヶ月眠ってたら、みんな忘れちゃうんだな」
っていうセリフを、確かムーミンがリトルミイに向かって言う。それはすごく羨ましい。ヒトも4ヶ月くらい冬眠して、そのあいだは経済活動も政府も全部凍結して、春からまた再開っていう風にしたら良い感じになるんじゃないか。色々と嫌な事を忘れられるんじゃないか。争いも少なくなりそう。僕の住んでいるこの街はなんだかスピードが速すぎるので、冬を冬眠ですごすムーミン谷のゆったりとした感じが羨ましい。
今日も快晴。お寺を出発する前に、敷地を借りていたお寺の人が蜜柑と柿をそれぞれ12個ずつくらい渡してくれ たんだけど、そんなに持って歩けない。なので4個ずつに減らしてもらって出発した。蜜柑は最高の食べ物なので、もらった4個は出発して30分後には食べきっていた。蜜柑は美味しいし食べやすい。 数キロ歩くと神戸市に入る。このへんはだいたいどこを歩いても北側に山が見えて、反対側には海が ある。国道沿いをずっと歩いて、交差点で右を見るたびに山があるので東西南北がわかりやすい。 「海と山のあいだの少ない平地につくられた街の中を歩いてる感じ」がいつもある。歩いてたら知らないおばちゃんが
「がんばって」 っと言って僕に千円をくれた。この千円を何に使おうかと思ってツイッターを見ていたら、昨日の僕 の「敷地を探しています」っていうツイートをリツイートで拡散して協力してくれた「いろは」って いうカフェが六甲駅の近くにあることを発見して、通り道だったので行ってみることにした。
「いろは」は客席が8席の小さなカフェで、かわいい女の人が一人で経営してる。

彼女は僕の日記を 6月くらいから読んでるらしく、何も説明せずとも事情を分かってくれていて、すぐ打ち解けた。
基本的にのんびりした印象だけど突然予想外のリアクションをしたりする。リズムがずらされる感じ。それが心地良かった。なんかのんびりした雰囲気を醸し出しつつ、カフェはしっかり経営させてる。すごい。創業3年目らしい。ここで敷地のアテを聞き出せればラッキーだなあとは思っていたんだけど、相談したらまさかの
「ここ使っていいですよ」
ていう返事がきた。
1208
快晴。気温も昨日と同じくらい。お昼ごろに藤巻ビルを出発、神戸方面に向けて歩き始める。家ごと移動するのは久々なので荷物が重く感じる。
15キロくらい歩いて、16時ごろにはもう暗くなり始めてきたので西宮という駅付近で敷地を探し 始めたんだけど、全然見つからない。1軒目のお寺は留守で、2軒目の神社は「朝早く氏子さん達が くるからびっくりする」ので断られた。3軒目のお寺は「いま住職がいないので協力できない」と言 われて、4軒目のお寺は普通に「それは無理やわ」と言われた。ツイッターとフェイスブックでも呼 びかけてみたけどなかなか良い場所がみつからず、日はどんどん落ちてくる。5軒目に行ったお寺 が、お寺とは思えないような、普通の住宅っぽい家だったんだけどそこでようやくOKがもらえた。
久々の家の移動で敷地が見つからなくて焦ったけど、夜銭湯で湯船につかりながら今日のことをふり 返ってみて「やっぱりこれは楽しいのかもしれない」と思ったりした。ある一定の日数を超えて移動 しなに日が続くと、移動したくなくなってくる。そうすると何故か思考が暗黒面に陥りやすくなる。 絶望する暇を頭に与えないためにも移動は良い。
かなり良い気持ちで銭湯を出たけど、脱衣所のロッカーをあけようとしたら荷物が大きいせいで鍵があかなくなって、店の人を呼んだらロッカーを壊すことになり千円取られた。
1207
今日もほとんど雲のない快晴。気温は昨日より少し高い気がする。散歩すると気持ち良い。
だいぶ体調も回復してきたので、昼から「堀川団地」という建物の絵を描くために京都に行ってき た。
風邪をひいた事もあって8日間くらい滞在した藤巻ビルだけど、明日はここから神戸方面へ向けて家 を移動させる事にした。なので夜に藤巻さんが最後の晩餐で鍋をやってくれた。僕の髪が伸びてて、 切りたいと言うのでお願いしてみた。かなりうまく切ってくれた。 ながく居たところを出発するのはすこし寂しい。藤巻さんが昨日のたこ焼きパーティーのメンバーで ラインのグループをつくっていて僕も入ってるんだけど、そこではメンバーの恋愛に関する出来事の 実況とそれに対する励ましやアドバイスが流れてきて、僕も「ドンマイ!」とか言ったりする。藤巻 さんも僕が明日出発すること流したりして、「気をつけて~」っていうメッセージがきたりする。グループの関係性が面白くて笑っちゃう。
1206
今日も晴れ。相変わらず寒い。
起きた直後から藤巻さん主催のたこ焼きパーティーの準備を手伝い始めた。何人か友達を呼んでやる らしい。藤巻さんのビルの2階はキッチンもテーブルも食器もあるけど普段はあまり使っていないら しく、そこに友達を呼んでパーティーとかできる。お昼には友達が4人くらい集まってきて、お酒も 飲みはじめてた。僕以外はみんな30代の女性で、妊婦さんもいるし東方神起(他にもいっぱいグル ープ名がでたけど全部忘れた)とかの超韓流アイドルファンの人もいるしなんか色々いて、初対面同 士のところもあるけどみんな関西人ってだけあって話がほとんど耐えない。僕はほとんどみんなの話 を聞いてるのみ。話題がどんどん変わりながらお酒がすすんでいく。女子会に混ぜてもらってる感じ。
東方神起ファンのナガイさんはユンホ(東方神起のメンバー)への貢ぎっぷりが凄まじくて、話 を聞きながら僕は新しい世界の住人を目の当たりにしていた。7口のファンクラブ会員権を所持してチケットをとって、日本でのコンサートよりも韓国のコンサートを聞きにいくのが好きらしい。ハングルで聞くのがいいらしい。
他の人も年上の人との恋愛関係の話とか、生まれて来る子供の名前の話とか、たこ焼き器でアヒージ ョができるんじゃないかっていう話とか、職場の20代の男子が全然使えない話とか色々出てくる出 てくるで、たこパは夜まで続いた。僕は途中から集中力が切れて眠くなって横になってた。
1205
快晴。相変わらず寒い。まだ喉が痛い。ぶり返した風邪は長引く。だけど喉以外はだいぶ回復した。
午後から椿昇さんに会いに京都造形大に行った。美術工芸科の研究室にはレムコールハースのリサーチ本とか、建築や都市に関する本がたくさんあって、本棚を見てたら椿さんが
「うちはシステム工学を教えてるから建築リサーチ系が多いねん」
って言った。現代美術は、システムを作ればまわりはじめる。いくら体当たりでやってもシステムをまわせないとうまくいかない。宮島さんがデジタルカウンターをみつけ、名和さんがピクセルを見つけたように。それをまわせば食っていける。だから建築系の本を置いてるらしい。僕の育った環境と全然違う。システムをまわすってことがどういうことか、最近薄々感じてはいたけれどその参考にするのにOMAの「S,M,L,XL」とかを使うなんて目から鱗だった。というか、大学で現代美術を教えるってことはつまりこういうことなのかと、それは数分間の会話だったけど大変な刺激で、これはもう敵わないのでは、と思ってしまった。
研究室ではあるプロジェクトのミーティングが行われてて、そこには学生もまじってる。椿さん曰く、学生には徹底的に現場をやらせるらしい。なんか僕も楽しそうだから会話に混じってたらプロジェクトに乗ることになった。
その後ウルトラファクトリーっていう工房に連れて行ってもらって、そこはヤノベケンジさんの制作中の作品などがあって、なんだか訳が分からないままスタッフの人が案内してくれた。名和さんとかヤノベさんとかやなぎみわさんとかのプロジェクトを、学生も混ざりながら進めるための工房で、いくつかのものが同時進行で動いていて、そこにいるだけでその空気の熱量にくらくらした。大学には1,2時間しかいなかったけど刺激をもらいまくって、自分の中の確信を勝手に固めて出ていった。
そのあと大阪に戻って中津っていうところにある「シカク」っていうスペースで原田ちあきさん企画の展示を見てきた。原田さんが、ツイッター上で作品を発表している絵描きや漫画家の人たちに声をかけて、Tシャツやトートバッグに絵を描いてもらったものを展示販売していて、結構売れてるみたいだった。原田さんは「一緒に死にたい人を見つたい」みたいなことを言ってた。すごい言い回しだ。彼女の話を聞いた感じでは、それは心中したいとかそういう意味じゃなくて、「自分たちの支持層を見つける」ことに注力して、お客さんと一緒に成長していきたいっていうことだと思うんだけど、考えてみると大学で美術を教え込まれた人って、(あるかどうかもイマイチわからない)アートワールドの中でいかに自分をたてるか、それに失敗したらもう絵で食ったりするの無理、みたいな0か100かみたいな勝負を無意識にしていて、それはもしかしたらもっと大きな未発掘のマーケットを無視していることになるんじゃないかと思った。椿さんは美術市場をひろげるために卒業制作展で作品の売買ができるようにしてカタログをつくったり、美術作品をリースするプロジェクトをやったりして、同時に経済界にも働きかけて、美術への投資を促すようなことをしているけれど、それはもしかしたら原田さんがやってることとすごく近いのでは、なんて思ったりした。
ふたつの場所が対照的でくらくらしながら帰ってきた。明日は、藤巻さんが友達を何人か呼んで「たこ焼きパーティー」をするらしい。僕も朝から手伝うらしい。
12041924
今日は朝からずっと雨が降っていて、昨日と同じくらい寒い。夜には雨があがってもうすぐ満月の月が見えている。このあたりは空港が近いので飛行機が頻繁に低い高度を飛んでいく。
ここ7日くらい、子供(というか糞ガキ)にいじめられたり何かに憑かれて神経衰弱になったり、人と会ったり熱出して寝込んでたりして、絵はなんとか描きつつも、日記を一切描く気になれなかった。けどすこしずつ持ち直してきたのでまとめて書く。なかなか色々あった。体調が悪くなると自分のことを俯瞰できなくなって、嫌な事があるとただひたすら落ち込む。絵は頭がぼーっとしている状態でも描けるけど、日記を書くのは無理だった。
まず28日に奈良の松村さんの家から大阪市浪速区の友達のアパートに向けて家を移動させた。奈良と大阪のあいだには山がいくつかあって、そこは紅葉がとても奇麗で、そのための観光客が何人もいたけど、僕は「紅葉を見に出かけてそれを見るのとは別種類の感動」を自分がしているような気がした。それは僕が冬を越すために南へ向かっている最中だからだと思った。たしか茨城あたりで、葉っぱが青々として奇麗だな、と思ったのを覚えてる。あのとき僕は夏を迎えるために北へ向かっていた。あの葉っぱもきっともう役目を終えようとして、今ごろは赤くなってるんだろうと思う。木々が、冬を越す準備をしてる。僕も冬を越そうと南に向かっている。「冬を越す」っていうことが、こんなに大きなイベントに感じられるのは初めての経験だ。ユニクロでヒートテックを何枚買えばいいのかな、とか、鹿児島くらいまで行けば少しはマシかな、とか。平均気温を調べたり降雪量を調べたりする。全ては無事に冬を越すために。紅葉が何故奇麗なのかって、単純に色が鮮やかっていう事以上に、生命の終わりとか時間の移ろいとかを重ねて見るからだと思う。生命体としての木々が運動しているのを感じるから美しいのだと思う。
でも紅葉が美しいとか思う余裕はすぐになくなった。「奈良と大阪は近い」なんて思ってけど、とんでもない誤り。直線距離は近いけれど、あいだに鬼のような坂道がずーっと続いて、もう笑っちゃうくらいの急勾配ばっかり。すぐ汗だくになって足にもマメができた。車もすごい音を立てながらきつそうに坂をのぼっていて、歩いてる人は他に見当たらなかった。くらがりとうげ、とよばれる坂道を登りきったあたりで大阪府に入る。そっからは、笑っちゃうくらい急勾配な下り坂がつづく。足を滑らせたらたぶんアウトなやつ。
疲れすぎて、途中にあった公園で昼寝した。そんでようやく山道を超えて、東大阪市の街中を歩いてたら今度は自転車にのった小学5年くらいのガキ集団が後ろから寄ってきて、50センチくらいある木の枝(太め)を僕に向かっていきなり投げつけてきて、びっくりしてふり返ったら
「きしょいねんハゲ!」
と罵声を浴びせてきた。かなり腹が立ったけど、もう疲れてるし家を壊されてもたまらんので「孫の代まで呪われろ」と思いながらさっさと立ち去った。
平熱に戻った30日の午後から大阪在住のアーティストの大歳芽里さんと合流して、大阪の此花地区を案内してもらった。もともと梅香堂というギャラリーで、今はASYLという名前に変わったスペースで下道基行さんが展示していて、下道さんとも少しお話しできた。武蔵美の卒業生だから先輩にあたる。下道さんの話を聞けば聞くほど、興味の対象が僕と近いところにあるような気がした。下道さんは「写真家」っていう感じじゃない。「写真を使って」作品をつくってるという感じがする。有名な鳥居の作品群について

なんか鳥がのってる
翌朝は藤巻さんの職場まで忘れ物を届けにいったり、de sign deというミュージアムで建築の展示を見たり。この展示がまたなかなか良くて、建築のゾーニングを考える、あの懐かしい面白さを思い出した。大学生のときはこの面白さだけが設計をやるモチベーションになってた。展示を見ることによってまた消耗して、ふらふらと家に帰ってきてまた寝た。
メモ
1128
晴れ。時々曇り。今日も朝から割と暖かいけれど、暗峠を超えて大阪に入ったあたりから気温が数度上がったような気がする。
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上着を着てると暑いくらい。晴れ時々曇り。
1130
昼までは晴れてたけど夜になって雨。相変わらず暖かい
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くもり時々小雨。午後から2月並みの気温になると聞いていたけどそんなでもない。
1202
快晴。ちょっと雲が浮いてる。とても寒い。というか昨日までが暖かすぎた。
1203
今日も寒い。昨日と同じような気候。雲は少しあるけど晴れている。夕方から急に曇ってきて、夜には雨が降ってきた。
11280939
松村家には9ヶ月の赤ちゃんがいるんだけど、だっこしてる時にお母さんがよく体を上下にゆらしてる。そうすると落ち着くらしい。赤ちゃんをあやすのにもリズムが要るのだ。ゆりかごとかもそう だ。そういう動作も全て荒川修作やシャーマニズムと繋がっているんだと思う。
11271722
昨晩まで降っていた雨も上がって朝から晴れている。昨日よりちょっと寒いかも。
いま大和郡山のイオンモールのフードコートにいる。お店やゲームセンターの音やBGMや人の話し 声がまざりあっていてとてもうるさい。さっきインターステラーっていう映画を観た。ツイッターや フェイスブックでみんなが良い良いと言うので気になって、平城宮跡も東大寺も行かずに、思い切っ て郡山のイオンモールの映画館に来た。こういうのは今だ!っていう時に観ないといけないんだ。そしてその選択は正解だった。やばい体験ができた。映画が終わった直後、自分の肉体の不自由さが憎 くなる。さっきまであんなにあちこち行ってたのに、そういえばここは映画館で、3次元の世界で、 それが悲しくて憎い。イオンモールは大盛況だけど、インターステラーはガラガラでもったいない。
1126
朝から小雨。でもすぐにでも止みそうな感じ。気温もそんなに低くない。
だいきくんが3年間に僕とベイブレードをやったことを覚えていて、また一緒にやりたいようだったので、ちょっと一緒にやった。なんか親戚のおじちゃんみたいな気持ちになった。最後は越智さんも 加わって3人でバトルして、だいきくんが1位で僕が2位で越智さんが3位という結果。
今日は僕の家を奈良市の西大寺付近に住んでる松村さんていう人の家に移動させる。メールで僕に 「うちの敷地使っていいですよ」って言ってくれた人。越智さんのところを出発する前に東京のTBS の人たちが取材に来た。朝のニュースバラエティ番組らしい。今回のディレクターは僕の気持ちをか なり汲み取ってくれてやりやすかった。彼は風邪を引いていて冷えピタを貼りながら撮影を指示して いた。熱があるのを表に出さずに仕事をしていて凄いけど、僕にうつさないでくれよと思った。
松村さんの家は松村夫妻と小さな子供が3人いて、全員男の子。もともとモデルハウスだった家に住 んでる。奥さんは、あれこれ言ってくる男の子3人を同時にさばきながら、ご飯の準備をしたりあれ これ用意したり、色々と同時に気を回している。それに加えて数日前までタイ人の学生をホームステ イさせていたらしい。すごい。頭の構造が変わりそうだ。
松村夫妻が 「よかったらもう一泊していってください。平城宮跡とか東大寺とか行けますよ」 といってくれたので、明日もここに泊まることになる。
1125
朝から雨。明け方はかなり強く降っていたけどお昼前にはだいぶ弱まった。夕方にかけてだんだん止んできた。気温はたぶん昨日とあんまりかわらない。
今日は、3年前の飛鳥アートプロジェクトで知り合った写真家の越智さん一家に会うために、家を大和郡山市から桜井市に移動させる。まさきくんとだいきくんという男の子が二人いて、3年前に行った時は一緒にベイブレードをやって、長芋をふんだんに使ったお好み焼きを食べさせてもらった覚えがある。久々の越智家は、低い円卓から高い四角のテーブルに変わってたりとかしたけど二人は相変わらずベイブレードをやってて、夜もお好み焼きだった。だいきくんがめちゃ元気で、家の空気をつくってる感じも3年前と変わらずで、ただ今日初めて見せてもらっただいきくんの絵はすっごく良かった。








































