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雨が降り止まない。今日も留まっていようか迷ったけど、音楽を聴きながら絵を描いていたらエネルギーが湧いてきたので今日は歩くことにし た。家の中で
「よし。いくぞ。いくぞ。」 って独り言をつぶやきながら移動する準備をした。雨は降っているけど風はなさそうだった。でも台風の風は突然強くなったりするから油断でき ない。 僕は敵を攻撃するつもりで家の絵を描いている。あるいは距離をとるつもりで。細かいところまで小さな画用紙に描ききってしまうことはひとつ の攻撃になると思ってやっている。撮影することをshootというのと同じ。それはすごく地味な行為だけど。あからさまに攻撃を連想させるよう なことをしたほうがわかりやすいのかもしれないけど、家と個人(あるいは社会システムと個人)の関係はそんな単純じゃない。とても複雑で、 全てが全てに繋がっていて、人に向かって指した指が自分にはねかえって来るような状況になっちゃってる。だからひたすら、博物館に家の絵を 陳列させていくように描く。陳列することで距離が生まれる。陳列する対象を客体化できる。

インフォメーションのお姉さんにも今日発つ旨を伝えて、12時半頃出発した。引き続き海沿いの国道8号線を歩く。スズメバチの死んだやつを 最近よく見る。そういう時期なのかな。
今日はロードバイクのレースをやってるから、歩いてるとたくさんのレーサー達とすれ違う。みんな良い 表情をして、ニヤニヤしてこっちを見ながらすれ違っていく。
3時頃、歩道に家を置いて海が見えるセブンイレブンで休憩して出てきたら家のそばにパトカーが停まっている。久々なのでどきどきした。おま わりさんはにこにこしながら
「こんにちは。旅ですか」
と話しかけてきた。
「はい。職質ですか?」
と聞いたら
「そうですね。いわゆる、そうです。」
と答えた。いつも通り原付の免許証を出して、荷物検査をされた。一通りすんだあと、お巡りさんが
「ひとつお願いがあるんですけど、この先親知らずっていう町のあたりの道路がすごく危ないです。狭くて歩道もなくて、くねくねとしてる上に 大型トラックがバンバン通るから、その区間だけ電車をつかってもらえませんか?」
と言ってきた。
「これ電車乗りますかね?」
「これくらいなら、言えばのせてくれるんじゃないですかね」
と言う。そうしてみようと思った。

5時前に糸魚川駅近くについて、出発したときからずっとアテにしていた銭湯に行ってみたんだけど、なんと無くなっていた。銭湯はやっぱり生 き残りが厳しいんだろうなあ。なので、まずは敷地を確保しようと近くでお寺を探した。敷地の交渉はいつまで経っても慣れない。緊張で震え る。 敷地を貸してくれると言うことは、ある程度は僕のことを受け入れてくれたということだ。それはとても嬉しいけど、受け入れてくれる人しかい なかったらつまらない。だけど受け入れられる人のとこにも受け入れられない人のとこにも、どちらにも関係なくとまりたい。ハエがどこにで もとまるように。カバコフのハエのように。人にとっては、それが新鮮な果物か犬の糞かって違いは凄く大きいけど、ハエには両者が同じよう に見えている。ハエは世界をそのように見ているはず。カバコフはハエをそのような存在として考えていた。ハエになればいいのだ。 こう考えていくと、敷地交渉に失敗しても成功しても同じようなもんだと思えるので少し楽になる。
1軒目は
「うちはちょっと。。このあたりたくさんお寺あるので他をあたってみてもらえますか。すみません。」
とやんわり断られた。
2軒目で
「敷地だけでいいの?どこに置くかだな」
とオッケーしてくれた。家を置いたら即お風呂に向かった。こっから電車で次の駅の「姫川」ってところまで行って、そこに日帰り温泉がある。 2日ぶりの風呂。
温泉に入りながら
「いろいろあったなあ」
「いろいろあったからなあ。今温泉が気持ちいいなあ」
「これからもいろいろあるんだろうな。そして気持ちいい温泉に入るんだろうなあ」
って独り言が口から自然に出てきた。
返ってきて寝ようとしたけど思ったより雨が家の中に浸み込んでくるので、ひさしのある場所に移すことに。一旦寝る体制になってから家を動か すのは結構大変なのだ。しかも雨が降っているし夜だから暗い。まずは寝袋と銀マットを丸めて先に移動先に持っていく。それから戻って家の中 でリュックを背負って前方の窓だけあけて、目を凝らしながらお墓のそばをあるく。この作業を東京で強固な屋根の下にいるなおこと電話しなが らした。彼女はホテルの中にいて
「雨の存在を感じない」
と言ってた。こっちは雨で一大事だ。家を移動させながら「すごい人生だな」と思った。誰かドキュメンタリー撮ってくれたらめちゃ面白いと思 うんだけどな。

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Posted by satoshimurakami