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いま10月25日の朝だ。僕はお寺にいる。境内が広いお寺。パソコンが電池切れで、iPhoneをソーラーパネルにつなげながらコンクリートブロックに座ってこれを書いている。景色に朝もやがかかっていて、空は雲が一つもない。鳥の声と、遠くの県道からの車の音がする。時々目の前の道路を、犬の散歩をするおばちゃんやおじちゃんが通る。自転車に乗った高校生も通る。大抵の高校生は携帯をいじりながら自転車を漕いでいる。危ないと思うけど、僕もよくやってた。

昨日はお昼前に牧井先生のところを出発して、「ふくい夢アート」なるものをちょっと見た。見てる時に、会場の前に置いてある僕の家を見て、小さな子供を連れたお母さんが
「これどこでみたんやったっけなあ。これどっかでみたなあ。」
って言いながら僕に話しかけてきた。最近福井県内で、僕の家がうつってる何かの番組が放送されたらしい。聞いてみたら、半年前に東京の花屋の前で取材されたやつが最近放送されたらしい。そんなに遅れるんだな。夢アートは、けっこういろいろな会場でやってた。紙からロボットを作りまくってる高校生の作品がよかった。

そんでまた歩き始めて、3時くらいには「もう歩きたくない」って思って敷地を探し始めた。
でもなかなか見つからなくて、5軒くらいあたったけど2軒には断られて3軒は留守だった。うまくいかないのが続くと敷地交渉への自信がなくなってくる。ツイッターで敷地を探していると呼びかけてみたら、何人かが協力してくれた。でも遠かったりして、やっぱりなるべくこの近所で探そうと思った。
福井市の三十八社町っていう面白い町にある6軒目のお寺でチャイムを鳴らしたら、優しそうなおばちゃんがでてきた。手には細かい野菜とか肉とかがついてる。多分ハンバーグをこねていたのだ。そこでオーケーをもらえた。もう暗くなり始めてた。

そしたら、なんだか僕のことをここ数日追跡しているという金沢の人からメールがきて、夜一緒にラーメンを食べた。その追跡者曰く、放浪癖がひどくて、昔は世界中を旅していたらしい。
「親不知という土地を通った時が危なかった」
って話をしたら、親不知という土地の由来を教えてくれた。かつて道路が整備されてなくて海岸沿いを歩いて通るしかなかったころ。激しい波の合間を縫って渡っていた親子がはぐれてしまって、そのまま親が行方不明になってしまったっていうエピソードからきてるらしい。昔から危ない場所としてしられていて、道路が整備された現在もいまだに危ない場所なのだ。追跡者は
「明日また家を見に来ます」
と言って何処かに帰って行った。
お風呂は近くになくて電車に乗るのも面倒なので入らなかった。昨日はそんな一日。

自分になんども言い聞かせていることだけど、いま僕は制作をしているのであって、発表をしているのではない。僕にはある 展覧会のビジョンがあって、そのために作品を描きためているだけ。今は制作プロセスの最中で、絵かきがアトリエで絵を描いてるのと同じことをやってるつもりなのだ勘違いしてはいけない。
僕の頭は既に未来で待っていて、僕の体はいま過去にいる感じがする。あとはその未来に向かって体を持っていくだけ。絵を描きためていくだけだ。当面の目的は移動生活をベースにしてしまうこと。人々が家賃を払って家で生活しながら仕事をするように、僕は移動をベースにした生活をしながら仕事をするのだ。そして展覧会を何度もひらくこと。そうしないとみんなわからないみたいだ。みんな「いつまでやるの?」って聞いてくる。何度説明してもわからないのだみんな。だからやるしかない。そんでたまにだらだらもする。なにもしないでいられるのが一番幸せだ。本当は何もしないでいたいけど体が勝手に動き始めるからめんどくさい。マヒトくんは「沈黙の次に美しい日々」って歌ってた。フィッシュマンズも「目的は何もしないでいること」って歌ってる。何もしないでいられるのはどれだけ幸せなことか。

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Posted by satoshimurakami