3月27日(6日目) | 

朝7時半ごろ起きて、8時半発のバスに乗って学校に行った。歩いていきたいところだったけれど、行動が遅かった。朝6時くらいに一度起きてしまって、それからもう一回寝たら夢をみた。夢の内容をiPhoneにメモしていたら、となりの二人組から

「携帯に充電さしてねえやって言って、充電をさす夢を見た。まじくだらねえ夢」

という話が聞こえてきた。

エレファントカシマシにRAINBOWという曲があるのだけど齢50歳でつくったとは思えない激しい歌で、「あれ、死ぬのかな?」という歌なのだけど、その中で宮本が

「暮れゆく街のざわめきの中に立って 落ちていくすげえスピードで でっかい渦巻きの中 まるで底なしさ 面目無いね 陽だまりも宇宙も 悲しみも喜びも 全部この胸に抱きしめて駆け抜けたヒーロー それが俺さ 嘘じゃないさ」

と、自分をヒーローとして歌っていて、しかも死んだ後に自分を振り返っているような言い方。もうかっこよさが独自路線すぎてやばいのだけど、彼いわく自分を「やがて老いて死んでいく存在だと実感した」らしく、この視点はCOCK ROACHの「白い新世界」という曲と同じだが彼らはさすがに自分をヒーローとしては歌っていない。未来のことに頭が飛びすぎて現在に戻ってきたときに、今が現在であることにうんざりするし、体が現在にあることにもうんざりする。中途半端な未来に身を投げ出してしまうと、いつまで制作なんか続けられるのかとか、すごいものが本当にいつかは書けるのかとか、体が持つのかとか、人間関係は大丈夫かとか、お金は大丈夫かとか、病気になったらとか、あらゆる不安に潰されそうになって非常に辛いし、世界はそうやって色々な不安を煽ってきてあの手この手で自信をなくさせようとしてくるけど、どうせ未来に飛ばすなら宮本やCOCK ROACHみたいに、この命を駆け抜けた自分というふうにずっと先の未来まで、しかも”すげえスピードで”ぐっと飛ばしていけば、必ずひらけるものがあるはずだ。と、魂が死ぬ場所で猿とも屍ともつかない者たちに囲まれながら思っている。

今日は2時限目に一つ目の運転教習で、無線教習というやつを初めてやった。これまでの運転教習はすべて教官が助手席に座って運転して来たのだけど、無線教習は教習生一人で、エアコンのところにつけられている無線機から飛んでくる教官の指示というか命令をききながら運転する。その発信源となる教官は、教習所内のコースが一望できる場所から車の動きを監視しながら指示を出している。いよいよ本格的に刑務所みたいな感じになってきた。教官は初めて見た人だった。「俺は容赦しないぞ」という雰囲気がもう身に染み付いちゃっているような男だ。発する言葉のトーンが冷たい。しかしブコウスキーの言う通り、どんな「チンケな人間でも”そこに長くいる”だけで偉くなっていく」もんだ。そしてそれがその人の尊厳になる。しかし人を威圧して保たれる尊厳は本当に尊厳なのか?横断歩道上にかからないように停止位置を考えてください、カーブのスピード出しすぎ、車間距離もうすこしあけて、と三つ注意された。

そのあと模擬ペーパーテストを受けた。96点だった。2問落とした。どの免許をとれば、他にどんな車が運転できて、その車が定員何人までなのかという知識の詰め込みが甘い。30人のバスの運転には中型免許じゃダメ。大型特殊自動車免許をうければ小型特殊と原付も運転できる・・。勉強が必要だ。勉強が必要・・。でもテスト中に、講習中に教官の身の上話みたいなものをきいているおかげで、答えにつながることを思い出せた。ああやって、物語で聞くと記憶に残る。彼らはそれをわかってやっているんだろう。適当な講習だなとおもって聞き流していたつもりが、実は頭の中に入っていてちょっと驚いている。

それにしても『優先道路を通行しているとき以外は、自転車横断帯の手前30メートル以内の場所では、自動車や原動機付自転車を追い越してはならない』という問題とか、『車は、道路に中央線があるときは、中央線から左の部分を通行しなければならない。』とか、もう読むだけで不快になるテキストだ。

最初の問題は「自転車横断帯の手前30メートルは追い越し禁止」「交差点の手前30メートルは追い越し禁止だが、優先道路を通行しているときは例外」という二つのルールを知っていれば解ける問題なんだけど、テキストがひねくれすぎていて間違えやすい。優先道路と自転車横断帯は全然関係ないじゃないか。

ふたつめの方は要するに『道路は左側通行である、◯か×か』という問題なんだけど、これもテキストが卑屈すぎてうんざりする。僕は間違えてしまった。

模擬テストのあとは散歩したり、すこしだけロビーで勉強したりした。清掃員のおばちゃんが気になる。かなり頻繁に机の下などをモップかけたりしてくれている。あのおばちゃんはここでどんな毎日を送っているんだろう。彼女の尊厳はどこだろう。後ろでうるさい歓声のようなものがあがっている。卒業検定の合格発表?おめでとうございます。しかしあの猿か屍かわからないのがこれから車を運転するのか・・。恐ろしい社会だ。

今日は珍しくいくつかメールがきている。田原さんから、つつじヶ丘のアトリエの物件ってどうやってみつけましたか?と聞いていたメールが返ってきた。またミヤケさんから、月刊美術にもっと評価されてもいいアーチストとやらを紹介してくれと言われたんだけど村上くんどうですかというメール。あと田谷さんから、シュタイナーに関する哲学講義をやりますという案内。田谷さんのエネルギーはすごい。ひとりでシュタイナーに関する勉強会を企画している。あとにじのとしょかんから、夏にやるイベントのチラシをつくりたいので情報くださいというメール。忘れてた。

散歩のさい天気が良すぎて、缶ビールを買いに行くのを我慢するのが大変だ。ビール飲んだあとに運転教習に参加したら一体どんな反応されるんだと考えると恐ろしい。やっぱり一発で退学になるのか?過去にそういう例はあるのか?少なくともあの屍か猿かわからないなかからはそんなぶっ飛んだ奴は生まれないだろう。

嫌だけど、ご飯が食べられる権利を逃すのは惜しいので、すこしでも人が少なくなった時間帯をねらって食堂にお昼ご飯を食べに行った。かに玉丼とサラダと水。美味しかった。甘くて。昨日は食堂ではご飯を食べなかった。ポテチを食べたので。

午後2時50分から今日二回目の運転教習。教官は例の77歳の人。五十嵐先生という。五十嵐先生は、いつも来るのが遅い。だいたいの教官は、教習開始時刻の3分前に「教習の準備をしてください」という放送と共に、ふりわけられた教習車のそばで立って待っている教習生のもとに来るのだけど、五十嵐先生はいつも最後にくる。今日は、タバコを教習時間ギリギリまで吸っていたのが教習車から見えた。人間味あふれる教官だ。ちなみに百地先生は白いアイコスを吸っていた。細かい注意はされたけど、一回もエンストはしなかった。途中、五十嵐先生はちょっと眠そうにうとうとしていた。ご無理なさらないように。

最後車から降りる前に「うん、多分、大丈夫」と言われた。嬉しかった。とても。

路上ですこし猫と遊んだ。シロバナタンポポも見つけた。そいつは西洋蒲公英(これでセイヨウタンポポと読むらしい)に囲まれながら一輪だけ咲いていた。

運転教習の後は模擬テストを受けようかと思っていたけどなんかやる気になれず、もう帰ってしまうことにして、コンビニで金麦を買って飲みながらしばらく歩いてから、教習原簿を返し忘れたことに気がついた。教習原簿とは公文書(今話題の)らしく、表紙に赤字で「教習所外持ち出し禁止」とでかでかと書いてある。ここにきて最初の日に「ホテルに持って帰るなんて論外」と、BOSSに言われた。そういえばBOSSが懐かしい。あれから見てない。BOSSは「即退学」という言葉をよく使っていた。教習原簿を返しに学校に引き返したわけだけど、金麦を持って現れたらまずいよなと思い、教習所の前の道路の塀の上に飲みかけの缶を置いて、お茶を飲んで酒くささを少しでも消して、なるべく人の目を見ないようにして学校に入り、受付に行って教習原簿を返した。「はい、おつかれさま」といわれたので下を向いたまま「ありがとうございました」と小さく言った。それから学校を出て、塀の上に置いた金麦を取って続きから飲み始めた。春だ。いま、季節が春で本当によかった。外を歩くことで救われることがたくさんある。つくづく一人で賑やかな人だおれは。

ホテルまで歩いて帰り、そのままロビーで晩御飯を食べた。初日から思っていたけど、部屋番号を言うとご飯を用意してくれる二村さんというおばちゃんが、かわいいというかすごく徳の高そうなチャーミングさを持っている。晩御飯は、鶏肉の竜田揚げおしゃれバージョンと、温泉卵と、春雨サラダと、味噌汁とご飯。いつも晩御飯が、さりげなく洒落ている。シェフにフランス料理店での修行経験がありそう。

部屋に帰ったら、床に散らばっていた白い紙くずが綺麗サッパリ掃除されていた。ざまーみろだ。

3月27日(6日目) | 2018 | 未分類 | Comments (0)

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