5月24日の日記
思えばタンスを自分で買ったことがない。空鼠時代などは服をどこに入れていたかすら思い出せない。ものがないから、記憶が定着していないのだ。記憶は案外ものに宿るというか、頭の中だけで覚えておくのはすこし難易度が高いのかもしれない。日記にもそんな生活のことは書いてないのでいまはもうわからない。ただバスタオルを一枚しか持っていなかったことは覚えていて、ずいぶん洗濯もせず、しかも使い終わったやつを、室内の日陰で干していた(同居人たちも同じところに干していて、でもバスタオルを一枚しか持っていないのは僕だけだったので、他のメンバーのタオルは度々変わっていたが、僕のだけはずっと同じものが干されていた)のでたぶん匂いが取れず、でも僕は鼻がほとんど効かないのでそれがわからず、一度僕のタオルをシャワー後の友人に貸したら、くせえ!と言って、自分が脱いだTシャツで体を拭いていた光景が強烈に残っている。ぼくはどう反応すればいいかわからなかった。いまでもわからない。
タンスに限らず家具を買うということをほとんどしたことがなく、いま使っているベッドも机も自分で木材を切り出して作った。本棚は、制作に必要だったから買った。布団も制作に必要だったから買った。カラーボックスも制作に必要だったから買った。制作のために買った者たちは、その後ぼくの生活用のものに変わっている。必要があればまた作品のために駆り出されるだろう。書いていると、ぼくは自分の生活を作ることにほとんど興味がなく、それが制作に絡んだものになれば惜しみなくお金も時間もかけられるのに、自分の生活のために、という名目ではとうていやる気になれない。料理は好きなのに。レンジやオーブンは自分の生活のためでも買えるだろうに。(05242344)