0604

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自分の家が壊れる夢を見た。目が覚めるまで夢だと気づけなかった。 夢の中で僕は山道にいて、壊れた家の4つの大きなパーツと細かいパーツを拾いながら「絶対つくりなおしてやる」って唇をかんでいた。 起きてすぐに思わず
「家がある」
と口走ってしまった。家がちゃんとあることに感激した。
10時頃保原の駐車場を出発。昨晩「このまま進むと何もない山道が何キロも続くよ」と脅されたので、より賑やかな4号線に乗るべく国見町の方へ向かう。

歩いていて、昨日福島から保原まで歩いてる最中に呼び止めてきた人のことを思い出して急に腹がたってきた。 僕が絵を描きながら北上している旨を伝えたら、まずそのおじさんは
「君は北ではなくて東にむかっている」 と言ってきた。そんなことはわかっている。だって今は梁川に向かってるんだから。そんな常に北を向いているわけがないじゃないか。旅とかしたことないのか。 そのあと
「あと30キロがんばれる?」
と聞いてきた。こいつはなんでこんな偉そうなんだと思いながら
「30キロがんばったら何かあるんですか?」
と聞き返したら
「宮城県に入るからね」
と言う。宮城県に入るからなんなんだ。話しても時間の無駄だと思って立ち去った。 別れてから、彼は彼のこれまでの経験が世界の全てだと無自覚に思いながら話をしているのだなと思った。自分で偉そうにしていることにもきっと気がついてない。 自分のそれまでの経験だけでは及びもつかないような社会や覚悟や個人の生き方がこの世界にはたくさんあるのだということをいつも忘れないようにしないといけないなと思った。彼らの覚悟に対して、僕は簡単に口を挟む資格をもっていない。いつも想像力を働かせることを怠ってはいけないなと自戒する。
よく「どっから来たの」って聞かれて、無自覚に「東京です」って答えている自分も少し見直さないといけないなと思った。 前にも書いたけど、人が移動しているのをみて「~から来て~へ行く途中」っていう考え方をしてしまうのは、僕たちがひとつのドグマというかパラダイムというかそういうものに 縛られていることを意味しているのだ。家を出ることと、目的地があることは無関係なのだから。
歩きながらiPhoneで音楽をかけることを覚えた。イヤホンじゃなくてスピーカーから流す。家の中全体に音楽が響き渡るiPhoneの位置も発見した。 そうしたらトラックに抜かされることが余計に腹立たしいものになった。4号線はトラックの通りが激しいので、抜かされる時の「フォンッ!」ていう騒音と風圧でそっちゅう音楽 が途切れる。だからトラックに抜かされるときだけ自分で歌ってた。それが良かった。自分で歌えばトラックに勝てる。「これなら勝てる!」と心の中で叫びながら歌っていた。
歌いながら歩いていると、道路に生えている草花やせわしなく動き回っている小さな虫やトカゲがとても生き生きして見える瞬間があった。トラックに乗っているとこんなところに トカゲがいることにもコスモスが咲いていることにも気がつきにくいだろう。何本も同じ種類の雑草が生えているエリアがあったり、蟻が毛虫の死体に群がっていたりいろんな出来 事が起こっていることがわかる。前にも書いたようにこの4号線はバイパス道路なので歩道はあっても歩行者はほとんどいない。2時間歩いても一人もすれ違わないくらい。だから 車の通りは激しくても安心して歩けるし、こういう出来事を発見もできる。でも歩いてる人はほとんどいない。
「ここにこの雑草が生えていることが泣けてくるな」って考えだして泣きそうになるような、今考えると少しいきすぎた精神状態になったころ白石というまちについた。今日は25キロくらい歩いた。大きな銭湯があったの で、まず汗を流す。
そのままそこの駐車場に家を置かせてもらう交渉に成立。
近くのガストでご飯たべて歯磨いて、コインランドリーで洗濯して就寝。

Posted by satoshimurakami