0620

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昨日泊まらせてもらったところは敷地内がまだ工事中で、朝から何人かの職人さんが忙しそうにして いる。僕には聞き取れない方言(というか訛なのかな)が大声で現場に飛び交っている。笑っちゃう くらい聞き取れない。良いな。
日記を書いたり絵を描いたりして11時半頃に出発。気仙沼市の本吉 というところをとりあえず目指して歩く。このあたりからもうリアス式海岸が始まっていて、たいて い岬のほうではなくて湾んになっているところに町がある。岬をひとつ超えるのがだいたい20キロくらいで、1日で歩くにはちょうど良い距離。ちょうど良い距離なんだけど、歩道が無いところが何ヶ所もある。歩道は突然終わる。「歩道ここまで」みたいな標識など一切ない。もう何度思ったかわか らないけど、なんで歩道がないところがあるのだ。歩道が無いから車道を歩くしかないじゃないか。 そして車道を歩くと、時々ぶっきらぼうなトラックとかダンプとかがすぐそばを猛スピードで通り越 していって、突風と砂煙を浴びせかけてくる。歩道が無いことが腹立たしくて頭が変になりそうにな る。考えてみたら道路には「~キロ以下で走ってはいけません」って言う制限はないな。ないのにみ んななるべく速く走ろうとしている。遅いと嫌がられる。必要なのは速さ、速さだけが正義みたいな 走り方しやがって。腹が立つ。こんなところ歩いている方が悪いと言われたらそうなのかもしれない けど、歩くことによって車の異常なスピードがよくわかる。
そういえば今日ひとつ発見した。どうや ら「歩道があるかないか」と「携帯電話の電波が良いか悪いか」は比例する。

いつのまにか気仙沼市に入ったらしい。気仙沼に入ったからといってなにか突然風景が変わるわけで も道路の状態が変わるわけでもない。そこにずっと暮らしていたらそういう行政区分は大切なんだろ うけどこの生活にはほとんど関係ないな。曜日感覚もない。洗車している人が多かったら休日なのだ なあと思うくらいで、自分自身にはほとんど関係ない。大事なのは、空はあとどれくらいで暗くなる のか、風は強いか、敷地は見つかっているか、そこは電源が使えるか、シャワーかお風呂に入れそう なところはあるか、スーパーかコンビニか自動販売機が近くにあるかとか、そういう事ばっかり。
5時頃に本吉に着く。「はまなすの館」というところの敷地なら多分寝られるという情報を歩いてる 途中に教えてもらっていたのでそこに行って交渉したらすんなりOKしてくれた。過去に震災ボラン ティアを名乗る人が1ヶ月くらいここにテントを張っていたらしい。 敷地が決まってほっとしていたら子供を連れた女性が寄ってきて、僕にクレヨンとスケッチブックを 差し出して
「絵描きさんなんでしょ、何か描いてよ」
と突然言われた。「は?」と思った。絵描きをなんだと思ってるんだ。なんでそんな誰ともしらない 人に絵を描いてプレゼントしなくちゃいけないんだと思いつつ、なんか断りきれずに適当に描いて渡 した。こんな人もいるのだなあ。
でもその人はその後、そのぶっきらぼうな態度はそのままに、差し入れを持ってきてくれたり、近く にある体育館のシャワーを使わせるように交渉してくれたりした。ああこの人は嫌いじゃないなあと 思った。
「はまなすの館」に着いて家を置いた直後はいろんな人(主に子連れ。家を一部壊された。)が寄っ てきてああだこうだいって凄い凄いと言ってくれたけど、そうやって言うだけ言うとみんな帰ってい った。でもこの人は違った。スケッチブックを突然渡されたときはびっくりしたけど、結果的にその 人が一番深く関係を持とうとしてくれたのだ。良いな。
その人が絵を描いて渡したあと、フライドポテトと食パンを持って再び現れた。
「これ差し入れ」
と言ったすぐあとに
「絵、もうすこしかわいく描いてよ。あれもかわいいけど、もう1枚(ちゃんと)描いて」
と言ってきた。うわーこの人やるなあと思った。
そういえばここ最近、食べ物飲み物の差し入れをたくさんもらうようになった。東北に入ってからほ とんど毎日誰かに何かをもらっている。いまペットボトルの飲み物が3本、菓子パンが2個、食パン が1斤ある。さっきまでこれに加えておにぎりが2個あったけどそれは食べた。消費するのに忙し い。東北すごいな。

Posted by satoshimurakami