0808のこと
いま日記はその日の夜か、翌日の朝に書いてるんだけど、これもなんかおかしな話だな。出来事は過去のことなので、過去形になるはずなんだけど書いているうちに頭の中に蘇ってくるので現在形でもいけるようになる。そうすると過去形と現在形が混ざったような文章になる。書いてると、この過去と現在のせめぎ合いが絶対にあるんだけど、世の中の日記を書いてる人たちはみんなどうやって折り合いをつけるんだろう。
いまは8月9日。長崎に原爆が落ちた日。昨日のことを思い出して書いている。昨日もたくさんのことがあって、日記を書かないと頭が整理できないままだし、絶対わすれてしまうから日記にしないといけないんだけど、どうも書こうという気力がわいてこない。「できごとを記録する」っていう目的を持ってしまうと、途端に日記がめんどくさくなる。うまくいかないしつまんない文章になっちゃう。でも油断するとそうなっている。気をつけないと。昨日はお酒を飲み過ぎた。夜寝る時のことを覚えてない。夢がまた強烈で、そこから目覚めたら知らない暗い部屋の床で毛布を被っていた。目の前に犬の形に見えるシルエットがあって「うわ!」ってびっくりしたけどそれはテーブルの足とか置いてあるものがそういうシルエットを作ってるだけだった。「どこだ。ここは」って思って起き上がろうとしたら頭が痛くて「なんでこんな頭痛いんだ」って考えてみると、そういえば昨日はたくさんの人たちと一緒にバーベキューをして日本酒をしこたま飲んだんだった。そうだそしてここは、新田さんの家のトレーニングルームで、僕はみんなより早く寝たんだった。時間を見たら4時半だった。外に出るとバーベキューの跡地があった。僕の家もある。昨日教えられた場所で立ちションをして、自動販売機を探してお水を買っていっぱい飲んでまた寝た。
朝のことから思い出して書く。道の駅の休憩室で目が覚めたとき。
「家で旅してる人がいるんですよ。家もって歩いてるんすよ。ほらこれ写真」
「へえー。初めて聞いたな」
っていうふうに、他の旅人達が話してるのが聞こえてきた。
「雨の日も自分の家で寝るらしいっすよ。他の旅人から聞いたんすけど。」
と言っている。うわあ。ここで寝てますとは言いづらいなあ。と思った。そういう噂になってるのか。みんなどこで情報やり取りしてるんだ。
雨が降ったり止んだりしてる。涼しい。家の様子を見に行ったら、風で倒れていた。中に水がたまっていた。悪い事をしたなあ。ちょっと散歩して休憩室に戻ってきたら、小学生が宿題をしていた。道の駅の休憩室で、小学生が宿題をやってる光景はなかなか見られない。そのお父さんもいる。手帳に日記を書いている。夏休みに親子で旅をしてるっぽいな。しかも自転車らしい。それぞれの作業が終わったら二人で地図を広げて「ここは行ったな。ここは行ってないな」なんて話をしている。すごいな。
で、僕がその道の駅のベンチでカップラーメンのなんとかチキン味を食べてたら話しかけてくれたのが新田さんで、地元の消防署で働いている人。このトレーニングルームも、その体作りのためにあるらしい。成り行きで「今夜うちくるか。バーベキューするし」ということになって、いま僕はここにいる。バーベキューは職場の仲間の家族とか、イタリアのミラノで寿司屋をやってる人とか、大人と子供あわせて15人くらいの大宴会だった。よくこういう会をするらしい。すごくいい関係だなと思った。
子供達は僕の家を見て興奮していた。僕が
「これは仕事なんだよ。信じられないかもしれないけど」
って話をすると子供達は
「ええ?うそ」
って感じでぽかんとする。そしたらお父さんが
「そうなんだよ。じゃあお前これできるか?って言われても、できないだろ」
って言ってくれた。嬉しい。仕事って言葉はそういう意味だと思う。
で、僕はどうやら21時くらいには寝たらしい。後半のことをほとんど覚えてないけど、新政酒造の「ひのとり」って日本酒がすっごく美味しかったのは覚えている。ほんとおいしかったなあ。