09180941
GEZANがとても良い。「世界が何もわからなくても歌ってもいい」と歌ってる人がいて嬉しい。音楽つくってる人もこの問題にぶつかるんだ。
一昨日の夜、松本にあるgive me little moreっていうバーでマスターの新見君といろいろ話した。信州大学に金井ゼミという美術系のゼミがあるらしく、今回の「まつしろ現代 美術フェスティバル」の運営まわりの人たちはみんなその人からの影響で美術に携わるようになったらしい。フェスティバル代表の石田君も新見君もなおこもみんな金井先生に会 うまでは美術なんて興味なかったという。
「逆にいつ美術を知ったのか」
って聞かれて、いろいろ話しているうちに去年のバイト時代に自分がいかに追い込まれて八方塞がり状態だったかを久々に思い出した。この世界を脱出する方法としての死がある と思っていた。誰のことも責められないまま、世界中のみんなで破滅に向かっていく感じがしてた。当時の日記は今読んでも切迫感が伝わってくる。そんでニーチェに会って、彼 だけが見方のように見えた。自分を笑う目を持つことを忘れないこと。僕が家を持って歩いてるところを見た人がたまにする「家が歩いてるww」みたいな写真付きのツイートを 見ながら毎日必死で絵を描いたり考えたり日記を書いたりするようなこと。
富士山の話も久々にした。富士山を見に行こうと御殿場に行ったんだけど、いつまで歩いても富士山が見当たらない。諦めて帰ろうとしてiPhoneの地図を開いて、何気なく現在 地の標高を調べたら600mだった。既にそこが富士山の上だったんだ。僕は富士山は遠くにあると思って探してたんだけど、もう富士山の上にいた。これは衝撃だった。考えてみ れば山って、とりあえず呼びやすくするために便宜的に分けて名前をつけてるだけで、この日本の本州全部が富士山の上にあるっていう言い方だってできる。震災の後、被災地に 行って何かやろうと思って色々やったけど、どうもうまくいかなかった理由がここでわかった。被災地はどっか遠くにある場所なんじゃなくて自分の足下にあった。東京だって香 川だって被災地だし、僕自身が被災者だった。だから「自分がいる場所から離れて、自分じゃない誰かのためにやる」みたいな行動原理じゃ何も生まれない、自分の身近な問題に 引きつけて行動しないとうまくいかないのは当たり前だった。
あと昨日の朝、加賀井温泉に行ってきた。石けんやシャンプーが使えない、本当にお湯につかるためだけにある温泉で、露天風呂が混浴になってる。この露天風呂に2種類あっ て、ぬるいお湯と熱いお湯がある。それぞれ違う井戸からくみ上げているらしく
「ぬるい方のお湯が、すごく良いんだよ」
って、その風呂で一緒だった90歳のおじいちゃんが教えてくれた。温泉は茶色く濁っていて、舐めるとしょっぱくて錆びた鉄の味がする。「車いすで行った人がスキップして帰 って来る」と言われるくらい効果のある温泉らしい。僕は90歳のおじいちゃんから
「昔、毎日ここでよく話してた88歳のおばあちゃんがいてな、ある日ひざの手術を受けてから歩くのが億劫になったみたいでな、あまり来なくなったんだ。俺は1週間に1回で いいから温泉入りに来いって言ってたんだけどな。来なくなって7日目で脳梗塞で倒れちまって、自分で何もできない体になっちまった。いま入院してる。」
なんていう話を聞きながら1時間くらい浸かっていた。彼は
「ここに週に一遍でも入りに来てれば、脳梗塞なんてならなかったんだけどなあ。そう思うんだけどなあ。」
と繰り返し言っていた。