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ご飯を食べながら、お寺のおばちゃんと一緒にNHKの連続テレビ小説を見て朝を過ごす。実家にいるみたいだ。おばちゃんがあらすじを説明してくれた。
「大正時代にな、北欧にウイスキーの作り方を学びに行った若い兄ちゃんが外人の嫁さんを連れて帰 ってきた話や。この頃は国際結婚なんてしてる人おらんかったからな。近所の人がみんな見にきて な…」
僕はそれを聞きながら、その「外人の嫁さん」が熱を出して介抱されているシーンを見ていた。
「福島から大津に移住してきたっていう人に会ってみたいです」
って言ったら新田さんがすぐ電話をかけてくれた。おばちゃんとその人が連絡を取るのも久々だった らしく
「ご無沙汰してますーー!」
と電話で盛り上がってた。昨日のニュースの、川内原発の再稼働に知事が同意したっていう話をおば ちゃんがしている
「もう再稼働はないと思っとったけどなあ…。まあまだやけど」
なんて言っている。

11時頃、再び青谷さんが登場した。軽トラで僕と僕の家を山の下まで降ろしてくれるらしい。
「ここから山を下るのは道も狭いし危ない。下まで降ろしたるわ」
家を再び青谷さんの軽トラに積んで願力寺を出発。青谷さんは僕がツイッターで願力寺のことを投稿したのを見たらしい。意外だ。これは偏見だけど、見た感じは到底インターネットなんて使いそうに ないおっちゃんなのに。青谷さんは不思議な人だ。すごく声が大きくて元気なおっちゃんて感じなん だけど、なんかイベントも主催したりしているらしい。人のためにあれこれと手が出ちゃうんだと思う。この人も「公共の人」なんだと思う。
数キロ走った所にある道の駅で降ろしてもらった。青谷さんとは割とあっさりと別れた。そっからまた歩き出してしばらくしたら、琵琶湖が見えてくる。湖の周りをぐるっと歩道がまわっていて、とっ ても歩きやすくて気持ちの良い道。なんとなく歩行者が多い。琵琶湖の観光客だけじゃない。地元に 住んでるっぽい人でも歩いてる人が目につく。滋賀県民はよく歩く人種らしい。

歩いてる途中、いつもの通りアイフォンを見ながら歩いてたら、道にある段差につまづいて家ごと9 0度前方に回転して、めっちゃ派手に転んだ。結構あちこち壊れたけどなんとか直した。「ながら歩き」はやめようと思った。

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夕方「風車村」と呼ばれてる場所の近くまで来たとき、再び青谷さんから電話がかかってきた。
「どうもどうも!いまどの辺ですかー?」
「風車村っていうところの近くまで来ました」
「今日の寝床でな、いけそうなところがあるんです。」
「おお」
「今津っていうところの山の上で、自給自足生活しとる夫婦がおるんです。」
「おお。山の上で自給自足生活してる夫婦がいるんですか」
電話越しでも青谷さんのテンションの高さに圧倒される。『山の上で自給自足生活』っていう響きからくるイメージは結構すごいものがある。
「そこがいけそうなんで、また連絡します!」
「はい!どうも!」
そんで数分後にまた電話がきて
「オッケーです!また迎えにいきます!」
ということで、僕は近くのコンビニで青谷さんと再び合流して、その夫婦の家に行った。ほんと何があるかわからない。

その家はけっこうな山奥にあった。見るからに手作り感のある家が2軒建ってて、薪とか丸太とか工具とかがいっぱい転がってた。近くに畑と田んぼもあるらしい。「クマ出没注意」っていうでかい看板もある。このへんは別荘地らしい。
その夫婦はまだ帰ってきてなかった。青谷さんと別れて、その家の中で待ってた。一軒は母屋で、もう一軒はゲストハウスらしい。いろんなところから持ってきたであろう建具があちこちに使われて て、ロフトもある。ロケットストーブと薪ストーブもある。奥さんが三線の演奏家で書もやる人らし く、家のあちこちに言葉が書かれた板が飾られてる。この家は「志我の里」って名付けられてるみたい。
しばらくして夫婦が帰ってきた。夜遅かったけれどすこしお話できた。
「経済がとまったときに、自分たちで生きていけるように」
ってのがテーマだと言ってた。食事の7割くらいは自分でつくった食べ物で賄ってるけど、ストイックになりすぎても苦しいから外食も普通にするらしい。4年くらい前に大阪からこっちに来て、すこしずつ家を建ててきた。水道も電気も通ってる。トイレは「バイオトイレ」ってやつだった。大便の時だけおがくずをかけるボットン便所みたいなやつ。薪でお湯をわかすお風呂もある。こんな暮らしのやり方もあるんだな。話しながら、夫婦であれこれ楽しみながら生活してる感じが伝わってきた。
「雨水は降り始めの15分は空気中の汚れがついてるけど、それ以降は奇麗な水になってるから使える」
「薪ストーブは150-300度の間で燃やさないといけない」
なんてことを教わった。

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Posted by satoshimurakami