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南三陸町志津川の土建会社のプレハブの小屋のなかにいる。8畳くらいの広さで、テレビとエアコンがあって、机がひとつある。このあいだまでの暑さがうそみたいに肌寒い。ものすごい豪雨と強風。外の音が恐ろしい。台風が直撃してると言われても信じる。今日は硬くて重い壁でできた部屋に居られて本当に良かった。
夕方、まだ雨がこれほど強くない頃、ここの会社の人が南三陸を車で案内してくれた。南三陸は去年と比べて景色がガラッと変わってしまっていた。陸前高田と同じように、あちこちで茶色い土が文字通り山のように積まれていて、海も見えなくなっている。視界が土の山で阻まれているので、いま自分がどっちの方角に向かっているのかもわからなくなる。南三陸は複雑なリアス式海岸の地形で、山に入ったと思ったら海に出てしまったりする。小さな港町がたくさんある。そのすべての町が津波にのまれてしまった。そしていまそのすべての町で茶色い土の山が築かれている。場所によっては、本当に一面まっ茶色になってしまっているところもある。かつてここに住んでいた人はこの変わりようを見て何を感じるのか。自分の家が建っていたところが埋められていくのはどんな気持ちなんだろう。
いつか茶色い山がすべてできあがり、土地のかさあげが完了したら、その上に住宅が作られるらしい。でも僕を案内してくれた人は
「いつになるかねえ。まだ盛り土もできてないからね。」
と言ってた。