1001/青森県十和田市法量焼山

tbsラジオのポッドキャストで、ベビーカーの男の子をおっさんが突然殴ったというニュースを聞きながら、家を背負って歩いている。長い時間の中で考えなければいけないこの活動と、今この瞬間しか流れないであろうこのニュース。この分裂した関係を、僕のからだが媒介している。そうやってこの場所を歩いている。最近は音楽よりもラジオを聞きながら歩くほうがしっくりくる。うまくバランスがとれるのかもしれない。こうやって歩いたり生活したりする日々をちゃんと生き、自分の生活を守ることも大切な活動だと感じる。食べて、歩いて、考えて、書いて、描いて、人と話す日々を守るという政治活動だと感じる。

 

十和田市内から十和田湖温泉郷(焼山)に歩いた。昨年訪れて温泉街の廃れ具合に衝撃をうけたので、特に期待もなくというか、マイナスなイメージを強めて突入した。すっかり暗くなってしまってから町に入った。思ったよりも人の声があり、会話もあちこちである。なんだかんだ観光地で、旅館の駐車場には県外の車もちらほら。ただ商店や食堂は、地元の人らしき客しか入っていない。けっこう入りにくい。去年もいった食堂「上高地」に入ろうとしたら、中から出てきた客にじろっと見られた。見ない顔の人が食堂に入ったりするのはそうとう珍しいらしい。

その人たちが出て行ったら、店内の客は僕だけになった。イスに座ったらおばちゃんが

「そっちテレビみれないですけど…」

と声をかけてくれた。僕は席を変えた。牛バラ焼き定食を注文した。この「牛バラ焼き定食」は前回のB-1グランプリというやつで優勝した、十和田といえばコレという一品らしい。

まず牛バラ肉と刻んだ玉ねぎが鉄板に乗ってでてきた。混ぜながら自分で炒めて、できあがったころにご飯とみそ汁と漬け物がでてくる。めちゃ美味いし、量も多い。おばちゃんに観光できたのか、仕事できたのかと聞かれる。説明は面倒なので「どっちもですね」と答えた。おばちゃんは笑った。

 

家は去年と同じhakocco(観光案内所)の敷地に置いた。これから暴風がふくらしい。まだ静か。22時くらいには寝てしまった。

 

そんで夜中の1時過ぎに風で起こされる。ものすごい風。家が吹き飛びそうな風がいつのまにか吹いてる。iPhoneで調べたら十和田市は風速6メートルとでてきたけど絶対15メートルくらいはある。そのままツイッターとかみたけど、誰も風について書いている人はいない。こういうとき、何かを深く考えたりすることができない目の前の家が風で飛びそうだから。家が飛ばないように中から手で抑えながら片手でiPhoneを握っている状況。笑うしかない。もうすこし風のこないところ(そんな場所があるなら)家を動かしたほうがいいと思ったりもするが、自分のからだというおもりをとってしまったら一瞬で家は吹き飛ばされそうな風速。なのでそれもできない。

しかし家を抑えてさえいれば、家は僕を風や雨から守ってくれる。盾を持つ戦士のような気持ち。山奥の駐車場で一人で盾を持って踏ん張っている気持ち。これを乗り越えたら焼肉がたべたいと思った。風はなんでおこるのだろう。不思議だ。こんな強いエネルギーが気圧の違いだけでうまれるのか。神秘だ。これからますます強まるということだったので、公園のテーブルを二つ倒して家の前に置いてセルフ防風林をつくった。そしたらいくぶんかマシになった。そのままうとうとしながら朝まで風とバトルしていた。 そしたらhakoccoの人から起こされた。

「一応公園なので、テーブルやなんかはもとに戻したいんですが」

とのことなので、一緒に戻した。10時過ぎに、すこし風がよわまった感じがする。でもあまり寝れないまま昼までごろごろしてた。

hakoccoはとてもせまい観光案内所。でもフリーのWi-Fiがある。去年勤めていたからだの大きな男の人は辞めちゃったらしい。その人には良くしてもらって、その後ツイッターでも連絡をとったりしてたので残念。代わりに語気が強い年配の男性と、そのすこし年下くらいの女性が二人で店番をしてた。かなりビジネスライクな対応で参った。

 

土地

間取り

Posted by satoshimurakami