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朝家の中で寝ていたら人が近づいてきてドアを開けようとしたので「はい」と言って窓を開けたら「ああ、すいません!」と驚いて「なにかなーと思って、お休みになられてるとは知らずに」と言うので「この家を管理されてる方ですか?」と聞いたら「管理というか、所有者です」と言う。こちらこそこんなところで寝かせてもらっててすいませんという感じだ。そのおじさんは地元で建築家をやっていて、シックハウス症候群や色々な家に関する問題を考えていった結果、地元産の材料で家をつくることに行き着き、そういう住宅を作ってきたらしい。最近は建築設計はもう若いのに任せて引退して、自分は「もう年金生活だから・・」と、東京などでこの地方でつくられたものの素晴らしさについて話したり伝えたりすることに専念しているらしい。問題をみつけ、そのために行動し、今は伝える側になった。
この家は明治二十年くらいに出雲の方から移築されてきた古民家で、数十年前にこの家に住んでいたおばさんが亡くなり、しばらく空き家だったんだけどそのおじさんの一念発起で、そういう活動をするための拠点として買いとり、NPOを立ち上げた。「いまではみなさんに好き勝手使ってもらっている」と笑って話してくれた。「明日から女性たちが”命の大切さ”についての朗読をやるイベントがあるから、もし時間があったらもう1日いてってください。中に無料で泊まっていいから。」と言うのでそうすることにした。
お昼前に”女性達”が集まりだした。話を聞いてみると明日明後日命に関しての文章をみんなに寄せてもらって、それを朗読するというのがメインのイベントらしい。「わたしたちも日本をあちこち動いて活動してるの」。
僕は今日は1日かけてこの「古民家ヴィレッジ」を描いてた。このあたりは近くにコンビニもスーパーもなくて、自動販売機が5分くらいあるいたところにある。他は民家や工場。大きな川もある。最寄りのコンビニはセブンイレブンで30分くらい歩く。そこからもうすこし歩いたところに芸文館がある。コンビニまで行けばそばに「恋ぼたる」という道の駅みたいな施設があって、そこには温泉もある。朝からずっと絵を描いてたけど夕方ちかくになってお腹が空いたのでコンビニまで歩いて行った。途中に工場とか瓦礫の山と化した空き家があったりしたけどほとんどは畑と田んぼ。昨日聞いた話だと筑後は小麦も多いらしい。
コンビニでカップラーメンとお菓子の詰め合わせを買ってカップラーメンにお湯を入れて、温泉館がある公園(広域公園という名前で、広大な芝生の公園。とにかく広い。)に歩いて行ってベンチに座ってカップラーメンを食べて、お菓子の詰め合わせを食べながら温泉館に向かって行って、温泉館の受付で500円払って温泉に入った。脱衣所のロッカーがなぜか有料で、十円だった。温泉は茶色い水で、硫黄と鉄っぽい匂いがかすかにするけどしょっぱかったりはしない。炭酸泉らしい。地元のおじさんがたくさんいて、特に露天風呂の方はお湯の温度がぬるいのもあって、おじさん達が入り浸って相撲の話や野球の話をしていた。ちなみにやっぱりこのあたりはソフトバンクホークスファンが多いらしい。おじさんたちは、博多弁が強くて、相撲や野球の話をしているのはわかったけど具体的に何を話してるのかは全然わからない。若いお客さんは見たところ一人もいなかった。温泉の食堂兼休憩所(おじさんやおばさんたちがテレビの前に集まって相撲を見ていた。大事な場面らしかった)でドローイングの続きを少しだけやって温泉を出て、またコンビニに寄って納豆巻きとチャーハンおにぎりと辛子高菜おにぎりとバドワイザーの缶をかってバドワイザーを飲みながら家(古民家ヴィレッジ)まで帰った。道では車はたくさん通り過ぎていくけど、歩いてる人は他に一人もいない。古民家ヴィレッジに着いたら朝会ったおじさん(”女性達”からは社長さんと呼ばれていた)が中で、木村さんと芸文館の学芸員のみまんださんの布団や荷物を離れの方に移しているところだった(「こっちに明日のイベントの女性陣がとまるから、あっちに移しておいた」)。”社長さん”に朝の話の続きを「ものづくりって具体的にどういうものですか」と聞いてみた。「自分は建築屋さんだから、建築に使うもの、例えば漆喰とか、杉板とか、畳とか」。
地方のものづくりっていうのは家族とか夫婦単位だから、企業としての持久力がない。だけど品質が素晴らしいので、残りの人生をかけてこれを伝えていきたい。矢部川のいぐさを使った畳。このあたりは熊本県の八代に注ぐ産地なのだけど、品質が素晴らしい。加工して表面積を増やした杉板。からだに良いし、悪いものは吸収してくれる。
「女性陣は8時前には帰って来ると言ってたから、なかよくやってください」
と言って社長さんは帰っていった。もうすぐ8時になる。寝るか。