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名古屋から松本への高速バスの中。関西国際空港についたあと、朝まで空港のベンチで仮眠(仲間が何人かいた)し、12月1日に大阪から浜松まで新幹線で移動。初めて浜松に降りた。リトミックという方法論で音楽教室をやっている北市さんと合流して砂丘や秋野不矩美術館を見て回って北市家に帰ってくる。夜に旦那さんも帰ってきて一緒にご飯。旦那さんは自動車メーカーのスズキで二輪車のエンジニアをやっている人。起こされてきたスケッチをかくデザイナーがいて、それを設計図にする人がいて、クレイモデルをつくる人がいる。クレイモデルはデザイナーが削ったりして形を整えたりするらしい。スズキには一人天才的なデザイナーがいたが、今では彼は昇格して「削り」はやらなくいなったことを「もったいない」と言っていた。デザイナーが現場で手を動かすことを「削る」と言うみたい。旦那さんはデザイナーと話し合いながら車輪まわりの設計をやり、大量生産できるようにもっていく仕事らしい。工場の余りのステンレスでつくった手作りの小さなナイフを見せてもらったけど、そのクオリティの高さにびっくりした。手作りとは思えない。さすがスズキのエンジニアだ。他に人間の耳がノイズキャンセリング機能を持っているという話など。
今日はまずノヴァ公民館とアルスノヴァを見学した。刺激をもらった。「ただ存在している」ということへの前向きな肯定を感じた。人がただそこにいるというだけで、何かしら「成っている」のだという主張を感じた。そのあとアクトタワーというバブル期に建てられたけど家賃が高すぎてガラガラ状態の超高いタワービルの展望台に連れて行ってもらった。天気がとてもよくて富士山も見えた。浜名湖のあたりが台地になっていて、海抜の低い浜松駅周辺の中心街と台地との境界がよく見えてとても面白かった。海から山に向かって、台地のラインに沿って林がいくつも並んでいた。
そのあと鴨江アートセンターへ。解体が決定していた明治時代の空気をのこした警察庁舎をアートセンターに改装したもの。浜松はトヨタの創業者を生み、スズキも生んだ。車の製造で発達した町というのもあって、町も車社会。なのでみんな車のスピードでしか町を見ておらず、それをなんとかしたいという話をした。車向けの大きな看板なんかも景観をめちゃくちゃにする。スピードの問題。なにか考えたい。自分と浜松との接点をさぐりたい。スピードの問題といいつつ僕はいま松本行きの高速バスにのって時速100キロで移動している。

バスの中で「星を継ぐもの」を読み終えた。素晴らしかった。冒頭を読み返してみたら、その部分を札幌での天神山スタジオのロビーで読んでいたことを思い出した。読書の記憶は場所の記憶とセットになりやすい。それにしても、まさか「星を継ぐもの」が私たちのことだったとは!すごい本だった。最後にとんでもない解が示されて、それでびっくりしてたら間髪入れずそれをしのぐ仮説がたてられて鳥肌のまま読み終わった。
どんでん返しがロジックによって成されてる。SFなのに。徹底的に科学に基づいてストーリーが組まれていた「火星の人」を読んだ後ではちょっと無茶なところもあるけど。でもロジックの作り方と、想像力の大きさというか射程の遠さというか、すごかった。「現実もこの設定でいい」と思ってしまう。ちょうどパンスペルミアのことを知ったあとだったのでなおさら。

Posted by satoshimurakami